「会社が倒産しそうなんだけど、大丈夫かな…」と会社の現状に対して不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
また、「会社が倒産する前に辞めるべき?」と辞めるタイミングを検討している方もいるはずです。
結論から言いますと、倒産の前兆はちゃんとあるので、倒産前に退職を検討し始めるのがおすすめです。
大企業は経営的に好調な一方、中小企業はいまだに不景気のような状況が続き、倒産に追い込まれるケースが後を絶ちません。
そこで今回は、会社が倒産しそうなケースについて、退職サポートを担当し、多くの利用者の退職を支援してきた私が、倒産の前兆や対処法について詳しく解説します。
これを知れば、万が一倒産の前兆を感じ取っても、その後に取るべき行動がわかるようになりますよ。
会社が倒産しそうな12の前兆を紹介

最初にご紹介するのは会社が倒産しそうな12の前兆です。
- 赤字が何年も続いている
- 大幅な経費削減が行われている
- 経営陣と経理部門の社員の退職が続いている
- 社長が居留守を使うようになった
- 給料の減額やボーナスのカットが行われた
- 役員や経営陣での会議が急に増えている
- 業務量が減少している
- 営業ノルマが急に厳しくなる
- 税理士の出入りが増えている
- 資産の売却で現金を作り始めた
- 取引先から支払い条件の変更を言い渡されている
- 希望退職者を募集し始めた
それぞれの倒産の前兆について解説します。
赤字が何年も続いている
赤字が何年も続いている場合、単純に借金がかさむほか、融資を受けたくても金融機関がノーを突きつける可能性が高くなります。
利益を生み出せず、運転資金が底をつくようになると、これ以上の経営は難しいという判断が下されやすくなるでしょう。
大幅な経費削減が行われている
赤字が続くと赤字を少なくするために様々なコストカットを行い、ムダな経費を使わないようになっていきます。
黒字経営の会社でも経費削減は行われますが、従業員の福利厚生や給与にまでコストカットのメスが入ってしまうと切羽詰まった状況になっている可能性が想定できるので注意が必要です。
経営陣と経理部門の社員の退職が続いている
倒産の危険を真っ先に感じるのは資金繰りに奔走する経営陣や会社のお金を管理する経理担当者たちです。
経営陣も経理担当者たちもある時期から急に会社を退職し始めるというのは、危険を察知して逃げ出した可能性が考えられます。
社長が居留守を使うようになった
赤字が続き、資金繰りに苦しみ始めると、取引先への支払いなどが滞り、催促の電話が入ることがあります。
催促の電話が入りながらも、社長が居留守を使うようになるとかなり厳しい状況の可能性が高く、注意が必要です。
給料の減額やボーナスのカットが行われた
一番コストカットの効果が出やすいのが人件費であり、給料の減額やボーナスのカットが最も手っ取り早い方法と言えます。
本来給料の減額は正当な理由がない限りはできないとされていますが、倒産を避けるという意味合いであれば正当な理由になり得るため、よほど厳しい状況であると言えるでしょう。
役員や経営陣での会議が急に増えている
役員会議などが増えてくると資金繰りが切迫しているなどかなり深刻な状況が想定され、一刻を争うような事態になっている可能性が高いです。
特にお金に関係する公認会計士などが経営会議などに参加している場合は資金繰りなどが議題になっていることが考えられるため、気を付けなければなりません。
業務量が減少している
経営が苦しい状況は仕事量が少ない状況とイコールになることが多く、仕事の量も目に見えて少ないと感じるようになります。
もちろん、時期によって増えたり減ったりする業界もありますが、本来書き入れ時のはずなのに業務量が減っている場合は相当厳しい状況かもしれません。
営業ノルマが急に厳しくなる
倒産を回避するには、少しでも売り上げを増やして赤字を少なくしていかなければなりません。
そのため、厳しい営業のノルマが与えられ、必死に取り組むよう求められることもあるでしょう。
突如として高いノルマが設定された時は何が何でも売り上げを増やさないといけない事情があると考えるべきです。
税理士の出入りが増えている
経営が厳しくなると、今まで見たことがないような人が出入りすることがあります。
公認会計士や税理士などが出入りするようになり、特に税理士が資金繰りのアドバイスのために頻繁に足を運ぶようになるでしょう。
傷が浅いうちに経営の改善を図るケースもありますが、いずれにしてもピンチであることに変わりありません。
資産の売却で現金を作り始めた
会社によっては土地や建物など、資産を持っているケースがありますが、資産を売却して現金を持ち始めると資金繰りが厳しくなってきた可能性が想定できます。
塩漬けしているから資産を売却するケースもありますが、泣く泣く売らざるを得ないような状況だと先行きは相当不透明と言えるでしょう。
取引先から支払い条件の変更を言い渡されている
赤字が続いている場合、取引先にもその様子は伝わり、倒産するかもしれないという噂話となって業界内に広まることも考えられます。
噂話を受けて、取引先から支払い条件の変更を言い渡される場合、変更によって資金繰りがより厳しくなる場合もあるため、事態を注視しなければなりません。
希望退職者を募集し始めた
希望退職者を募る状況は、少なくとも経営的には芳しくなく、合法的にコストカットを行う際によく用いられます。
希望退職制度自体は大企業でも行われるため、今回ご紹介した他の前兆に該当するものがあったかどうかで判断することがおすすめです。
会社が倒産しそうなら今すぐ退職するべき?

倒産の前兆にいくつか該当した場合、すぐにでも退職すべきか悩みどころですが、この時2つのケースが想定されます。
それぞれのケースをご紹介します。
会社が持ち直す可能性がある
1つ目のケースは会社が持ち直す可能性です。
大胆なコストカットを断行して赤字体質を改善していく方法は多くの企業で行われ、成功につながっているケースも少なくありません。
税理士や公認会計士などが入ったとしても、抜本的な見直しやアドバイスを受けつつ、利益を生み出しやすい状況を作り出している最中と考えることもできます。
会社が倒産してから辞める方が得なことがある
2つ目のケースは、会社が倒産してから辞める方がいいことがある点です。
会社が倒産することはネガティブな出来事ですが、倒産を待っていた方が結果的にプラスに働くことがあります。
仮に倒産前に自己都合退職をした場合、給付制限などがかかるほか、再就職の際に前職の退職理由の説明を考えなければなりません。
倒産した場合は会社都合退職となるため、自己都合退職よりもプラスに働くことが多いので、倒産まで耐え忍ぶのも1つの選択肢です。
会社が倒産して会社都合で退職する方が得

なぜ倒産するのを待ち、会社都合退職になった方がいいのか、実は3つのメリットがあります。
- 失業保険を待機期間なしでもらえる
- 失業保険の受給期間が長くなる
- 転職理由を考える必要がない
ここからは3つのメリットについてご紹介します。
失業保険を待機期間なしでもらえる
1つ目は、失業保険の給付制限などがないため、すぐにもらえることです。
自己都合退職の場合、給付制限として2か月間失業手当がもらえない状況が続きます。
しかし、会社都合退職であれば給付制限がないため、失業手当をすぐに受け取れるのです。

失業保険の受給期間が長くなる
2つ目は失業保険の受給期間が長くなることです。
自己都合退職 | 被保険者期間10年未満 | 被保険者期間10年以上20年未満 | 被保険者期間20年以上 |
65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
会社都合退職 | 被保険者期間1年未満 | 被保険者期間1年以上5年未満 | 被保険者期間5年以上10年未満 | 被保険者期間10年以上20年未満 | 被保険者期間20年以上 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
例えば、大卒から10年以上働いていた場合、自己都合退職だと120日の受給期間しかありませんが、会社都合退職だと210日となり、90日間も給付日数が多くなります。
特に45歳以上60歳未満の場合、会社都合退職の方がかなりプラスであり、最大180日分、約半年ほど長く失業手当を受け取れるのです。
10年未満だったケースでも、5年以上10年未満であれば最低でも30日、最高でも150日ほど長く受け取れます。
転職理由を考える必要がない
3つ目は、転職理由を考えなくて済む点です。
倒産直前に退職した場合、前職を退職した理由について「倒産しそうだから」では印象がいいとは言えません。
これが倒産による会社都合退職であれば、「倒産したから」という明確で、説得力のある理由が言えます。
わざわざ転職理由を見繕う必要がないのも大きいでしょう。
会社が倒産しそうと思ったらしておくべきこと

万が一会社が倒産しそうな場合は、事前に3つの事を準備しておきましょう。
- 生活費を確保する
- 転職先を検討しておく
- 有休消化を検討する
ここからは準備しておくべき3つの事をご紹介していきます。
生活費を確保する
1つ目はあらかじめ生活費を確保しておくことです。
会社都合退職であれば失業手当こそ出ますが、あくまでも最低限生活できる程度の金額しかもらえません。
倒産に備えて貯金を行っておくと、これまで通りの生活水準を維持できる状況を当面確保できるので、ゆっくりと転職先を見つけ出すことができます。
転職先を検討しておく
2つ目は、倒産後の転職先を見つけておくことです。
会社都合退職であれば長く失業手当をもらえますが、1日でも早く再就職先を見つけた方が生活は安定しやすいでしょう。
同じ業種に転職するのか、別業種に転職するためにスキルを磨き始めるのか、将来的なことを考えて行動を起こせるようになります。
有休消化を検討する
3つ目は、有給休暇の消化です。
有給休暇は休みつつ、給与を確保できる制度ですが、倒産してしまうとせっかくの権利がなくなってしまいます。
権利が失われる前に積極的に消化していけば、有給休暇分のお金を確保できるのです。
会社が倒産しそうで給料が未払いの場合どうする?

会社が倒産しそうな一方、現状で給料が未払いの場合はどうすればいいのか、気になる人も多いでしょう。
ここでは「未払立替払制度」という制度があるので、この制度の活用がおすすめです。
未払賃金立替払制度を利用しよう
未払賃金立替払制度は、企業に成り代わって独立行政法人が未払い賃金を支払う制度です。
対象となる賃金は毎月の給与と退職金で、ボーナスなどは対象ではありません。
また立て替えてもらえるのは未払い賃金の8割で、上限金額も定まっています。
それでも、支払ってもらえない賃金を少しでも回収できるのは倒産後の経済状況を考えればかなり大きいと言えるでしょう。
まとめ
今回は会社が倒産しそうな時の前兆などをご紹介してきました。
それでは今回ご紹介した内容を振り返ります。
- 会社が倒産する前兆は12個ほど存在する
- 会社が倒産しそうなら直前に辞めるよりも倒産してからの方がメリットが多い
- 会社都合退職であれば給付制限もなく失業手当がもらえる日数がかなり増える
- 倒産しそうであれば事前に貯金や有休消化を行っておくことがおすすめ
- 未払い賃金がある場合は未払賃金立替払制度を活用すべし
倒産しそうな場合、逃げ出すように辞めるよりも最後まで頑張って倒産の憂き目に遭った方が、会社都合退職になる分、メリットは大きいです。
一方で、倒産前に魅力的な再転職先が見つかれば自己都合退職や会社都合退職など気にしないで辞められます。
倒産しそうな段階で前もって条件のいい職場を探し始めることも選択肢として有効でしょう。
最悪を想定して貯金を始めるなど、念入りな準備をしておくことが倒産後のスムーズな動きにつながります。