失業保険(失業手当)と国民健康保険の手続き方法や条件をケース別に解説!

失業保険と国民健康保険の入り方!無職になった人がやるべきこと一覧

会社を辞める場合、健康保険の任意継続という形でこれまで通り健康保険を活用することも可能ですが、国民健康保険に入ることもできます。

初めて会社を辞める場合、失業保険と国民健康保険それぞれの入り方がわからない人もいるのではないでしょうか。

本記事では失業保険と国民健康保険それぞれの入り方についてご紹介するほか、それぞれの保険に関するよくある質問についても触れています。

ぜひ最後までご覧ください。

退職したら失業保険(失業手当)と国民健康保険の手続きをしよう

退職したら失業保険と国民健康保険の手続きをしよう

会社を退職した場合は失業保険と国民健康保険それぞれの手続きを行うことになります。

日本では国民皆保険制度があるため、何かしらの健康保険に加入しなければならず、選択肢は以下の通りです。

  • 加入していた健康保険の任意継続
  • 国民健康保険
  • 家族が加入している健康保険に扶養で入る

退職後すぐにいずれかの選択肢を選ばなくてはならず、速やかな判断が求められます。

また失業保険の場合、受給期間が退職日の翌日から1年間のため、仮に長期にわたって働いていた場合、せっかく手当がもらえるので時効でもらえないということも。

退職したら1日でも早く手続きを行うことで、無用なトラブルを避けることができます。

失業保険を受け取れる条件

失業保険を受け取れる条件は、以下の通り対象者の状況によって異なります。

  • 一般の離職者のケース(自己都合退職)
  • 特定理由離職者のケース

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

一般の離職者のケース(自己都合退職)

自己都合退職とは、転職や起業、資格試験の勉強など、労働者自身の都合によって退職することを表すのが特徴です。

退職時に自己都合か会社都合のどちらで扱われるのかは、主に会社の判断によります。

会社の提示した退職理由に不服がある場合、ハローワークなどの専門機関で相談する方法があります。

自己都合退職後に失業保険をもらうには、退職までの2年間で、12ヵ月以上に渡り雇用保険に加入していることがポイントです。

会社都合退職に比べると、以下の点で不利になる点は押さえておくのが望ましいです。

  • 受給開始までの期間:給付制限があり、2ヵ月余分にかかる
  • 受給期間・金額:給付期間が短く、受給金額も少なくなる
  • 条件:雇用保険の加入条件が長くなる

一方で、面接官にとって納得の行く退職理由を説明しやすいことから、転職活動においては有利に働く可能性があります。

特定理由離職者のケース

自己都合退職した場合でも、正当な理由があると認められると「特定理由離職者」となります。

特定理由離職者として認められるケースは以下のとおりです。

  • 自己都合退職
  • 有期雇用契約満了

それぞれについて詳細に解説します。

自己都合退職

特定理由離職者と認められる自己都合退職者とは、以下の条件に当てはまる方です。

特定理由離職者となる条件詳細
心身的な理由によって働けない・健康状態を理由に通勤や仕事を継続できない方
・部署異動や業務形態の変更などの対策によっても働けない方
受給期間の延長による出産・育児妊娠や育児などによって、退職後も継続して30日以上働けず、失業保険の延長申請した方
家庭環境の変化・父母の死亡や親族の病気で、30日以上の看護を必要とする方
・火災や水害などの被害に遭った方
やむを得ない同居家族や親族と同居する必要性が発生したものの、通勤や労働が困難で退職した方
通勤が困難・不可能結婚や事業所の移転などにより、往復通勤時間が4時間以上かかるようになった方
希望退職者への応募再編成などを目的に、特定の期間に実施される希望退職者へ応募した方
新型コロナウイルス新型コロナの影響により、週の労働時間20時間以下の状態が1ヵ月以上続いた方や確実となった方

有期契約満了退職

以下の条件を満たしているにもかかわらず退職となった場合は、特定理由離職者として扱われます。

  • 労働契約において、期間の定めや更新の可能性について明確化されている
  • 雇用契約の期間を満了している
  • 雇用契約期間の満了日までに、労働者本人から契約更新の希望がある

契約満了で退職となる場合、原則として退職届の作成は不要です。

以下の条件に当てはまる場合、退職日の30日前までに会社から予告通知があります。

  • 1年以上働いている
  • 3回以上更新している
  • 1年以上の契約期間がある

契約内容に関して「言った言わない」のトラブルを防ぐうえでも、会社に書類を作成してもらうのがポイントです。

特定受給資格者のケース

解雇や倒産など、特定受給資格者とは以下の状況で退職した方のことをいいます。

  • 会社都合退職
  • 有期契約満了退職

ここから具体的に解説します。

会社都合退職

特定理由離職者とは異なり、以下の通り会社都合によって退職した方は、特定受給資格者として扱われます。

特定受給資格者となる退職理由具体的な内容
会社の倒産倒産手続きの申立や手形の取引停止などによって退職した方
大量雇用変動・人員整理や再編成・業務移転など、事業所で大量雇用変動が発生したことで退職した方
・事業所内の被保険者の3分の1以上が退職したことで退職した方
廃止事業所の廃止によって退職した方
移転事業所の移転により、通勤できなくなったことで退職した方
解雇自分の責任ではない原因で解雇された方
労働条件勤務地や給料など、労働条件と契約内容が異なることを理由に就職から1年以内に退職した方
賃金未払い・給料の3分の1以上の金額の未払いが2ヵ月以上継続したことで退職した方
・退職の直前6ヵ月のうち、3ヵ月以上未払いが発生したことで退職した方
賃金の低下予期せぬ給料の減額(85%未満)によって退職した方
残業時間・規定を超える残業が発生したことで退職した方
・行政の指導を受けていたにもかかわらず、職場環境を改善しなかったことから退職した方
職種転換への配慮不足職種転換後に、適切なサポートを受けられなかったことを理由に退職した方
有期契約更新の拒否3年以上勤務したあとで契約更新を要求したものの、拒否されたことで退職した方
労働契約の拒絶期間の定めのある契約更新を希望したものの、契約してもらえなかったことで退職した方
いじめ上司や同僚からパワハラやセクハラ、いじめなどを受けたことで退職した方
退職勧奨事業主から退職を勧められ、退職した方
休業3ヵ月以上に渡り、事業所の休業が続いたことで退職した方
法令違反事業所の仕事が法令違反していると判明したことで、3ヵ月以内に退職した方

有期契約満了退職

期限に定めのある契約満了により退職した場合、以下の条件を満たすと特定受給資格者として扱われます。

  • 契約を含め雇用期間が3年以上あり、更新したい気持ちがあるものの更新されない
  • 雇用期間3年未満で、契約更新が明確になっていたり契約更新の気持ちがあったりするものの、更新されない

特定理由離職者の条件にも「有期契約満了」があるものの、以下の点が特定受給資格者の場合は異なります。

  • 契約を結ぶとき、契約更新が明示されていること
  • 契約更新を希望していること

労働契約を結ぶとき、契約の更新などの条件に関しては、書面で残すことが法律で義務となっています。

失業保険の手続きの流れ

失業保険の手続きの流れ

最初にご紹介するのは失業保険の手続きの流れについてです。

  • 失業保険に切り替えるタイミング
  • 失業保険の手続きに必要な書類

失業保険の手続きの流れについて詳しく解説します。

失業保険に切り替えるタイミング

失業保険に切り替えるタイミングですが、失業保険の手続きに欠かせない離職証明書がないとハローワークでの手続きができないため、離職証明書が届くのを待ちます。

離職証明書はおおむね1週間から2週間以内に前職の会社から届くので、そこから手続きに入ります。

失業保険の受給期間は退職日の翌日から1年間なので、この期間に手当を完全に受け取れるよう、1日でも早く手続きを行うことが大切です。

失業保険の手続きに必要な書類

失業保険の手続きに必要な書類は以下の通りです。

  • 雇用保険被保険者離職票
  • 雇用保険被保険者証
  • マイナンバーカードなどマイナンバーが確認できる書類
  • 本人確認書類
  • 写真(縦3.0cm×横2.4cm)2枚
  • 本人名義のキャッシュカード・通帳

本人確認書類はマイナンバーカードで問題ないので、マイナンバーカードを持っている方は1枚で2つの書類の役割を持たすことができます。

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国民健康保険の手続き前に検討すること

国民健康保険の手続き前に検討すること

国民健康保険の手続きに入る前に、2つの事について検討する必要があります。

国民健康保険ではなく、任意継続制度を活用するか、もしくは家族が加入する健康保険に扶養で入るかの選択です。

ここではそれぞれのメリット・デメリットについてご紹介します。

任意継続制度で健康保険を継続するか

任意継続制度を利用できる対象者は、退職日の前日までに加入していた健康保険の被保険者期間が連続2か月以上だった人です。

その上で退職日の翌日から原則20日以内に、「任意継続被保険者資格取得申出書」を加入していた健康保険の団体に提出します。

任意継続のメリットは、前の会社にいた時と同じように利用できる点です。

期間限定でありながらも、当面はこれまでと同じように健康保険を利用できます。

また、扶養家族も加入していた場合は扶養の家族も同じように利用できるのがメリットです。

任意継続の最大のデメリットは任意継続できるのは最長2年間という点です。

同じ健康保険を2年間しか維持できないため、2年以内に再就職して健康保険に入り直すか、国民健康保険に加入する、家族の扶養に入るという選択肢を再び選ぶことになります。

他には保険料の負担が2倍になることも大きなデメリットです。

今までは会社が健康保険料の半分の負担していたためで、会社を辞めることで会社の負担分がなくなり、その分を支払う必要が生じます。

また、たとえ収入が減ったとしても任意継続時の保険料が最後まで継続するなど金銭的な負担が大きいのも任意整理のデメリットと言えるでしょう。

家族の社会保険に入って扶養家族になるか

家族の健康保険に扶養家族として入れる対象者、この場合は「被扶養者」と言い、健康保険に加入する本人を「扶養者」と言います。

被扶養者の対象となるのは以下の通りです。

  • 扶養者の配偶者
  • 扶養者もしくは配偶者の三親等以内の人物

被扶養者になれる範囲はかなり広く、配偶者の叔父叔母や扶養者の両親の叔父叔母、その配偶者まで対象となります。

ただし、扶養者と配偶者の子供や孫、両親、祖父母、曾祖父母、扶養者の兄弟姉妹以外に関しては、扶養者と同じ世帯に属することが条件です。

つまり、扶養者と直系の家族以外は同居していなければ対象とはなりません。

被扶養者として健康保険に入るメリットは健康保険料や国民年金保険料の支払いがなくなる点です。

国民健康保険に切り替えれば、国民健康保険料と国民年金保険料をいずれも支払う必要があり、毎月の負担はかなりのものとなりますが、被扶養者になればそれらがなくなります。

主に税金面での恩恵を受けやすく、配偶者の場合には配偶者特別控除などもあるため、税負担が軽くなるのもメリットの1つです。

扶養に入る最大のデメリットは、一定の範囲内で年収を抑える必要が出てくる点です。

被扶養者が一定の金額以上稼いでしまうと扶養から外れなければならず、自ら健康保険料などを支払わないといけなくなります。

国民健康保険の手続きの流れ

国民健康保険の手続きの流れ

次にご紹介するのは国民健康保険に加入する際の手続きの流れについてです。

必要な書類、切り替えのタイミング、それぞれご紹介します。

国民健康保険に切り替えるタイミング

社会保険から国民健康保険に切り替えるタイミングについてご紹介します。

  1. 退職に合わせて企業側は健康保険の被保険者に関する資格喪失手続きを行う
  2. 退職日に企業側に健康保険証を返却する
  3. 退職日翌日から14日以内に居住地の市町村役場に出向いて国民健康保険の手続きを行う
  4. 退職日翌日が資格取得日となり、手続きを行った当日に健康保険証が発行される

社会保険から国民健康保険に切り替えるタイミングは、退職日翌日から14日以内です。

これは国民健康保険の加入日が退職日の翌日になるからで、退職日に社会保険の保険証を返却し、翌日から国民健康保険に切り替えることになります。

無保険の状態を生じさせないためにも退職日翌日から14日以内に手続きを行わなければなりません。

また、退職日に社会保険の保険証を返却できない場合、絶対に使わず、郵送などで返却する必要があります。

万が一使ってしまった場合、自己負担分以外の費用を返却しなくてはならず、かなりの負担になってしまうからです。

国民健康保険の手続きに必要な書類

国民健康保険の手続きにおける必要書類は以下の通りです。

  • 国民健康保険資格取得届
  • 健康保険資格喪失証明書
  • 本人確認書類
  • 世帯主や加入者全員のマイナンバー確認書類

国民健康保険資格取得届は国民健康保険に加入する際に必要な書類であり、各自治体によってフォーマットは異なりますが、おおよそ記入する内容は共通しており、以下の通りとなります。

  • 届け出を出した日
  • 世帯主や届出人の住所・氏名・マイナンバーなど
  • 国民健康保険の加入者の氏名・生年月日・マイナンバーなど

このため、マイナンバーカードが1枚あれば、あとは健康保険資格喪失証明書があれば大丈夫です。

その健康保険資格喪失証明書ですが、会社を退職する際に健康保険資格喪失証明書の発行を依頼し、届き次第、居住地の市町村役場に出向きます。

ただし、健康保険資格喪失証明書は決して必須ではなく、なかったとしても手続きは可能です。

万が一退職日翌日から14日以内に間に合わない場合は、以下の手段が考えられます。

  • 退職日を証明する書類を持っていく
  • 最寄りの年金事務所に出向いて健康保険資格喪失証明書を交付してもらう
  • 会社に退職した事実を説明してもらう

ほとんどの企業は退職したら被保険者資格喪失届を提出しますが、中には提出をしない企業もあり、その場合は年金事務所に出向いても健康保険資格喪失証明書は交付されません。

一番確実なのは退職日を証明する書類を持参することであり、離職票などで証明することになります。

失業保険・国民健康保険のよくある質問

失業保険・国民健康保険のよくある質問

最後に失業保険・国民健康保険に関するよくある質問についてご紹介します。

  • 失業手当をもらいながら扶養に入れる?
  • 社会保険から国民健康保険の切り替えタイミングは?
  • 失業中の国民健康保険料の計算方法は?
  • 失業中は国民健康保険は減免を受けられる?
  • 退職後に国民健康保険に入らなくても大丈夫?
失業手当をもらいながら扶養に入れる?
失業手当が1日3,612円未満であれば扶養に入ることは可能です。

本来失業手当は非課税なので、所得として扱われませんが、社会保険に関して失業手当は所得扱いとなります。

年収が130万円を超えると社会保険の扶養に入れないことから、基本手当日額が3,612円以上の場合、扶養には入れません。

ですので、1日3,612円未満が年収130万円を下回るラインとなるため、3,612円を下回れば失業手当を得ながら社会保険の扶養に入ることは可能です。

ちなみに、3,612円を超える場合でも失業手当をもらい始める直前まで扶養に入ることができます。
社会保険から国民健康保険の切り替えタイミングは?
社会保険から国民健康保険の切り替えタイミングは退職日翌日から14日以内です。

退職日当日までは社会保険が利用できますが、退職日翌日からは国民健康保険を利用しなくてはならず、1日の空白も許されません。

既に必要書類が整っていれば、できれば退職日翌日に手続きを行うことがおすすめですが、遅くても退職日翌日から14日以内に手続きを済ませましょう。

仮に手続きをしなかった場合、退職日翌日に住民票がある市町村の国民健康保険に加入しているとみなされ、加入日からの保険料の支払いを遡って行います。
失業中の国民健康保険料の計算方法は?
国民健康保険料は、「所得割額」+「均等割額」+「平等割額」を足した額で決まり、1年間10回に分けて支払います。

国民健康保険料は、前年の所得に応じて生じる「所得割」、国民健康保険加入者が一律に支払う「均等割」、各世帯ごとに平等に支払う「平等割」があり、この合計で決まる形です。

失業中の場合、前年の所得に応じて支払うべき国民健康保険料が決まるため、再就職先が見つかるまでの間は前年の所得に応じて決まる国民健康保険料を支払うことになります。
失業中は国民健康保険は減免を受けられる?
会社都合退職など非自発的失業者の場合、国民健康保険料の軽減措置の対象となり、保険料が安くなります。

非自発的失業者の場合、軽減措置として前年の所得を7割カットして所得額が算出されます。

例えば、前年の給与所得が300万円であれば、7割をカットして90万円が「計算上の所得額」に。

この90万円から基礎控除の43万円を引いた額、47万円が所得割の算定基礎額となり、各自治体が定める所得割のパーセンテージをかければ所得割の金額が出ます。

そのため、本来支払うべき国民健康保険料も安くなり、任意継続をするよりも負担が軽減される場合があります。
退職後に国民健康保険に入らなくても大丈夫?
任意継続制度の利用もしくは家族の扶養に入らない場合、必ず国民健康保険に入らなければなりません。

日本では国民皆保険制度により、国民全員が何かしらの保険に加入する義務があります。

再就職先を見つけてその会社の社会保険に入るまでは未加入、無保険でやり過ごすことは認められておらず、必ず退職日翌日から14日以内に手続きを行わなくてはなりません。

まとめ

今回は失業保険と国民健康保険の入り方についてご紹介しました。

最後にここまでの内容を振り返ります。

  • 退職したら必ず失業保険と国民健康保険の手続きを行う
  • 失業保険の受給期間は退職日の翌日から1年間なので、すべて受け取るためにも1日も早い手続きを
  • 国民健康保険への加入のほか、任意継続制度の利用、家族の社会保険に入って扶養家族となる手段がある
  • 国民健康保険に切り替えるタイミングは退職日翌日から14日以内
  • 国民健康保険の手続きでは国民健康保険資格取得届や健康保険資格喪失証明書などが必要
  • 非自発的失業者の場合は軽減措置で国民健康保険料が減免される

日本は国民皆保険制度があるため、誰しも平等に医療を受けられるようになっています。

平等に医療が受けられるのは全員が何かしらの形で保険に加入して保険料を支払っているからで、たとえ失業中であっても支払い義務があり、未加入でも遡って支払うことになるので早めに加入しましょう。

ただし、非自発的失業者の場合は所得額の減免措置があり、国民健康保険料がいくらか減ることになります。

任意継続制度を利用した方が安いのか、国民健康保険の方が安いのか、事前に計算を行い、お得になる選択をしましょう。