契約社員やパートなど有期雇用契約で働く労働者が一番避けたいのは、雇い止めです。
雇い止めは、契約期間の満了時に雇用契約の更新を企業側から拒否され、雇用が終了する状態を指します。
雇い止めになった場合は失業保険を受給することになりますが、会社都合退職もしくは自己都合退職のどちらに該当するかはケースバイケースとなり、注意が必要です。
退職理由によっては失業保険として受給できる額などに大きな影響を与えるため、前もって雇い止めに関するルールを知ることが求められます。
本記事では、雇い止めで失業保険を受給するケースを中心に、スムーズに受給するポイントやよくある質問を紹介します。
著者情報

退職サポーターズ編集部
「退職サポーターズ」では、社会保険給付金の申請を退職のプロと社会保険労務士が支援します。当メディアでは、自己都合退職や会社都合退職にともなう手続きや、失業保険・傷病手当金などの制度について、正確かつ実用的な情報をわかりやすくお届けします。
また退職サポーターズではこれから退職される方に向けて、
失業保険の受給金額が最大200万円になる給付金申請サポートを行っております。
今ならLINE追加するだけで、自分がいくら受給金額がもらえるのか無料診断ができます。
雇い止めとは

そもそも雇い止めとは、契約社員や派遣社員、パートなど有期雇用契約を結ぶ労働者の契約期間が満了した際に、企業側が契約の更新を拒否して、当該社員との雇用契約を終了させることを指します。
労働者側が今後も働き続けたいと思っていても、さまざまな要因から企業側に更新を拒否されてしまう状態です。
雇い止めには厳格なルールがあり、雇い止めを行う合理的な理由がなければならず、労働者側が契約更新を期待させる状況があると無効になってしまいます。
雇い止めが成立する場合は、能力面や成績面、勤務態度など何かしらの問題があり、企業側から度重なる注意を受けたにもかかわらず改善しなかった状況となります。
また企業側の経営状況が悪化しているケースや労働者が担っていた部署が縮小されて人員を減らすケースなども、合理的な理由とみなされます。

雇い止めが会社都合退職になるケース

企業側から雇い止めをされた場合、一律で会社都合退職の扱いになるわけではなく、ケースバイケースです。
そもそも会社都合退職は法律上の用語ではなく、失業保険における「特定受給資格者」もしくは「特定理由離職者」のいずれかに該当するかどうかによって判断されます。
例えば、ケガや病気で就労が難しくなって雇い止めになるケースであれば、特定理由離職者に該当する可能性があり、雇用保険の被保険者期間が長ければ自己都合退職よりも給付日数が増えます。
また、契約時に契約更新の可能性があると示され、労働者も契約更新を望んでいたのに会社側が契約更新を拒んだ場合は、特定理由離職者として扱われ、会社都合退職となります。
雇い止めが自己都合退職になるケース

雇い止めの場合は会社都合退職の扱いになる可能性が高い一方、自己都合退職になるケースも存在します。
例えば、最初に契約をした段階で契約更新がないことがわかっていたケースです。
1年限りの契約が結ばれ最初から更新予定がないとわかって労働者が契約した場合は、特定理由離職者に該当せず、自己都合退職となります。
他にも契約更新の可能性が示されつつ、労働者が契約更新を望んでいなかったケースも自己都合退職とみなされてしまいます。
雇い止めはあくまでも企業側に契約更新の意思がなく、労働者からの契約更新の意思を拒む場合に用いられる言葉です。

雇い止めによる失業保険の受給資格

雇い止めによって失業保険を受給する際には、受給資格も大事な要素となります。
以下に受給資格に関する要素をまとめました。
- 被保険者期間の要件
- 特定理由離職者としての認定
- 特定受給資格者として認定
- 就職の意思と能力
本項目では、失業保険を受給する上で重要な要素を1つずつ解説します。
被保険者期間の要件
失業保険を受給するためには、雇用保険の被保険者期間に関する要件を満たすことが求められます。
- 会社都合退職に該当する場合は、退職日から遡って1年の間に被保険者期間が通算6ヵ月以上
- 自己都合退職に該当する場合は、退職日から遡って2年の間に被保険者期間が通算12ヵ月以上
多くの雇い止めのケースは会社都合退職に該当するため、退職日から遡って1年間で被保険者期間が通算6ヵ月以上あれば、失業保険を受け取れます。
仮に自己都合退職とみなされる場合も、退職日以前2年間において被保険者期間が通算12ヵ月以上であれば、失業保険の受給が可能です。
例えば、1年間フルに雇用保険に加入できるような働き方をしていた場合、自己都合退職であっても失業保険の受給資格は得られます。
特定理由離職者としての認定
特定理由離職者に該当するかどうかも、重要なポイントです。
大前提として、「労働契約期間の満了」が必須となります。
その上で、契約した時点では契約更新や延長の可能性が明示されていて、労働者側が契約更新・延長を希望したにもかかわらず、企業側から拒否された場合、特定理由離職者の扱いです。
契約書などに契約更新に関する明示がされているものの、必ず更新するなどの確約がないケースも特定理由離職者に該当します。
また、健康面や出産育児、介護などの理由で離職せざるを得なかったケースも特定理由離職者として扱われます。
認定を受けるためには契約書を始め、診断書などの書類を用意してハローワークで審査を受けることになります。
特定受給資格者として認定
雇い止めによって特定受給資格者とみなされるケースは、大きく分けて2つあります。
- 有期契約の更新で3年以上雇用の継続が続いた中で、労働契約の更新がされない場合
- 有期契約を結ぶ際に労働契約の更新が明示されたにもかかわらず、労働契約の更新がされない場合
契約社員やパートとして有期契約の更新が3年以上続いた中で雇い止めを受けた場合は、特定受給資格者としての認定を受けます。
また、契約を結ぶ段階で労働契約の更新が明示されたにもかかわらず、契約更新を拒否された場合も特定受給資格者の対象です。
認定を受ける場合には、契約書などを持参してハローワークでの審査を受けることになります。
就職の意思と能力
失業保険を受給する場合、原則として失業状態でなければなりません。
失業状態は以下の条件をすべて満たした場合に該当します。
- 就職をする意思がある
- いつでも働ける状態にある
- 積極的に仕事を探している
上記の内容をすべて満たすことによって失業状態と判断され、失業保険を受給できます。
病気やケガで働けない、仕事を探していないなど、何か1つでも要件を満たしていないと失業状態をみなされず、失業保険は受け取れません。
失業状態の認定はハローワークにおいて4週間に1回行われ、認定を受けてから5営業日後に失業保険が支給されます。
雇い止めが会社都合退職で失業保険を受給するメリット

雇い止めになり、会社都合退職で失業保険を受給するメリットには以下の点が挙げられます。
- 給付制限期間の免除
- 給付日数の延長
本項目では、雇い止めになった人が会社都合退職で失業保険を受給するメリットについてまとめました。
給付制限期間の免除
会社都合退職とみなされた場合、給付制限期間が免除され、速やかに失業保険を受給できるのがメリットの1つです。
令和7年4月から自己都合退職による給付制限期間は1か月に短縮されましたが、1ヶ月ほどのタイムラグがあっても生活をしていく上で苦しくなりやすいのは確かです。
会社都合退職であれば、7日間の待期期間後、すぐに失業保険の受給期間に入るため、失業認定日で失業状態と認められれば5営業日後には失業保険が受け取れます。
手続きを始めて1ヵ月半ほどで失業保険を受け取れる計算です。
自己都合退職だと少なくとも2ヵ月半はかかるため、1か月でも短縮されるのは相当なメリットと言えるでしょう。
給付日数の延長
会社都合退職と認められた場合には、給付日数が延長されるため、最終的に受け取れる失業保険の総支給額も増えます。
自己都合退職の場合は90~150日までとなり、3年ほど有期契約で働いた状態であれば原則90日です。
会社都合退職の中でも特定受給資格者となった場合、被保険者期間が1年以上5年未満は90~180日となります。
30歳未満で1年以上5年未満の被保険者期間だと通常通りですが、30歳以上の人は120~180日まで延長されます。
特定理由離職者の場合でも雇い止めであれば、現状2027年3月末まで特定受給資格者と同じ扱いとなるので、恩恵を受けられます。
雇い止めが会社都合退職で失業保険を受給するデメリット

会社都合退職で失業保険を受給するメリットがある一方で、受給するデメリットも存在します。
- 通常の失業保険申請よりも複雑
- 退職理由に対する労働者と雇用主の認識に相違が生じる
本項目では、会社都合退職で失業保険を受給するデメリットについて解説します。
通常の失業保険申請よりも複雑
自己都合退職で失業保険を申請する場合、離職票などの書類などを持参して手続きを進めていけばいいため、申請にさほど時間はかかりません。
一方で会社都合退職で失業保険を受給するとなると、特定受給資格者ないしは特定理由離職者の認定を受けなければならず、認定のために必要な書類を用意することが求められます。
契約書の確保はもちろんのこと、健康面を理由に雇い止めとなった場合には診断書など、事前の準備が欠かせません。
一般的な申請よりも多少ややこしくなるため、スムーズに認定を受けるためにあらかじめ準備を進めておくことが求められます。
退職理由に対する労働者と雇用主の認識に相違が生じる
労働者側は会社都合退職と思っていても、雇用主である企業側にそのような認識がない場合があります。
特に雇い止めを巡っては、合理的な理由があったかどうかなど認識の違いが起こりやすい部分があるため、もめやすい要素と言えます。
失業保険を受給したくても、受け取るまでに時間がかかることも考えられるため、ハローワークでの相談などがおすすめです。
将来的な雇い止めの可能性を考慮し、契約時に受け取る契約書などは大切に保管する必要があります。
雇い止めで失業保険申請時に診断書が必要となるケース

病気やケガなどを理由に雇い止めとなったケースや家族の介護・看病といった事情が絡むケースでは、離職の際に診断書が必要となる場合があります。
特定理由離職者として認定される場合、自己都合での退職ではないことを証明する必要があり、客観性のある証拠が欠かせません。
特に病気やケガが絡む場合は診断書をもらうことで、ハローワークでの手続きの際にスムーズに申請が行われやすくなります。
一方で、失業保険を受け取る場合は失業状態の認定が必要で、病気やケガから回復して働ける状態にあることも示す必要があります。
雇い止めで失業保険をスムーズに受給するには

雇い止めとなり、スムーズに失業保険を受給するには、事前の準備が欠かせません。
- 雇い止めの通知を確認する
- 企業側と直接面談、契約更新の可能性を確認する
- 離職票の内容をハローワークで相談する
本項目では、1日でも早く失業保険を受給するための対策についてまとめました。
雇い止めの通知を確認する
企業側が雇い止めを実施する場合、合理的な理由が必要であり、雇い止めの際には理由に関する証明書が必須です。
労働者側は企業側に対して証明書の請求が行えるほか、企業側は労働者からの請求の要望に対して速やかに応える必要があります。
雇い止めの理由が書かれた証明書のほか、離職票などを企業側から受け取ったら、退職理由が会社都合退職に該当するかどうかを確認します。
会社都合退職であると判断できれば、給付制限なしで失業保険を受給できるため、早めに受け取れます。
企業側と直接面談、契約更新の可能性を確認する
雇い止めの通知がなされた場合には、企業側と直接面談を行った上で、契約更新の可能性を模索することが大切です。
面談の場で「合理的な理由」が示された場合、改善が可能な理由であれば改善することを約束し、更新をしてもらうように伝えられます。
企業側が翻意すれば次の契約更新に向けて改善を図っていくことに力を入れればいいでしょう。
もしも企業側の意思が固く、契約更新が見込めないと判断すれば、契約満了以降の準備を進めていく必要があります。
また面談の際には、言った言わないの水掛け論を避けるためにも何らかの形で記録に残しておくことで、無用な争いを避けられます。
離職票の内容をハローワークで相談する
離職票を受け取った場合、離職票を持参してハローワークに向かい、雇い止めに関する相談を行いましょう。
企業によっては自己都合退職という形で処理をしようとしており、何も知らずに手続きをしてしまい、失業保険の受給額が減ることも考えられます。
そもそも雇い止め自体が、合理的な理由がない雇い止めとハローワークで判断されれば、雇い止めそのものが無効となる可能性も出てきます。
その場合は雇用が継続するため、企業側との交渉を行うことになります。
早めに就職をすれば再就職手当ももらえることから、まずは離職票をもってハローワークに行き、相談を行うのがおすすめです。
雇い止めで失業保険を受給するには?で、よくある質問

雇い止めとなり、失業保険を受給するにあたって、さまざまな疑問が生じます。
- Q:雇い止めの場合、失業保険の給付日数は?
- Q:期間満了退職は自己都合退職ですか?
- Q:雇い止めと契約満了の違いは何ですか?
最後に、同様のケースにおいて出てきやすい質問を以下にまとめましたので、紹介します。
- 雇い止めの場合、失業保険の給付日数は?
- 雇い止めによる失業保険の給付日数は、離職した方の年齢・雇用保険の被保険者期間によって異なります。
多くの雇い止めは「特定理由離職者」もしくは「特定受給資格者」として扱われることが多く、給付日数は90~330日までです。
30歳未満の場合は90~180日、45歳以上60歳未満だと最大330日まで支給されます。
ただし、有期契約の場合、被保険者期間が1年以上5年未満に該当することが多いため、90~180日が現実的な給付日数となり得ます。
自己都合退職に該当する場合は90~150日ですが、1年以上5年未満の被保険者期間のケースでは90日です。
- 期間満了退職は自己都合退職ですか?
- 有期契約の期間が終了することで退職に至るケースにおいては、契約時の説明や労働者本人の契約更新の意思の有無で退職理由が変化します。
例えば、最初から契約更新の予定がない状態で契約する場合や労働者本人に契約更新の意思がない場合は自己都合退職となります。
しかし、契約更新の可能性があり、労働者本人も契約更新の意思があるにもかかわらず、雇い止めで期間満了退職となれば会社都合退職の扱いです。
また3年以上契約更新が続いてから雇い止めがなされて期間満了退職になっても、会社都合退職として扱われます。
ハローワークで退職理由の確認を行う際には、契約書や更新の有無に関する情報が記載された書類などを持参するのが確実です。
- 雇い止めと契約満了の違いは何ですか?
- 雇い止めは、有期契約の契約期間が満了する状況において、企業側の判断によって労働者との契約更新を拒否する状態を指します。
労働者は契約更新の意思があるにもかかわらず、契約更新をしない場合に雇い止めという表現が用いられる傾向にあります。
一方で、契約満了はその名の通り、契約期間の満了を指しています。
雇い止めは企業側が労働者との契約更新を拒否したことで生じた現象であるのに対し、契約満了は単なる事実に過ぎません。
雇い止めは労働者保護の観点から会社都合退職扱いとなることが多い一方、契約満了は「労働者側も契約更新を希望せずに期間が終了するケース」が含まれます。
まとめ
本記事では雇い止めで失業保険を受給する際のメリット・デメリットなどを解説してきました。
最後に今回ご紹介した内容を振り返ります。
- 雇い止めは、有期契約を結ぶ労働者側が契約更新を望んでいるにもかかわらず、企業側が契約更新を拒否して契約が満了する状態を指す
- 多くの雇い止めは会社都合退職として扱われるが、労働者側が契約更新を望んでいないケースや契約時に最初から契約更新がないとわかっているケースでは自己都合退職となる
- 雇い止めで会社都合退職となり失業保険を受給するメリットは、給付制限期間の免除や給付日数の延長
- 雇い止めで会社都合退職となり失業保険を受給するデメリットは、失業保険を受給するまでの手続きの煩雑さなど
- 雇い止めで失業保険を申請する際には診断書が必要な場合もある
非正規雇用で働く労働者は以前よりも増えており、雇い止めによって職を失う労働者もその分、増える一方です。
雇い止めによって確実に会社都合退職と扱われるためには、契約書の確認が重要であり、契約更新の有無などを確認しましょう。
契約した際に契約書は必ず受け取るため、貴重品として大切に保管することをおすすめします。
雇い止めの際にはすぐにハローワークで手続きを行い、失業保険を受け取りつつ再就職を目指しましょう。