肉体的・精神的疾患などから休職しようか迷っている方もいるのではないでしょうか。
一方で、世間では「休職したら終わり」という声もあり、本当に休職して大丈夫なのか不安に感じている方もいるはずです。
結論から言いますと、休職しても決して終わりではないほか、休職するメリットもあります。
本記事では、休職したら終わりと言われる理由を中心に解説していきます。
「休職したら終わり」と言われる3つの理由
「メンタルの不調で休職したら終わり」「キャリアに戻れないのでは?」
精神的な不調での休職に対して、このような不安を抱えている人は少なくありません。
世間一般で、メンタル不調により「休職したら終わり」と言われる理由として、以下の3つが挙げられます。
- 休職に対する偏見や誤解
- 休職中の仕事への不安
- 休職への罪悪感
休職に対する偏見や誤解
日本では、仕事を休むことに対して罪悪感を抱く人が多いことに加えて、「メンタル不調で休職=弱い人」という間違った偏見が根強く残っています。
実際に、上司や同僚の理解が得られずに、ますます精神的な不調に陥ってしまう人も少なくありません。
しかし、実際には、多くの人が過労やストレスによるメンタル不調を経験しており、休職することは特別なことではありません。
とくに近年では、メンタルヘルスの重要性が注目され、会社も従業員の健康を守るための制度を整える傾向にあります。
休職をすることで心身の回復に時間を費やせるというのは大きなメリットであり、休職経験者の中には、適切な休養を取ったことで、以前よりも充実したキャリアを築いている人も多いのです。
ただし、冒頭でもお伝えしたとおり、現在の日本ではまだまだメンタル不調による休職に対する偏見が根強いため、「休職したら終わり」と言われる所以と言えます。
休職中の仕事への不安
休職をすることによって、「休職前の様にキャリアを積んでいくことが難しくなるのでは?」「会社に居場所がなくなるのでは?」といった漠然とした不安も「休職したら終わり」と言われる理由のひとつでしょう。
とくに精神的な理由で休職をした場合、復帰後に妙な気遣われ方をして仕事を極端に割り振られなくなったり、よせよそしい話しかけられ方をしたりなど、周りが不自然な関わり方をしてくることがよくあります。
結果的に、誰でもできるような仕事ばかりが割り当てられ、キャリアを積んでいくことが難しくなったり、異動によってこれまでのポジションが失われてしまったりという事態もあり得るでしょう。
ただし、休職中は単に休むだけでなく、回復と再スタートに向けた準備を進めることが大切です。
治療と休養を最優先して、起こってもいない未来を想像して落ち込んだり、無理に「何かをしなければ」と無理に焦る必要はありません。
まずは自分にとって最適な働き方を模索しながら、心身の回復に集中し、ゆっくりと回復していきましょう。
休職への罪悪感
日本では、仕事を休むことに対して罪悪感を抱く人が非常に多く、メンタル不調は甘えだと信じている人も少なくありません。
これらの思想により、休職することで「自分は弱い人間だ」「会社に迷惑をかけてしまっている」と罪悪感を感じてしまうのです。
日々の罪悪感から、休職中も自分を責めてしまいなかな心が休まらない人も多いのではないでしょうか。
結果的に復帰後も、「甘えで休んでしまった自分」という自己嫌悪に陥ってしまい、これまで通りの仕事の能力を発揮出来ないこともあり得ます。
休むことは決して悪いことではないということを自身で認識する必要があります。
また、休職から復職・転職を果たした人の事例を知ることで、不安を軽減できることも。
「メンタルで休職したら終わり」これは単なる思い込みに過ぎません。
メンタル不要による休職は、心と体を回復させ、より良い未来に向かうための準備期間です。
自分のペースで回復し、新たな一歩を踏み出していきましょう。

休職をしたら終わりではない理由

休職したら終わりと世間で指摘する声もある一方、必ずしも休職をしたら終わりとは言い切れない理由もあります。
現代社会では、うつ病や適応障害などのメンタルの不調により休職を考える人が増加の一途を辿っています。
しかし、多くの人が前章のような誤解や不安から休職を躊躇し、結果的に症状を悪化させてしまうケースが少なくありません。
実際のデータを見れば、休職は決してキャリアの終わりではなく、むしろ回復のための必要なステップだということがわかります。
- 休職者の約半数は職場に復帰している
- 脳の疲労回復には「休息」が必要
本項目では、休職したら終わりとは言い切れない理由や注意点をまとめました。
休職者の約半数は職場に復帰している
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が2012年に実施した調査によると、過去3年間における病気休職制度利用者の復職率の平均値は51.9%となっています。
つまり、病気による休職者の約半数は職場に復帰しているということになります。
また、メンタルヘルスの理由での休職者の退職率は42.3%であることから、約58%の人が休職後何らかの形で職場に復帰していることを示しています。
また、「民間企業における長期疾病休業の発生率、復職率、退職率の記述疫学研究:J-ECOH スタディ」によると、あくまで過去のケースと照らし合わせての「目安」ですが、メンタル不調による休職は、半年で6割、1年で7割が職場復帰すると報告されています。
メンタル不調で「休職したら終わり」と言われている一方で、半数以上の人が一定の休職期間を設けた後に職場復帰しているのが現状です。
脳の疲労回復には「休息」が必要
精神疾患の場合、ストレス要因から距離を置くことが回復の第一歩です。
脳の疲労回復には「休息」が不可欠であり、医学的にも休職は「辛いことから逃げる行為」ではなく、治療の重要な一部と定義されています。
加えて、脳の疲労回復には十分な睡眠やストレスケアも重要です。
メンタルを良好に保つためには、ストレスを溜めない工夫や、リラックスできる時間を確保しましょう。
たとえば、適度な運動や、気分転換、必要であれば医療機関・専門家への相談も検討が必要です。
無理を続けることで症状が悪化し、復帰までの期間が長引くリスクもあります。
休職中の給与や社会保険料はどうなる?

休職を検討する方の中には、休職中の給与や社会保険料がどうなるのか心配に思う人もいるはずです。
これらに関しても、各企業の判断がポイントとなるため、事前の確認が求められます。
本項目では、休職中の給与や社会保険料についてまとめました。
会社の就業規則を確認する
休職中の給与などに関しても各企業が個々に定めているため、会社の就業規則をチェックすることが必須です。
就業規則には休職時の給与のことなどが書かれています。
多くの企業では休職中の給与は支払われず、代わりに傷病手当金を活用するよう促すケースが目立ちます。
いずれにしても、休職する前に就業規則の確認はしておきましょう。
休職中でも社会保険料の支払いが免除されない
休職中は給与などの減少が避けられませんが、その状態であっても社会保険料の支払いは免除されません。
休職前の社会保険料と同額を、休職中も払う必要があるのです。
休職中の社会保険料の支払い方法に関しても、各企業が決めていくため、休職時に説明を受けましょう。

休職中に給料が支給されない時に利用できる制度

多くの企業では休職中に給料を支給しないため、労働者は本来無収入となってしまいます。
しかし、休職中に給料が支給されない場合には、以下の制度が利用できます。
- 労災保険
- 傷病手当金
本項目では、休職中に活用できる制度について、利用条件なども合わせて解説します。
労災保険
労災保険は、業務上の出来事が原因で生じたケガや病気で休職を余儀なくされた場合に利用できるものです。
業務中のメンタルヘルス問題で労災認定を受けるには、業務が原因で精神疾患を発症したことを証明する必要があります。
一般的に、業務中のメンタルヘルス問題とは以下の事例が挙げられます。
- パワハラ・セクハラ
- 長時間労働
- 過重な責任 など
労災と認定されれば、休業補償給付や治療費の支給など、給与に代わって様々な補償を受けることができます。
労災保険が利用できるのは、以下のケースをすべてクリアした場合です。
- 業務上の出来事もしくは通勤によって生じた病気やケガの療養
- 労働ができない状況にある
- 賃金を受け取っていない状況にある
これらの要件を満たした上で、休業してから4日目から労災保険の対象となります。
労災保険では保険給付のほか、特別支給金が支給される場合もあり、両方支給可能な場合には1日あたり給付基礎日額の80%が支給されます。
しかし、労災認定には時間がかかる場合や、会社との関係が悪化する・職場復帰後の居づらさにつながる可能性があるため考慮する必要があります。
傷病手当金
傷病手当金は、業務以外での場面で病気やケガをして休職を余儀なくされた場合に利用できるものです。
傷病手当金は以下の条件をすべてクリアする必要があります。
- 4日以上休業している
- 業務以外の場面で生じた病気やケガの療養
- 労働ができない状態にある
- 給与が支払われない状態にある
傷病手当金は支給してから通算1年6か月まで受け取り続けることができます。
休職中に傷病手当金を受け取った上で出勤しないでそのまま退職しても、通算1年6か月までは傷病手当金を受け取り続けられるため、万全の状態になるまで療養に専念できるのです。
休職を「終わり」にしないベストな過ごし方

休職中は、単に休むだけでなく、回復と再スタートに向けた準備を進めることが大切です。
本項目では、休職を「終わり」にしないベストな過ごし方についてまとめました。
- 生活習慣を整える
- 専門的な支援を活用する
- 自分のペースで回復を目指す
生活習慣を整える
メンタルヘルスの不調で休職する場合、生活習慣の改善は非常に重要です。
毎日の規則正しい生活リズム、適度な運動、バランスの取れた食事を心がけることで、心身の回復を促進し、復職への準備を整えることができます。
また、休職中には読書や音楽鑑賞、軽い外出など、自分の好きなことやリラックスできる時間を取り入れましょう。
「休職中だから娯楽は控えよう」と思う人もいるかもしれませんが、趣味の時間を持つことで心身の安定に繋がり回復も早くなります。
また、休職中は人との交流が少なくる傾向にあるため、家族や友人との会話、趣味の仲間との交流など、人と関わる機会を意識的に作ることも大切です。
休職中は心身の体調を整えて、いわゆる社会復帰に向けたリハビリをしているということを意識することも大切です。
専門的な支援を活用する
休職からスムーズに復帰するために、専門的な支援を活用することも有効です。
主な支援は以下のとおりです。
- リワーク施設に通う:職場復帰に向けたトレーニングや支援を受けることができる。
- 地域の保健所や保健センター・精神保健福祉センター:こころの相談窓口として、電話相談や来所相談、専門医への意見聴取など、幅広いサポートを提供している。
- 心療内科・精神科・メンタルクリニックでカウンセリングを受ける:専門家のアドバイスを受けながら、自分の状態を客観的に理解し、再発防止策を考える。
- 復職準備プログラムを利用する:会社の産業医やリワーク施設が提供する復職支援プログラムを活用することで、無理なく職場復帰が可能になる。
リワーク施設で実施される「リワークプログラム」は、職場復帰を円滑に行えるようにするためのプログラムです。
医療機関で行われるケースや地域障害者職業センターでのケースがあるほか、企業によっては職場で行うリワークを整備するケースもあります。
医療機関や地域障害者職業センターの場合には健康保険や労働保険、企業の場合には企業負担でリワークが行われます。
無理をしない形でのスムーズな職場復帰を果たせるため、おすすめです。
また、自立支援医療制度の利用も効果的な支援のひとつです。
うつ病などの精神疾患によって休職した場合、通院による経済的な負担を下げられる制度で、本来、医療保険は3割負担となっていますが、自立支援医療制度を活用すれば1割負担で済みます。
通院をし続けるのも負担になりやすい中、1割負担で済むのは魅力的です。
自分のペースで回復を目指す
休職期間中は、客観的な視点を持って自分を振り返ることができるようになります。
自分を見つめ直す時間は、仕事をしている時にはなかなか作り出せず、むしろ目の前の仕事に追われてそれどころではないことがほとんどです。
休職期間中は自分を見つめ直す時間を作り出せるため、今後のことを踏まえたアクションを検討し、行動に移す計画を立てられるようになります。
また、職場復帰を目指すのか、転職を目指すのかも休職段階で決めておくとスムーズです。
休職満了後、スムーズに復職するには

休職期間を終え、スムーズに職場復帰するためには事前の準備が必要です。
ここでは休職満了後、スムーズに復職する方法2項目を紹介します。
- タイミングを見極める
- 休職中に復職の準備をしておく
タイミングを見極める
メンタルヘルス不調からの復職のタイミングは、個人の状態や病状、職場の状況によって大きく異なります。
一般的には、メンタルヘルスの不調による休職期間は3ヶ月から6ヶ月程度が目安とされていますが、症状や状況によっては、それ以上かかる場合もあります。
復職のタイミングを判断する上での最も重要なポイントは「症状の安定」です。
うつ病や適応障害などの精神疾患は、症状の波を繰り返しながら徐々に回復していくため、症状が安定していることが重要です。
具体的には、睡眠や食欲が安定し、気分の落ち込みや不安感が軽減している状態が目安となり、主治医から復職可能と診断された状態を指します。
復職の流れは以下のとおりです。
- 治療と休養:主治医の指示に従い治療と休養に専念する。
- 生活習慣を整える:規則正しい生活を心がけ、生活リズムを整える。
- リワークプログラムなど専門的支援の活用:リワークプログラムに参加したりカウンセリングを受ける。
- 主治医の診断:主治医から復職可能と診断される。
- 産業医との面談:産業医と面談し復職に関する情報を共有する。
- 職場への復帰:職場復帰に向けて必要な手続きを行う。
- 復職後のフォローアップ:復職後も定期的に主治医や産業医と面談し、必要に応じてサポートを受ける。
休職中に復職の準備をしておく
メンタルヘルスの不調で休職中に復職準備を始めることは、スムーズな職場復帰のために非常に重要です。
事前に十分な準備を行うことで、スムーズな復職が可能になり、復職後の再休職リスクを軽減することも期待できます。
復職の準備として、体調管理やストレス対策をしておくことが欠かせません。
職場復帰後も健康を維持するために、休職中に身につけたセルフケアの方法を維持し、習慣化しておくことで仕事によるストレスを和らげることができます。
また、適度な運動や栄養バランスの取れた食事、規則正しい睡眠も重要です。
このような取り組みを継続することで、復職後に自分の体調を安定して管理することが可能となります。
また、復職前には、主治医や産業医、上司との相談も大切な準備のひとつです。
会社の人事担当者や上司と話し合い、復職のスケジュールや勤務形態について計画を立てましょう。
すぐにフルタイム勤務に戻るのではなく、まずは短時間勤務から始めて段階的に業務を増やすなど対策することによって精神的負担を軽減することができます。
休職にまつわるよくある疑問

ここまで休職に関する内容を解説してきました。
最後に休職に関するよくある質問についてまとめています。
- 休職中に解雇される?
- 結論から言いますと、休職中に解雇されることはまずないでしょう。
労働基準法第19条1項において、業務上のケガや病気によって休業した場合、治療期間とその後30日間の解雇が禁止されているためです。
一方で、業務外の病気やケガで会社を休職する場合には注意が必要です。
就業規則に定められた休職期間満了までに回復しない場合、解雇または退職に追い込まれることがあるからです。
就業規則に、休職期間満了後に復帰できない場合には自動的に退職するなどの文言があると、休職期間満了の時点で労働契約が終了する形となります。
休職期間中に解雇される可能性はないとしても、休職期間満了後に退職に追い込まれる可能性もあるため、就業規則を事前に確認しましょう。
- 休職中に退職できる?
- 結論から言いますと、休職中に退職する自体は、法的に見て何ら問題ありません。
民法627条にも「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」と記載されています。
ですので、労働者はいつでも退職を申し出ることができるため、休職中であっても退職は可能となります。
注意したいのは、傷病手当金を退職後も受け取りたい場合です。
退職日に出勤してしまうと、傷病手当金を受け取る条件を満たせなくなり、退職後傷病手当金を受け取れなくなります。
そのため、出勤扱いにならないよう、細心の注意を払った上で挨拶回りを行うことが求められます。
- 休職はキャリアに影響しますか?
- 休職中に解雇されることはまずないでしょう。
業務上のケガや病気によって休業した場合は、治療期間とその後30日間の解雇が法律で禁止されているためです。
ただし、業務外の病気やケガで会社を休職する場合は、就業規則に定められた休職期間満了までに回復しなければ、解雇または退職になることがあります。
- 会社を休職するとどんなデメリットがありますか?
- 休職中に退職することは、法的に何ら問題ありません。
民法627条にも「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」と記載されています。
労働者はいつでも退職を申し出ることができるため、休職中であっても退職は可能です。
まとめ
今回は休職したら終わりかどうかについて解説をしてきました。
最後に今回ご紹介した内容を振り返っていきます。
- 休職したら終わりと言われるのは、復帰後職場に居づらかったり、社会復帰する際に気力が失われたりするから
- 休職自体は従業員の権利なので、休職したら終わりとは必ずしも言えない。
- 休職しても、労災保険や傷病手当金などの制度があるので問題ない
- 休職にはメリットも多く、休職した方がいい人がいるのも事実
休職してしばらく休んでしまうことで、いざ働かなければならないという時に働く気力がわかないケースも十分に考えられます。
しかし、リワークプログラムなど社会復帰や職場復帰に向けた制度は整えられており、休職すること自体は悪いことではなく、むしろメリットが多いと言えるでしょう。
傷病手当金などがあれば、最低限の生活を送れるだけの収入は確保できるため、治療に専念して社会復帰・職場復帰を目指していくのがおすすめです。うつ病休職して退職するのはずるい?理由や対策について解説!
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