失業保険をもらえる権利がありながら、早々に再就職先を見つける方がおり、丸々失業保険を受け取ってから再就職先を探す人と比べるといささか不公平感があります。
この不公平感をなくすため、早期に再就職先を見つけた方に給付されるのが再就職手当です。
この再就職手当をもらう際、家族の扶養に入った人はどうなるのかなど、気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では再就職手当と扶養の関係性や扶養から外れる条件、再就職手当の計算方法などをご紹介しています。
ぜひ最後までご覧ください。
再就職手当とは?
再就職手当は、失業保険の支給残日数を一定期間残しながら再就職を果たした人に給付される手当のことです。
本来、失業保険は退職時の年齢や前職での勤続年数で支給日数が決まり、失業状態の中で再就職先を探す活動を行っていれば、支給日数分の失業手当を受け取ることができます。
一方で、早々に再就職先を見つけたらその時点で失業手当は打ち切られるため、支給日数分の失業手当を受け取ってから再就職先を見つけた方が得をするのではないかという見方も。
そこで不公平感をなくし、早期に再就職することを促すため、一定期間の支給残日数を残した方を対象に、本来受け取るはずだった失業手当を再就職手当という形で受け取れるようにしました。
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再就職手当と失業保険の違い
再就職手当と失業保険の大きな違いは、支給されるタイミングと支給の意味合いです。
失業保険の場合は失業中における生活基盤を支えるためのセーフティーネットの意味合いが強く、再就職までの期間に給付されるものです。
一方、再就職手当は再就職を大前提とし、1日でも早く再就職することを促すために用意された仕組みとなっています。
厳密に言えば、再就職手当も失業保険の一部であり、手当として受け取れる金額だけでみれば、失業保険の所定給付日数分丸々受け取った方がお得です。
しかし、1日でも早く再就職をすることで、再就職先の給料にプラスして再就職手当を受け取れます。
本来はセーフティーネット的な意味合いだった失業保険を、お祝い金の意味合いとして受け取れるのが再就職手当のいいところです。
ハローワークで再就職手当をもらう条件
再就職手当を受け取るには、9つの条件をクリアする必要があります。
以下にその条件をまとめました。
- 7日間の待期期間の後に就職もしくは事業を開始している
- 就職日前日までに失業認定を受けており、基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上残っている
- 離職前の事業所に再就職していない。また、離職前の事業所と資本や資金など密接な関わり合いがない事業所に再就職している
- 給付制限がある方は、待期期間満了後1か月の期間内においてハローワークもしくは職業紹介事業者の紹介によって就職している
- 1年を超える勤務が確実である
- 雇用保険の被保険者になっている
- 過去3年以内の就職で、再就職手当もしくは常用就職支度手当の支給を受けていない
- 求職申込み前から採用が内定していた事業主に雇用されたものではない
- 再就職手当の支給決定日までに離職していない
上記の条件をすべて満たすことで、再就職手当を受け取ることができます。
待期期間や支給残日数などに気を付けて、再就職手当がもらえる形で再就職を目指しましょう。
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再就職手当をもらうと扶養に影響する?
国民健康保険への切り替え、前職の健康保険の任意継続のほか、家族の扶養に入ることで社会保険を受けられるようにする考え方があります。
家族の扶養に入った場合、再就職手当をもらうことが扶養にどんな影響を与えるのか、気になっている方が多いのではないでしょうか。
- 税制上の扶養には影響しない
- 社会保険の扶養には影響する
実は同じ扶養でも影響を受けるケース、受けないケースがあるので、この違いをご紹介します。
税制上の扶養には影響しない
扶養には税制上の扶養、社会保険の扶養の2パターンがあり、税制上の扶養に関しては特に影響がありません。
その大きな理由は再就職手当の特性にあります。
再就職手当は雇用保険における「就職促進手当」に該当し、課税所得の対象にならず、非課税です。
そのため、収入にカウントされないため、世間一般で言われている年収103万円の壁を気にせず、受け取ることができます。
社会保険の扶養には影響する
年収103万円が税制上の扶養の上限とするならば、社会保険の扶養では年収130万円が上限となります。
実は社会保険の扶養に関して、再就職手当など雇用保険に関連した給付は収入にカウントされてしまいます。
しかも、年間の見込み収入が130万円を超えるような金額では扶養から外れるため、再就職手当や失業手当を受け取ることで社会保険の扶養に影響を与えることから注意が必要です。
再就職手当をもらって扶養から外れる条件は?
再就職手当をもらうことで、社会保険の扶養から外れてしまう可能性は十分に考えられます。
では、実際に扶養から外れてしまう条件にはどのようなものがあるのか、ご紹介します。
再就職手当を含めて年収130万円未満でなければいけない
社会保険の扶養から外れる前提条件は、「再就職手当などを含めて年収130万円未満にしなければならない」点です。
ここでポイントになるのが、再就職手当を受け取る時の1か月の月収が、年間の見込み収入130万円に届くかどうかです。
年収130万円は月収にすると平均108,333円となり、この金額を超えると年収ベースで130万円を超えるため、注意が必要になります。
1か月だけ108,333円をオーバーしても扶養から外れることはほぼないとされていまずが、絶対にないとは言えません。
また前の月も108,333円以上受け取り、2か月連続でオーバーした場合など扶養から外れる可能性は十分に考えられます。
再就職手当と失業手当など合わせて108,333円を超えるかどうかが焦点です。
扶養内パートが再就職手当をもらえる条件は?
扶養から外れないようにパートタイマーで働く方も多くいらっしゃるはずです。
この「扶養内パート」が再就職手当を受け取れる条件とはどういうものかをご紹介します。
そもそも扶養内パートが再就職手当をもらうには、失業保険の対象であることが重要です。
- 1週間で20時間以上の労働時間など、雇用保険の加入条件を満たす
- 退職日以前の2年間で、雇用保険の被保険者期間が12か月以上(特定理由離職者や特定受給資格者の場合は退職日以前の1年間で被保険者期間が6か月以上)
雇用保険の加入条件を満たす働き方を行い、一定期間被保険者だった扶養内パートが失業手当を受け取ることができ、早期に再就職すれば再就職手当を受け取れます。
そして、再就職手当を受け取れる条件もご紹介します。
- 待期期間満了後に再就職する
- 失業手当の支給残日数が給付日数の3分の1以上
- 再就職先が前職に関連した就職先ではない
- 給付制限がある場合は、待期期間満了後1か月以内にハローワークなどの紹介で再就職先を見つける
- 1年を超える労働期間が確実
- 雇用保険への加入
- 過去3年で再就職手当などを受け取っていない
- 受給資格が決定する前に内定を得た会社に雇用されていない
- 再就職手当の支給決定日までに再就職先を離職していない
これらの条件を満たすことで扶養内パートでも再就職手当を受け取れます。
再就職手当はパートやアルバイトでももらえる?受給条件など詳しく解説再就職手当はいくらもらえる?計算方法について
最後にご紹介するのは、再就職手当の計算方法です。
再就職手当の計算方法は以下の通りとなっています。
- 失業手当の基本日額×支給残日数×60%or70%
この場合の60%もしくは70%は支給残日数によって変化し、支給残日数が3分の1以上残っていれば60%、3分の2以上残っていれば70%となります。
例えば、所定給付日数が90日で1日の基本日額を5,000円とした場合、再就職手当の支給対象は支給残日数が30日以上となります。
仮に30日であれば、5,000円×30日×60%で9万円が、60日であれば5,000円×60日×70%で21万円が、それぞれ再就職手当となります。
早めに就職すれば、再就職先の給与ももらった上で再就職手当ももらえることになるでしょう。
この金額が一定の金額を超えてしまうと社会保険の扶養から外れる可能性につながるため、前もって計算を行うことをおすすめします。
まとめ
今回は再就職手当と扶養の関係を中心にご紹介してきました。
最後に今回ご紹介した内容を振り返ります。
- 再就職手当は課税所得の対象外なので、税制上の扶養には影響しない
- 社会保険の扶養は再就職手当を所得としてカウントするため、影響が出る可能性がある
- 社会保険の扶養は年収130万円を超えると外れるため、再就職手当などの合計月収が108,333円を超えないことが重要
- 扶養内パートでも雇用保険の加入条件を満たす働き方ができれば失業手当や再就職手当を受け取れる
扶養の中で働きたい方も多くいるでしょうが、ポイントになるのが月収です。
1か月だけのオーバーは問題になりにくいものの、扶養取消が全くないわけではなく、しかも、2か月連続になると扶養取消の可能性が生じやすく、注意しなければなりません。
失業手当の基本日額が分かれば、おおよその計算はできるため、1か月に受け取る手当が108,333円を超えない程度に、早期に再就職先を見つけていきましょう。