退職が決まったものの、引き継ぎをいつから始めればよいのか判断がつかず、不安に感じる人は少なくありません。
「引き継ぎが終わらないまま最終出社日を迎えたらどうしよう」と心配になる方もいるはずです。
本記事では、退職の引き継ぎを始めるべき時期の目安と、退職日から逆算したスケジュールの立て方を解説します。
あわせて、職種別に必要な期間の違いや、実際にやることのリストも整理しています。
引き継ぎと並行して進めたい退職後の手続き準備にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。

退職の引き継ぎって、いつから準備を始めればいいんだろう?

有給も消化したいけど、引き継ぎが終わらずに退職日を迎えそうで不安…
本記事では上記の疑問やお悩みなどにお応えします。
- 退職の引き継ぎを始めるタイミングと期間の目安
- 退職日から逆算して引き継ぎスケジュールを組む手順
- 有給消化を含めた退職日の決め方と注意点
- 引き継ぎでやることリストと引き継ぎ書に書く項目
- 引き継ぎが間に合わないときや後任者が決まらないときの対処法
- 退職前から相談OK
- 社労士が退職〜受給開始までの流れを整理
- LINEで無料の受給診断ができます!
| 相談料 | 無料 |
| 対応地域 | 全国 |
| 受給可能額 | 最大200万円 |
\“もらえる額”を把握して損を防ごう/
退職の引き継ぎはいつから始めるべき?期間の目安
結論として、退職の引き継ぎは退職の意思を上司に伝えた直後から着手するのが安心です。
目安としては、退職日の1か月から1か月半ほど前に退職を申し出て、そのまま引き継ぎに入る流れになります。
ここでいう「1か月〜1か月半前」は引き継ぎに着手する時期の目安で、次に述べる「2週間〜1か月」は引き継ぎ作業そのものに充てる期間の目安です。
引き継ぎに必要な日数を定めた法令はなく、期間は退職日から逆算して自分で組み立てることになります。
引き継ぎ期間の一般的な目安は2週間〜1か月
担当している業務が定型的で、後任者がすでに決まっている場合は、2週間から1か月程度を引き継ぎに充てる形が一般的です。
この期間には、業務の洗い出しと引き継ぎ書の作成、後任者への説明、実務の同行までが含まれます。
ただし、これは法律で決められた日数ではなく、実務上の目安として語られている期間です。
厚生労働省の資料でも、退職の意思を上司に伝え、書面で届け出て、仕事の引き継ぎをするなど、社会的ルールを守って辞めることが大切だとされています。
日数そのものではなく、引き継ぎを行うこと自体が社会人としての慣行と位置づけられている点を押さえておきたいところです。
業務が複雑な場合は2〜3か月前から準備を始める
関係者が多い業務や、担当者が一人しかいない業務を持っている場合は、2〜3か月前から準備を始めておくと安心です。
特に次のようなケースは、引き継ぎの実作業に入る前の準備段階で時間がかかりやすくなります。
- 後任者がまだ決まっていない
- 取引先へのあいさつ回りが必要になる
- 進行中のプロジェクトを抱えている
- マニュアルがなく手順が属人化している
後任が決まるまでの期間は口頭での説明ができないため、その間に業務の洗い出しと資料化を先に進めておく形が現実的です。
民法上は退職を申し出てから2週間で退職できる
期間の定めのない雇用契約であれば、法律上は解約の申入れの日から2週間が経過することで雇用契約が終了します(民法第627条第1項)。
正社員などは少なくとも2週間前までに退職を申し出れば、法律上はいつでも辞められる扱いです。
ただし、これは退職できる法的な下限を示したもので、引き継ぎを終えられる期間という意味ではありません。
2週間で退職する場合、土日祝日を除くと引き継ぎに使える実働日は10日前後まで縮む場合があります。
就業規則で「1か月前までに申し出」と定める会社が多い
実務では、退職予定日の1か月前までに申し出ることと就業規則で定めている会社が多いとされています。
法的な義務ではありませんが、社内の手続きや後任の調整を踏まえたルールとして設けられているものです。
まずは自社の就業規則で申し出の期限を確認し、そこから引き継ぎのスケジュールを組み立てるとずれが起きにくくなります。
なお、契約期間の定めがある有期労働契約の場合は、契約期間の満了とともに労働契約が終了します。
契約の満了日が事前に分かっているため、その日から逆算して引き継ぎの計画を立てやすい点が、期間の定めのない雇用との違いです。
ポイント
引き継ぎの期間は「法律で決まった2週間」ではなく、「就業規則の申し出期限」と「有給休暇の残日数」の2つから逆算します。就業規則の確認は、退職を切り出す前に済ませておくとスケジュールを立てやすくなります。

【重要】退職後に損しないために
退職前に確認・対応しておくべきことを「引き継ぎに追われて後回しにすると損する退職後のお金の手続き」で解説しています。
先に読む →
退職日から逆算する引き継ぎスケジュールの立て方
引き継ぎのスケジュールは、退職日ではなく「最終出社日」を基準に逆算するのが基本です。
有給休暇を消化する場合、退職日と最終出社日の間には出社しない期間が生まれます。
この差を見落とすと、想定より引き継ぎ日数が足りなくなることがあります。
①退職希望日と最終出社日を決める
最初に、いつ付けで退職したいのかという退職希望日を決めます。
そのうえで、退職希望日から有給消化の日数を差し引いた日が、実質的な最終出社日になります。
引き継ぎの完了目標は退職日ではなく、この最終出社日に置きます。
後任者への説明も、社内外へのあいさつも、最終出社日までにすべて終える前提で組み立てます。
②有給休暇の残日数を確認して逆算する
次に、有給休暇が何日残っているかを給与明細や勤怠システムで確認します。
たとえば有給が20日残っていて全日数を消化する場合、退職日のおよそ1か月前が最終出社日になる計算です。
年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えなければならないのが原則とされています。
事業の正常な運営を妨げる場合に限り、使用者は時季変更権を行使できるとされています(労働基準法第39条第5項)。
ただし退職日を超えて休暇の時季を変更することはできないとする考え方があるため、退職日以降にずらして消化することは難しいと考えておくほうが安全です。
注意
有給の残日数を確認しないまま退職日だけを先に決めてしまうと、引き継ぎに使える出社日が想定より大幅に少なくなる場合があります。退職の意思を伝える前に残日数を確認しておくことが大切です。
③退職の申し出から最終出社日までの日数を割り出す
最終出社日が決まったら、そこから退職の申し出時期を割り出します。
前述のとおり、就業規則で退職予定日の1か月前までの申し出を求める会社が多いとされています。
この申し出期限は退職日を基準にしているため、有給消化がある場合は申し出から最終出社日までの期間がさらに短くなります。
引き継ぎに十分な時間を取りたい場合は、就業規則の期限よりも早めに申し出るという判断も選択肢になります。
④引き継ぎに使える実働日数を把握する
最後に、申し出から最終出社日までの間に、実際に何日出社できるのかを数えます。
土日祝日や、すでに予定が入っている出張・研修などを差し引くと、実働日数は暦の日数よりかなり少なくなります。
その実働日数を、業務の洗い出し・資料作成・後任者との実践の3つにどう配分するかを先に決めておきます。
また、最終出社日を選ぶ際は業務サイクルも考慮します。
- 月次の締め処理や請求業務が集中する時期
- 決算期・棚卸しなど部署全体が繁忙になる時期
- 担当プロジェクトの納品直前・イベント直前
- 後任者が別業務の繁忙期で時間を取れない時期
締め処理が終わった直後など、業務の区切りに最終出社日を合わせると、後任者が落ち着いて業務を引き受けやすくなります。


職種・業務タイプ別に見る引き継ぎ期間の目安
必要な引き継ぎ期間は、業務の属人性の高さと、関わる関係者の多さによって大きく変わります。
手順が決まっていて社内で完結する業務ほど短く、判断の積み重ねや社外との関係が絡む業務ほど長くなります。
後任者がすでに決まっているかどうかによっても、確保しておきたい期間は変わります。
ここでは代表的な4つのタイプに分けて、期間の考え方を整理します。
ルーティン中心の事務職・アシスタント職
日次・月次で手順が決まっている業務が中心の場合は、比較的短い期間でも引き継ぎを終えられる場合があります。
手順書に落とし込みやすく、後任者が同じ操作を再現しやすいためです。
2週間前後の期間でも、一度実際の作業を見せながら進められれば対応できる場合があります。
ただし、月次・年次で発生する業務は在職中に一度も実演できないことがあるため、手順書に発生時期と対応内容を書き残しておくと安心です。
顧客担当を持つ営業職
取引先を担当している場合は、社内での説明に加えて、後任者を連れたあいさつ回りの日程調整が必要になります。
先方の都合に合わせる分だけ日程が読みにくく、社内業務だけの引き継ぎより長めに見ておくほうが安全です。
引き継ぐ内容には、商談の進捗だけでなく次のような情報も含まれます。
- 取引条件と過去の価格交渉の経緯
- 先方の決裁ルートとキーパーソン
- クレームやトラブルの対応履歴
- 次回の提案予定と納期
プロジェクト単位で動く企画職・エンジニア職
プロジェクトが進行中の場合は、区切りのよいフェーズの終わりを退職日の目標に置く考え方があります。
設計や実装の途中で担当が変わると、意思決定の経緯が伝わらず後任者の手戻りが増えやすいためです。
フェーズの区切りに合わせられないときは、検討中の選択肢と却下した案、その理由まで文書に残しておくと引き継ぎの精度が上がります。
共有サーバーやツール上のドキュメントは、保存場所とアクセス権限まで併せて伝えておくことが欠かせません。
後任が社外採用になる専門職・一人担当の業務
後任者を社外から採用する場合や、その業務の担当者が自分しかいない場合は、2〜3か月前から資料化を先行させる進め方が現実的です。
採用や社内公募には時間がかかり、後任者が着任するまで対面での説明ができないためです。
後任が決まっていない段階でも、業務の一覧・手順・関係者の連絡先をまとめておけば、着任後の説明を短い期間に圧縮できます。
資料がそろっていれば、後任者が着任しないまま最終出社日を迎えた場合でも、上司や他部署が暫定的に対応しやすくなります。

退職の引き継ぎでやることリスト一覧
引き継ぎは、「洗い出し→資料化→同行・実践→あいさつ→返却」の5段階で進めると抜けが起きにくくなります。
思いついた業務から順に説明していく進め方では、頻度の低い業務が最後まで残りやすいためです。
最初に全体像を並べてから、それぞれに使う日数を割り振っていきます。
担当業務をすべて洗い出す
最初の作業は、担当している業務をもれなく書き出すことです。
記憶をたどるだけでは抜けが出るため、日次・週次・月次・年次の頻度別に分けて書き出す方法が有効です。
頻度別に枠を作ると、「毎月10日の請求書送付」「年1回の保険更新手続き」といった、普段は意識していない業務も拾いやすくなります。
過去1年分のスケジュール帳やメールの送信履歴、共有フォルダの更新履歴をさかのぼると、記憶だけでは思い出せない業務が見つかります。
業務の優先順位と頻度を整理する
書き出した業務は、そのまま説明するのではなく優先順位を付けます。
止まると社内外に影響が出る業務、期限が決まっている業務から順に並べ替えます。
優先度の高い業務から後任者に説明していけば、途中で時間が足りなくなった場合でも重要な部分は引き継ぎ終わっている状態になります。
あわせて、その業務に毎回どれくらいの時間がかかるのかも書き添えておくと、後任者が自分の業務量を見積もりやすくなります。
引き継ぎ書・業務マニュアルを作成する
洗い出した業務は、口頭説明だけで終わらせず書面に残します。
担当者が退職したあとに疑問が出ても、書面が残っていれば後任者が自力で確認できるためです。
引き継ぎ書には次の項目を入れておくと、実務で使える資料になります。
- その業務の目的と、社内での位置づけ
- 作業手順(画面の操作順やファイルの保存場所まで)
- 使用するシステム・ツールとログインの管理方法
- 社内外の関係者と連絡先、窓口となる担当者
- トラブルが起きたときの対応と連絡先
- これまでの経緯や、現在のやり方に至った理由
特に「過去の経緯」は担当者の頭の中にしかない情報になりやすく、書き残しておく価値が高い部分です。
後任者と一緒に実務を行う期間を設ける
資料が用意できたら、後任者と一緒に実際の業務を行う期間を取ります。
最初は担当者が作業し後任者が見る形から始め、次に後任者が作業して担当者が横で確認する形へ切り替えます。
この後任者が単独で実施して担当者が確認する期間を、最終出社日の1〜2週間前に確保しておくと、疑問点をその場で解消できます。
実際にやってもらうと、資料の説明が足りない箇所や手順の抜けもその場で見つかります。
ポイント
後任者に見せるだけの引き継ぎでは、細かい判断の基準が伝わりません。最後の1〜2週間は後任者が主体で動き、担当者は質問を受ける側に回る期間として空けておくと、退職後の問い合わせを減らせます。
取引先・社内関係者へのあいさつと後任紹介
社外の取引先には、後任者を同行させたあいさつを基本とします。
担当が代わることを伝えるだけでなく、次に誰へ連絡すればよいのかをその場で明確にするためです。
訪問と連絡手段は、関係の深さで使い分けます。
- 取引額が大きい先・継続案件がある先は後任者と訪問
- やり取りが少ない先はメールで後任者の連絡先を案内
- 社内の関係部署へは、最終出社日と後任者を早めに周知
あいさつのメールには、最終出社日と後任者の氏名・連絡先を必ず入れておきます。
共有データ・アカウント・備品の整理と返却
最後に、データと会社からの貸与物を整理します。
個人のパソコン内に業務データを置いたままにせず、共有フォルダへ移して保存場所を後任者に伝えます。
使用していた外部サービスのアカウントも、後任者への引き渡しか停止のどちらにするかを決めておきます。
会社へ返すものは、最終出社日までに手元でそろえておきます。
- 貸与パソコン・携帯電話などの機器
- 社員証・入館カード・オフィスの鍵
- 健康保険証(扶養家族の分も含む)
- 制服・名刺・業務で使った書類やデータ
- 通勤定期券(会社支給の場合)
健康保険証は退職日の翌日から使えなくなるため、返却のタイミングを事前に確認しておくと安心です。

【重要】退職後に損しないために
退職前に確認・対応しておくべきことを「引き継ぎに追われて後回しにすると損する退職後のお金の手続き」で解説しています。
先に読む →
引き継ぎが間に合わないときの対処法
引き継ぎが間に合わないときは、すべてを引き継ごうとせず、業務の重要度で線を引くのが基本です。
残された日数は増やせないため、限られた時間をどこに使うかを決めるほうが確実です。
そのうえで、日程を調整できる余地がないかを関係者に相談していきます。
優先順位を付け直して重要業務から引き継ぐ
まず、洗い出した業務を「対面で引き継ぐもの」と「資料化だけにとどめるもの」に振り分けます。
毎日発生する業務や、止まると取引先に影響が出る業務は、時間を取って対面で引き継ぎます。
一方で発生頻度が年に数回で、遅れても実害が出にくい業務は資料化のみにとどめる判断が現実的です。
資料化だけにした業務は一覧にして、後任者と上司の双方に「これは書面のみ」と明示して渡します。
後任者が決まらない場合は上司に判断を委ねる
後任者が決まらないまま最終出社日が近づくこともあります。
その場合は、引き継ぎ先を個人ではなく上司や部署に置き換えて整理します。
暫定的に問い合わせを受ける窓口を誰にするかを決め、資料の保管場所を一覧にして上司へ引き渡します。
誰が引き継ぐかの人選は会社側の判断事項のため、決まらないことを抱え込む必要はありません。
最終出社日や有給消化日数を調整できるか相談する
日数そのものが足りない場合は、有給消化の日数を減らして最終出社日を後ろにずらす選択肢があります。
前述のとおり、有給休暇は労働者が請求する時季に与えられるのが原則です。
ただし退職日を超えて時季を変更することはできないとする考え方があるため、消化しなかった有給は退職とともに消滅する場合があります。
会社によっては未消化分を買い取る扱いがある場合もありますが、法律上の義務ではないため、事前に人事へ確認しておくことが必要です。
注意
「引き継ぎが終わらないから」と有給消化を安易に削ると、本来取得できたはずの休暇を失うことになりかねません。日数を減らす前に、資料化だけで済ませられる業務がないかを先に見直すことが大切です。
転職先の入社日を調整できるか確認する
転職先が決まっている場合は、入社日を後ろにずらせるかを確認する方法もあります。
入社日の変更は転職先の受け入れ体制にも関わるため、判断できる時期は限られます。
相談するなら、引き継ぎが間に合わないと分かった時点でできるだけ早く伝えることが大切です。
相談の際は、何日必要なのか、なぜ必要なのかを具体的に示すと調整が進みやすくなります。
引き継ぎをしないまま退職した場合のリスク
引き継ぎの期間を定めた法令はありませんが、厚生労働省の資料でも、退職の意思を伝え、書面で届け出て、仕事の引き継ぎをするといった社会的ルールを守って辞めることが大切だとされています。
引き継ぎを一切行わずに退職すると、業務が止まって社内外に影響が及び、会社との関係が悪化することがあります。
会社から損害賠償を主張されるトラブルに発展する可能性も否定できません。
民法上は解約の申入れから2週間の経過で雇用が終了しますが、退職できることと、引き継ぎをせずに去ってよいことは別の問題です。
間に合わない見込みが立った時点で上司へ状況を共有し、どこまで引き継ぐかを合意しておくことがトラブルの回避につながります。

引き継ぎと並行して進めたい退職後の手続き準備
引き継ぎを進めるのと同時に、退職後に必要な書類の受け取り方と社会保険の切り替え先を決めておくのが安心です。
最終出社日を過ぎると社内の担当者と直接話す機会が減り、確認に時間がかかるようになります。
在籍中に段取りを決めておけば、退職後の手続きを予定どおり進めやすくなります。
会社から受け取る書類を最終出社日までに確認する
退職時には、その後の手続きで使う書類を会社から受け取ります。
どの書類がいつ・どの方法で渡されるのかを、在籍中に人事へ確認しておきます。
- 離職票(失業保険の手続きで使用)
- 雇用保険被保険者証(転職先へ提出)
- 源泉徴収票(転職先での年末調整や確定申告で使用)
- 年金手帳・基礎年金番号通知書(会社が預かっている場合)
- 退職証明書(必要に応じて発行を依頼)
最終出社日に手渡しされるものと、後日郵送されるものが分かれるのが一般的です。
郵送分がある場合は、送付先の住所と、引っ越し予定があるかどうかを事前に伝えておくと受け取り漏れを防げます。
離職票が届く時期の目安を把握しておく
離職票は最終出社日にその場で渡されるものではなく、退職後に届く書類です。
会社は雇用保険被保険者資格喪失届に離職証明書を添えて、被保険者でなくなった日の翌日から10日以内に管轄のハローワークへ提出することとされています。
ハローワークでの処理を経て会社へ交付され、そこから本人へ届くという流れになるため、離職票が手元に届くまでには一定の期間がかかります。
基本手当は、ハローワークへの求職申込みと離職票の受理の後、失業の状態にあった日が通算7日間経過してから支給が始まります。
手続きの起点が離職票の到着になるため、届かない状態が続く場合は会社へ発行状況を問い合わせておくことが必要です。
健康保険・年金の切り替え先を退職前に決めておく
健康保険と年金は、退職後に自分で切り替え手続きをします。
健康保険証は最終出社日や退職日までに返却するのが一般的で、返却の時期は会社の運用によって異なります。
健康保険の切り替え先には、これまでの健康保険の任意継続、国民健康保険、家族の被扶養者になる方法があり、保険料や条件が異なります。
年金についても、退職後の状況に応じて手続きが必要です。
注意
国民年金への切り替えは、退職日の翌日から14日以内に住所地の市区町村役場で届書を提出することとされています。国民健康保険の資格取得の届出も14日以内と定められているため、引き継ぎで慌ただしい時期でも、切り替え先だけは退職前に決めておくことが大切です。
どの方法を選ぶかで負担額が変わる場合があるため、在籍中に比較しておくと退職後に迷わずに済みます。
【重要】引き継ぎに追われて後回しにすると損する退職後のお金の手続き
引き継ぎで忙しい時期こそ、退職前に自分の雇用保険の加入期間と離職理由の見込みを確認しておくことが大切です。
これらは退職後に受け取れる可能性のあるお金の条件に直結しますが、在籍中でなければ確認しにくい情報でもあります。
引き継ぎの合間に、次の項目だけは自分の手元で整理しておきたいところです。
- 雇用保険に加入していた期間(前職からの通算があるか)
- 離職理由が自己都合と会社都合のどちらで処理される見込みか
- 有給休暇の残日数と、消化する日数
- 在職中に病気やけがで休んでいた期間があるか
退職後には失業保険(基本手当)のほか、傷病手当金や再就職手当など、条件を満たせば受け取れる可能性のある給付金があります。
ただし、これらは自動で振り込まれるものではなく、それぞれ申請書類をそろえて手続きをする必要があります。
離職理由の認定内容や記入の誤り、申請期限の超過によって、期限を過ぎると請求できなくなる場合があり、後から取り返せない手続きも含まれます。
受け取り始める時期も離職理由によって変わります。
正当な理由のない自己都合退職では、令和2年10月1日以降の離職で5年間のうち2回まで給付制限期間が2か月、3回目以降や重大な自己責任による離職では3か月とされています。
制度の内容は改正されることがあり、自分がどれに当てはまるのかを一人で判断するのは簡単ではありません。
引き継ぎに追われて手続きを後回しにすると、条件を満たしていたはずの給付金を受け取れなくなることもあります。
退職前の段階で制度に詳しい専門家に相談し、自分の状況に合ったサポートを受けておくと、受け取れる可能性のある給付金を取りこぼさずに済みます。

雇用保険の加入期間や離職理由によって、受け取れる可能性のある給付金は変わります。引き継ぎで慌ただしい時期でも、自分の場合はどうなりそうかをLINEの無料診断で目安だけ確認しておくと安心です。
\“もらえる額”を把握して損を防ごう/
よくある質問
- 退職の引き継ぎは法律上の義務なのでしょうか?
- 引き継ぎに必要な日数を定めた法令はなく、法律上の明確な義務として日数が決まっているわけではありません。
ただし厚生労働省の資料でも、退職の意思を上司に伝え、書面で届け出て、仕事の引き継ぎをするなど、社会的ルールを守って辞めることが大切だとされています。
引き継ぎをせずに退職した結果として業務が止まり、会社との間でトラブルに発展する可能性も否定できません。
法定の日数がないからこそ、どこまで引き継ぐかを上司と早めに合意しておくことが安心につながります。
- 引き継ぎの相手(後任者)が決まっていない場合、引き継ぎ書は誰に渡せばよいですか?
- 後任者が決まっていない場合は、引き継ぎ先を個人ではなく上司や部署に置き換えて整理する方法があります。
誰が業務を引き継ぐかの人選は会社側の判断事項にあたるため、決まらない状況を一人で抱え込む必要はありません。
引き継ぎ書と資料の保管場所を一覧にして上司へ渡し、暫定的に問い合わせを受ける窓口を決めておくと、着任した後任者へ引き渡しやすくなります。
- 引き継ぎ中に有給休暇を使うことはできますか?
- 年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えなければならないのが原則とされています。
事業の正常な運営を妨げる場合に限り、使用者は時季変更権を行使できるとされていますが(労働基準法第39条第5項)、退職日を超えて時季を変更することはできないとする考え方があります。
引き継ぎ期間中に取得すること自体は可能でも、出社できる日が減って予定していた説明が終わらなくなる場合があります。
まとまった日数を消化するのであれば、最終出社日を基準にしたスケジュールを先に組み立てておくと安心です。
- 退職代行を利用した場合、引き継ぎはどうなりますか?
- 退職代行を利用した場合でも、業務の引き継ぎが不要になるわけではありません。
出社しないまま退職する形になると口頭での説明ができないため、担当業務の一覧や手順、関係者の連絡先を書面にまとめ、会社へ提出できる状態にしておく対応が考えられます。
民法上は解約の申入れの日から2週間の経過で雇用契約が終了しますが、退職できることと引き継ぎをしないでよいことは別の問題です。
貸与品の返却や離職票などの書類の受け取り方についても、あらかじめ連絡方法を決めておくことが大切です。
- 引き継ぎ書はどのくらいのボリュームで作ればよいですか?
- 分量そのものよりも、後任者が資料だけで作業を再現できるかどうかを基準に考えます。
日次業務のように頻度が高いものは手順を細かく、年に数回しか発生しない業務は発生時期と対応の流れを中心に書くと、必要な情報が偏らずに済みます。
作成後に後任者へ実際に読んでもらい、分からない箇所を質問してもらうと、説明が足りない部分をその場で補えます。
まとめ|引き継ぎは退職の意思を伝えた直後から逆算して動くのが安心
退職の引き継ぎ期間の目安は2週間〜1か月で、業務が複雑な場合は2〜3か月前から準備を始めると安心です。
民法上は解約の申入れから2週間の経過で雇用が終了しますが、就業規則で退職予定日の1か月前までの申し出を定める会社が多いとされています。
そのため、有給消化の日数も踏まえて最終出社日から逆算し、実際に引き継ぎへ使える日数を早めに把握しておくことが大切です。
最後に今回解説した内容を振り返ります。
- 引き継ぎ期間の目安は2週間〜1か月、複雑な業務は2〜3か月前から着手する
- 退職日ではなく最終出社日を基準に、有給消化分を差し引いて逆算する
- 業務の洗い出し、引き継ぎ書の作成、後任者との同行、あいさつ、返却の順に進める
- 間に合わないときは重要度で線を引き、資料化にとどめる業務を決める
引き継ぎと並行して、会社から受け取る書類の確認と健康保険・年金の切り替え準備も進めておくと、退職後に慌てずに済みます。


