失業保険(基本手当)を受け取っている間、勤務先の健康保険から国民健康保険に切り替わり、保険料の負担が急に重くなったと感じる人は少なくありません。
特に、退職後すぐに転職先が決まらない場合は、収入が減っているにもかかわらず保険料の負担がより重く感じられることもあります。
「収入が減っているのに、保険料は前年の所得を基準に計算される」という仕組みに戸惑う声も多く聞かれます。
実は、倒産や解雇など会社都合に近い理由で離職した場合、国民健康保険料(税)が軽減される制度が用意されています。
本記事では、軽減制度の対象条件や軽減額の計算方法、申請の流れを解説します。
該当する可能性がある人は、ぜひ参考にしてください。
- 国民健康保険料の軽減制度の対象になる離職理由・条件
- 保険料がどのくらい安くなるかの計算のしくみ
- 軽減が受けられる期間と申請手続きの流れ
- 軽減が終了してしまうケースと注意点
- 高額療養費など保険料以外の制度への影響
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失業保険受給中は国民健康保険料を軽減できる制度がある
結論として、倒産や解雇などの非自発的な理由で離職し、雇用保険の基本手当を受給する人は、国民健康保険料(税)の軽減を受けられる場合があります。
この制度は「非自発的失業者に対する国民健康保険料(税)軽減措置」と呼ばれ、平成22年4月から施行されています。
会社員時代は給与から天引きされていた健康保険料が、離職後は前年の所得を基準に算定される国民健康保険料に切り替わるため、収入が下がっているのに負担が重くなりやすいという課題に対応した制度です。
この制度は、景気の変動などによって非自発的に離職する人が増えた場合に、生活基盤である医療保険の負担が過重にならないよう配慮する目的で設けられたものといえます。
なお、雇用保険の基本手当そのものは、7日間の待期期間を経たうえで、離職理由や年齢・被保険者期間などに応じておおむね45〜80%程度の給付率で計算される仕組みですが、ここで解説する国民健康保険料の軽減は、それとは別に用意された制度です。
制度が始まった平成22年度の時点では、対象となる失業者本人とその家族を合わせて約87万人が見込まれており、非自発的な離職者にとって広く関係しうる仕組みとして位置づけられています。
軽減の適用を受けるには、後述する対象要件を満たしたうえで、居住する市区町村への申請が必要です。
軽減の対象になるのはどんな人?対象要件
軽減の対象となるのは、雇用保険の「特定受給資格者」または「特定理由離職者」として基本手当を受給する人です。
離職票に記載されている離職理由がどちらに該当するかによって、軽減の可否が決まります。
特定受給資格者・特定理由離職者という区分は雇用保険法上の分類であり、離職票や雇用保険受給資格者証に記載される離職理由の内容にもとづいて判定されます。
在職中に会社の健康保険に加入していた期間の長さは、軽減の可否には直接関係しません。判断の基準となるのは、あくまで離職理由が特定受給資格者・特定理由離職者に該当するかどうかです。

特定受給資格者に該当する主なケース
特定受給資格者とは、会社都合に近い理由で離職を余儀なくされた人を指します。
- 会社の倒産や事業所の廃止による離職
- 大量の人員整理による離職
- 解雇(重大な自己の責めに帰すべき理由による解雇を除く)
- 賃金の未払いや大幅な減額があった場合の離職
- ハラスメントへの対応不備や退職勧奨に応じた離職
特定理由離職者に該当する主なケース
特定理由離職者とは、有期労働契約が更新されずに雇い止めとなった人や、正当な理由がある自己都合で離職した人を指します。
- 有期労働契約が更新されず、契約期間の満了により離職した場合
- 健康上の理由により離職した場合
- 妊娠・出産・育児により離職した場合
- 家族の介護など扶養のために離職した場合
- 通勤が困難になったことによる離職
特定受給資格者と特定理由離職者の違いに迷ったとき
どちらの区分に該当するかは離職理由の内容によって細かく判断されるため、自分がどちらに当てはまるのか迷うケースも珍しくありません。
いずれの区分であっても、軽減の対象になるという結果は変わらないため、まずは離職票や雇用保険受給資格者証に記載された離職理由の内容を確認することが大切です。
軽減の対象外となりやすいケース
一方、通常の自己都合による転職などは、軽減の対象外となる場合があるため注意が必要です。
- より良い条件を求めた通常の自己都合による転職
- 労働者の重大な責めに帰すべき理由による解雇
- 雇用保険の基本手当を受給していない場合
なお、軽減の対象外であっても、失業保険(基本手当)そのものを受け取れるかどうかは別の判断であり、軽減が受けられないからといって基本手当の受給資格がなくなるわけではありません。
自分の離職理由がどちらに区分されているか分からない場合は、雇用保険の手続きを行ったハローワークに確認するとよいでしょう。
軽減される保険料はどう計算される?
軽減の内容は、前年の所得のうち給与所得を30分の100(30/100)とみなして保険料を算定するというものです。
この軽減はあくまで保険料の算定基礎となる所得を圧縮するものであり、保険料そのものが全額免除になる制度ではない点には注意が必要です。
給与所得を30分の100とみなして計算
通常、国民健康保険料は前年の所得を基準に計算されますが、対象者については給与所得の部分を実際よりも大幅に低くみなしたうえで算定されます。
これにより、離職前の所得をそのまま基準にする場合と比べて、保険料の負担が大きく抑えられる仕組みになっています。
ただし、給与所得以外の所得(事業所得や不動産所得など)は、軽減の対象に含まれない場合があります。
一般的に、国民健康保険料は所得に応じて決まる部分(所得割)と、世帯の人数などに応じて決まる部分(均等割・平等割)などから構成されているとされ、軽減の対象となるのは主に所得割の計算に用いられる所得額です。
そのため、世帯構成や他の所得状況によって、軽減後の保険料の下がり方には差が出ます。同じ世帯の中に軽減の対象とならない人がいる場合は、世帯全体の保険料のうち、対象者に関わる部分についてのみ軽減の計算が行われる仕組みになっています。
具体的なイメージ(試算の考え方)
例えば、前年に給与収入があった人が軽減の対象になった場合、通常であればその給与所得の全額をもとに保険料が算定されますが、軽減対象者はその給与所得を30分の100とみなして計算し直すため、保険料算定の基礎となる所得は大きく下がる計算になります。
結果として、離職前と同じ給与収入があった場合と比べて、保険料の負担は相当程度抑えられることが見込まれます。
ただし、軽減後の具体的な金額は世帯の所得状況や自治体の条例によって異なるため、正確な金額は居住する市区町村の国民健康保険担当窓口に確認する必要があります。
軽減が受けられる期間はいつからいつまで?
軽減の対象期間は、離職日の翌日が属する年度の翌年度末までです。
例えば年度の前半に離職した場合と後半に離職した場合とでは、軽減が適用される実質的な期間の長さが異なります。
具体的な終期は、離職日がどの年度に属するかによって決まるため、正確な期間を知りたい場合は市区町村の窓口で確認するとよいでしょう。
保険料は通常、年度ごとに所得情報をもとに見直されるため、軽減の適用状況についても年度が変わるタイミングで確認しておくと安心です。
この対象期間は、雇用保険の基本手当を実際に受け取っている期間とは異なる点に注意が必要です。
基本手当の受給が終了した後も、軽減の対象期間内であれば引き続き軽減を受けられる場合があります。
軽減が途中で終了するケースに注意
就職して会社の健康保険に加入すると軽減は終了
国民健康保険に加入し続けている間は、途中で再就職した場合でも、軽減対象期間内であれば軽減が継続する場合があります。
ただし、就職先の健康保険(被用者保険)に加入して国民健康保険を脱退した場合は、その時点で軽減は終了します。
注意
再就職して会社の健康保険(被用者保険)に加入し、国民健康保険を脱退すると、その時点で軽減は終了します。再就職後の切り替え手続きの際は、この点を踏まえておく必要があります。
再就職後に会社の社会保険へ加入する人が多いことを踏まえると、軽減が適用されるのは実質的に国民健康保険に加入している間に限られると考えておくとよいでしょう。
再就職先が決まらないまま配偶者や家族の健康保険の被扶養者になった場合も、国民健康保険を脱退することになるため、軽減は同様に終了すると考えられます。
再就職と離職を短期間で繰り返した場合でも、国民健康保険に加入し続けている限りは、軽減対象期間内であれば軽減が続く場合があります。
短時間のアルバイトなどで一時的に収入を得た場合でも、勤務先の健康保険に加入する要件を満たさず、引き続き国民健康保険に加入しているのであれば、軽減は継続する場合があります。
退職日と社会保険の切り替えタイミングについては、退職日が月末だと社会保険料は損?結論と分岐点で詳しく解説しています。
軽減を受けるための申請方法
軽減の適用を受けるには、居住する市区町村の国民健康保険担当窓口への申請(届出)が必要です。
国民健康保険料の軽減は自動的に適用されるわけではないため、申請を忘れると軽減を受けられないまま通常の保険料を払い続けることになる場合があります。
軽減は所得情報だけから自動的に判定されるものではなく、離職理由という個別の事情を反映する仕組みであるため、本人からの申請が前提となっています。
離職後は、国民健康保険への加入手続きと合わせて、軽減の申請ができるかどうかを窓口で確認しておくと手続きの手間を減らせます。
申請の期限が定められている自治体もあるため、離職後はできるだけ早めに手続きを行うことが望ましいといえます。
ポイント
軽減は自動的には適用されません。雇用保険受給資格者証を持って、居住する市区町村の窓口で申請することが、軽減を受けるための第一歩です。

申請時に準備しておきたいものの目安
- 雇用保険受給資格者証(離職理由が確認できるもの)
- 国民健康保険の加入手続きに必要な本人確認書類
- マイナンバーが確認できる書類
- 印鑑(自治体によって不要な場合もあります)
雇用保険受給資格者証は、ハローワークで失業保険の手続きをした際に交付されるもので、離職理由などが記載されています。
必要書類や申請様式は自治体ごとに異なるため、事前に窓口やホームページで確認しておくとスムーズです。
なお、ハローワークの雇用保険受給説明会などで、軽減制度に関するリーフレットが配布され、申請を案内されることもあります。
また、引っ越しなどで住所地が変わった場合は、新しい市区町村での届出内容によって軽減の適用状況が変わることもあるため、あわせて確認しておくとよいでしょう。
軽減の申請自体に費用はかからないため、対象になる可能性がある場合は早めに問い合わせておくことをおすすめします。
国民健康保険以外の選択肢と比較する視点
退職後の医療保険は、国民健康保険への加入のほかに、それまで加入していた健康保険を任意継続する方法が選べる場合もあります。
任意継続の保険料は在職中の給与水準をもとに決まる仕組みであるのに対し、国民健康保険料は前年の所得をもとに算定されるため、軽減の有無によって両者の負担額の関係が変わってくることもあります。
どちらを選ぶかによって保険料の負担は変わってくるため、国民健康保険料が軽減される場合は、その軽減後の保険料も踏まえたうえで、他の選択肢と比較検討しておくと安心です。
比較の際は、それぞれの保険者(市区町村や加入していた健康保険組合等)に見込み額を確認するとよいでしょう。
家族の扶養に入ることができる状況であれば、保険料の負担そのものが生じない場合もあるため、あわせて検討しておくとよいでしょう。
いずれの制度を選ぶ場合も、目先の保険料だけでなく、医療機関にかかった際の自己負担の仕組みも含めて検討することが望ましいといえます。
高額療養費の自己負担限度額にも軽減の効果がある
高額療養費制度は、1か月に医療機関の窓口で支払う医療費が一定の上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される仕組みです。上限額は加入者の所得水準に応じて複数の区分に分かれています。
軽減措置は保険料だけでなく、この高額療養費制度における自己負担限度額の所得区分の判定にも適用されます。
軽減対象者は前年の給与所得を30分の100とみなして所得区分が判定されるため、実際の所得だけで判定する場合よりも低い区分に該当し、自己負担限度額が抑えられる場合があります。
入院や手術などで医療費がかさむ可能性がある人にとっては、見落とされがちですが重要な効果といえます。
あらかじめ限度額の区分が分かる書類の交付を受けられる場合もあるため、医療機関にかかる予定がある人は、あわせて市区町村の窓口で確認しておくと安心です。
よくある質問
- 軽減を受けるには申請が必要ですか?
- はい、軽減は自動的には適用されず、居住する市区町村の国民健康保険担当窓口への申請が必要です。
雇用保険受給資格者証など離職理由が確認できる書類を持参して手続きを行います。
- 特定受給資格者・特定理由離職者に該当するかはどこで確認できますか?
- ハローワークで交付される雇用保険受給資格者証に離職理由が記載されているため、そこで確認できます。
判定に疑問がある場合は、雇用保険の手続きを行った管轄のハローワークに問い合わせることをおすすめします。
- 通常の自己都合退職でも軽減の対象になりますか?
- 通常の自己都合による離職は、原則として軽減の対象外となる場合があります。
ただし、健康上の理由や家族の介護など正当な理由がある自己都合離職は、特定理由離職者として軽減の対象になる場合があります。
- 軽減される保険料は具体的にいくらになりますか?
- 軽減後の具体的な保険料額は、世帯の所得状況や各自治体の条例によって異なるため、一律には示せません。
正確な金額を知りたい場合は、居住する市区町村の国民健康保険担当窓口に確認する必要があります。
- 再就職して会社の社会保険に入ったら軽減はどうなりますか?
- 就職先の健康保険に加入して国民健康保険を脱退した場合、その時点で軽減の適用は終了します。
再就職後も国民健康保険に加入し続ける場合は、軽減対象期間内であれば引き続き軽減が適用される場合があります。
まとめ
最後に今回解説した内容を振り返ります。
- 倒産・解雇による離職者(特定受給資格者)や、雇い止め・正当理由の自己都合離職者(特定理由離職者)は、国民健康保険料の軽減を受けられる場合があります
- 軽減は前年の給与所得を30分の100とみなして保険料を算定する仕組みです
- 軽減対象期間は離職日の翌日が属する年度の翌年度末までです
- 会社の健康保険に加入して国民健康保険を脱退すると、軽減は終了します
- 軽減を受けるには市区町村への申請が必要です
失業保険を受給している間は収入が減る一方で、国民健康保険料の負担が重く感じられる場面も少なくありません。
特に医療機関にかかる機会が多い人にとっては、高額療養費の面でも軽減の効果を感じやすいといえます。
非自発的な理由で離職した場合は、軽減制度の対象になっている可能性があるため、雇用保険受給資格者証を確認し、居住する市区町村の窓口に相談することをおすすめします。
再就職手当など、退職後に利用できるその他の給付制度と合わせて確認しておくと、より安心して転職活動を進められます。詳しくは【まとめ】再就職手当をもらう前の退職は「不支給」になる可能性が高いもあわせてご覧ください。
条件を満たせば保険料の負担を軽減できる可能性があるため、申請を忘れずに行うことが大切です。




