失業保険はパワハラで退職した場合はどうなる?会社都合と認定される方法も解説

「パワハラがつらくて会社を辞めたい。でも、失業保険はどうなるのか心配…」そんな不安を抱える方は多いものです。

パワハラを理由に退職した場合でも、状況によっては会社都合として扱われ、基本手当を早く受け取れる可能性があります。

この記事では、離職理由の判断基準や、ハローワークで必要となる証拠、自己退社から会社都合へ変更する流れをまとめました。

未払い残業代や慰謝料の請求にも触れながら、パワハラ退職と失業保険のポイントをわかりやすく解説します。

パワハラで退職を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

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そもそもパワハラとは?

パワハラについて考えるとき、まず知っておきたいのが「どんな行為がパワハラに当たるのか」という基本的な部分です。

ここでは、パワハラがどのような行為を指すのか、その基本的な考え方をわかりやすく紹介します。

パワハラの法律上の定義

パワハラの法律上の定義は、3つの要素がそろった場合に成立します

まずこの枠組みを押さえることで、どの行為が線を越えるのか判断しやすくなります。

厚生労働省の指針を基に、職場と労働者の範囲も含めてまとめました。

以下の3つを全て満たす行為がパワハラとして扱われます。

  • 優越的な関係を背景とした言動であること
    ・上司の立場を利用した叱責
    ・専門知識を盾にした同僚の圧力
    ・複数名による集団的な排除行為
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
    ・業務目的と関係のない叱責
    ・人格を否定する発言
    ・回数や態様が社会通念から逸脱している指示
  • 就業環境を害していること
    ・精神的な苦痛で業務に支障が生じる
    ・身体的な負担が強まり就労が困難になる
    ・一般の労働者でも看過できないレベルの支障が発生する
「職場」とみなされる場所
  • 出張先や取引先での打ち合わせ、業務中の移動など、仕事に関連する場所全般
  • 社員寮や懇親会も、状況によっては職場として扱われることがある
「労働者」に含まれる人
  • 正社員だけでなく、パートや契約社員、派遣労働者も対象
  • 派遣労働者については、派遣元と派遣先の双方が適切な対応を求められる

パワハラに当たるかどうかは、状況に応じて総合的に判断されます。

不安な場合は、早めに相談窓口を利用しましょう。

6つの種類

パワハラと一口にいっても、その内容はさまざまです。

ここでは、法令や指針で示されている6つの類型を整理し、それぞれの特徴を簡潔に紹介します。

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害

身体的な攻撃

身体的な攻撃は、パワハラの中でも特に重大な類型とされています。

厚生労働省の指針でも、労働者に対して暴力を加える行為は明確にパワハラと位置づけられています

たとえば、以下のようなケースが該当します。

  • 相手の体を殴打する行為
  • 足で蹴るなどの直接的な暴力
  • 机上の物を投げつけて危険を与える行為

これらは「偶然触れた」などの不可抗力ではなく、意図を持った行為として判断されます。

特に、上司が職務上の立場を利用して部下へ暴力を加えた場合、パワハラと認定される可能性が高いとされています。

過去の裁判例でも、暴力行為により就業環境を大きく損なったとして、パワハラに該当すると判断された事案が複数存在します。

精神的な攻撃

精神的な攻撃は、相手の心に強い負担を与える行為として、パワハラの代表的な類型に位置づけられています。

厚生労働省の指針でも、人格を傷つける言葉や、不必要に厳しい叱責は注意すべき行為とされています。

具体的には、次のようなケースが挙げられます。

  • 相手の人格や尊厳を否定する発言
  • 長時間にわたる強い叱責を繰り返す行為
  • 他の従業員の前で威圧的に注意を続ける行為
  • 侮辱的な内容のメールを複数人に送る行為

これらは、業務指導の範囲を超え、労働者の心を大きく傷つける可能性があります。

パワハラにあたらないとされる場面
  • 度重なる遅刻を改善するための注意
  • 重大なトラブルが起きた際に必要な指導

業務上の必要性が明確な場合、一定の強い注意が行われることもあります。

裁判例でも、心を深く傷つける発言が問題視されたケースが複数あります。

一方で、その場の状況による一度の強めの叱責がパワハラに当たらないと判断された事案もあります。

精神的な攻撃に該当するかどうかは、言葉の内容だけでなく、経緯や背景も含めて丁寧に判断される点が特徴です。

人間関係からの切り離し

人間関係からの切り離しは、周囲とのつながりを奪う行為として、パワハラの中でも注意が必要な類型です。

厚生労働省の指針でも、特定の従業員だけを隔離したり、集団で無視するといった行為が問題として示されています。

たとえば次のようなケースがあります。

  • 特定の従業員を長期間別室に移し、通常の業務から外す
  • 同僚がまとまって無視し、職場で孤立させる

このような扱いは、配置変更の範囲を超え、不利益を与える行為として見られやすいものです。

行為の背景や目的によって評価が変わるため、個々の状況を丁寧に見ることが重要です。

過大な要求

過大な要求は、従業員に過度な負担をかける行為として、パワハラに該当しやすい類型の一つです。

厚生労働省の指針でも、無理な業務を強いたり、達成できない状況を作り出す行為が問題として示されています。

代表的な例は次のとおりです。

  • 肉体的に厳しい環境で、業務と関係のない作業を長期間続けさせる
  • 教育をしないまま新人に高すぎる目標を課し、達成できないことを強く責める
  • 私的な雑用を業務の一部として強制する

いずれも、従業員が過度なストレスを抱えやすい点が特徴です。

過大な要求に当たらないとされる例
  • 成長を促す目的で少し難しい仕事を任せる
  • 繁忙期に、一時的に業務が増える

業務の必要性が明確な場合は、ある程度の負荷が認められます。

裁判例にみる判断のポイント

精神疾患を抱える教員に負担の大きい業務を追加した事案では、健康状態を踏まえずに業務を増やした点が問題とされました。一方で、従業員自身が能力を誇張していたケースでは、会社の指導は適切と判断されています。

このように、過大かどうかの判断には、業務内容だけでなく、背景や個々の状況を丁寧に見ることが欠かせません。

過小な要求

過小な要求は、従業員の能力や経験とかけ離れた簡単すぎる業務しか与えない、あるいは意図的に仕事を与えない行為としてパワハラになり得ます。

厚生労働省の指針でも、次のような行為が例として挙げられています。

  • 管理職に対し、退職を促す目的で誰でもできる作業だけを任せる
  • 気に入らない従業員に嫌がらせとして仕事を与えない

これらは、職務を通じて成長する機会を奪う行為として問題となります。

過小な要求に当たらない例
  • 能力や体調に応じて業務量を調整する
裁判例にみる判断のポイント
  • 麻酔科医を手術から完全に外した事例
    問題点を指摘したことへの報復と捉えられ、不当な扱いと判断されました。
  • 成績不良を理由に倉庫へ配置転換された事例
    必要性が薄く、嫌がらせの意図が強いとみなされ、配置転換は無効とされました。

このように、行為の背景や必要性の有無が判断のポイントとなり、過小な要求かどうかを見極める場面では慎重さが求められます。

個の侵害

個の侵害は、従業員のプライバシーに不必要に踏み込む行為として、パワハラの中でも特に注意すべき類型です。

厚生労働省の指針では、私生活に関わる情報の扱いに細心の配慮が求められており、次のような行為が問題とされています。

  • 職場外で従業員を継続的に監視したり、私物を勝手に撮影する
  • 性的指向、病歴、不妊治療などデリケートな情報を本人の同意なく周囲に知らせる

いずれも、個人の尊厳を損ない、就業環境に大きな影響を与える行為です。

個の侵害に当たらない行為
  • 配慮を目的として家族状況を確認する
  • 本人の同意を得たうえで必要な範囲で個人情報を人事担当者に共有する

適切なサポートを目的とした行為は、プライバシーへの過度な介入には当たりません。

個の侵害が成立するかどうかは、行為の目的や配慮の有無を丁寧に見極めることが重要です。