失業保険は転職するまでのセーフティネット的なものであり、貴重な収入源となります。
その中には、就職ではなく起業を検討する人も多く、失業保険をもらいながら起業準備は行えるのかと疑問を持つ方もいるはずです。
結論から言いますと、条件さえ満たせば起業準備中であっても失業保険を受け取ることは可能です。
本記事では、失業保険をもらいながら起業準備はできるのかを中心に、受け取れるケース、受け取れないケースなどを解説していきます。
失業保険とは?

最初に失業保険とはどういうものなのか、失業保険について解説していきます。
失業保険とは?
失業保険は、雇用保険を指しており、退職することで一定期間失業手当を受け取り続けられます。
失業保険の原資となっているのは、会社員やパート・アルバイトの時に加入していた雇用保険であり、支払った実績に応じて給付日数などが決まります。
加入期間にしっかりと支払っていた以上、失業保険を受け取るのは当然の権利です。
職探しをする中で失業保険を受け取るのが一般的と言えます。
また失業保険の給付日数が多く余って就職した場合、再就職手当を受け取ることが可能です。
再就職手当は余った失業保険をいっぺんに受け取れるような仕組みになっており、しかも非課税です。
失業保険の給付日数を丸々消化する必要はなく、頃合いを見て就職できれば再就職手当がもらえるので魅力的な制度と言えます。
失業保険の受給資格
一方で、失業保険には受給資格が存在します。
- 失業状態にある
- 雇用保険の被保険者期間が退職日以前2年間で12か月以上ある
- 特定受給資格者などであれば、雇用保険の被保険者期間は退職日以前1年間で6か月以上
- 就職したい意思がある
この場合の「失業状態」とは、心身ともに健康であることや再就職に向けた活動を行っていることなどが挙げられます。
失業状態は、ハローワークにおいて4週間に1回ある認定日で失業状態であることを認めてもらいます。
その上で失業保険を受け取ることが可能となるのです。
一方で求職活動実績がないのにウソをついた場合などは不正があったと判断され、さまざまな罰則があります。
ルールに則って失業保険をもらうようにしていきましょう。
失業保険をもらいながら起業準備はできる?

失業保険をもらいながら起業準備を行うのは本当に可能なのか、気になる方もいるのではないでしょうか。
ここからは失業保険をもらいながら起業準備が可能かどうかを解説します。
求職活動が条件
結論から言いますと、失業保険をもらいながら起業準備をすることは可能です。
その際の条件となるのが、求職活動です。
先ほどもご紹介した通り、失業保険を受け取るには「失業状態」であることが重要となります。
この失業状態は、求職活動を行うことで就職の意思がありながらも就職に至っていないと判断できます。
そのため、求職活動が大前提であり、「起業を目指しつつも場合によっては就職も視野に入れる」という形にすれば、普通に受け取ることは可能です。
起業準備しながら失業保険を受け取る条件

起業準備をしながら失業保険を受け取るには主に3つの条件が欠かせません。
- 失業保険の受給条件をクリアする
- ハローワークへ通う
- 求職活動をする
ここからは3つの条件に付いて解説していきます。
失業保険の受給条件をクリアする
失業保険を受け取る場合にまずもってクリアすべきなのが、失業保険の受給条件です。
自己都合退職だった場合には、「退職日以前2年間において雇用保険の被保険者期間が12か月以上」であることが求められます。
会社都合退職や特定理由離職者などの場合は「退職日以前1年間において雇用保険の被保険者期間が6か月以上」が条件です。
原則として、1年以上働き続けてきた人であれば、誰でも失業保険の受給条件を満たします。
一方で、心身いずれかに問題を抱えて就労できない場合には失業保険を受け取れません。
ハローワークへ通う
失業保険を受け取るには、必ずハローワークへ通わなければなりません。
失業してすぐに離職票を持参してハローワークに向かい、失業保険の受給に向けた手続きを行います。
失業保険を受け取るまでに何回か足を運ぶ必要があり、1回も足を運ばずに失業保険を受け取ることはできません。
4週に1回訪れる認定日では必ずハローワークに行って、書類の提出が必要になるからです。
決められた条件を毎回こなすことで失業保険を一定の日数まで受け取り続けられます。
求職活動をする
失業状態であることをハローワークに認めてもらうには、求職活動をすることが大切です。
求職活動は最低でも月2回は行う必要があり、何かしらの形で求職活動の実績を作らなければなりません。
起業準備を行っている場合には、ハローワークで相談を行うほか、セミナーへの参加を行って実績を稼ぐことになります。
求人に応募するのも実績にカウントされますが、場合によっては就職が決まるため、起業準備がムダになる恐れもあるでしょう。
起業を視野に入れたい場合には、就職が決まらない形で実績を重ねていくことが求められます。
起業準備中に失業保険を受け取れなくなるケース

起業準備中に失業保険を受け取ることは可能ですが、状況によっては受け取れなくなることがあります。
- 退職直後に開業届を提出
- 求職活動をせず起業準備をする
- 副業を続けている
ここからは失業保険が受け取れなくなる状況について解説していきます。
退職直後に開業届を提出
退職する前から起業独立を検討していた場合、退職していきなり開業届を提出する人がいます。
起業を想定している以上、すぐに開業届を出すことは決して間違いではありません。
しかし、開業届を出すことは就職したことと同じ意味になるため、その時点で失業保険の対象から外れてしまうので注意が必要です。
また、別の仕事を学んでから起業した方がより確実というケースもあります。
すぐに開業届を出すのではなく、起業準備と求職活動を並行して行って失業保険を受け取りつつ、最終的には開業届を出すという形が理想的です。
求職活動をせず起業準備をする
起業することを大前提にしている場合、求職活動を一切しないで起業準備に励む人もいるはずです。
この場合は求職活動をしておらず、求職活動実績がないため、失業保険を受け取ることができません。
求職活動は求人への応募以外にも、セミナーへの参加やハローワークの窓口での相談などでも実績として加算できます。
特に初回は説明会への参加で求職活動実績にカウントできるため、あと1回だけハローワークに足を運んで相談を受ければクリア可能です。
起業準備をしながら失業保険を受け取りたい場合には、相談を兼ねてハローワークに行くことをおすすめします。
副業を続けている
退職する前から副業を行って、お小遣いなどを稼いでいるという人が少なくありません。
注意したいのは、待期期間中に副業をそのまま続けてしまうことです。
待期期間は失業していることを証明する期間なので、アルバイトなどお金を稼ぐ行為は何もしてはいけません。
そのため、この期間にアルバイトなどをしていると、待期期間を消化していないと判断され、その分、失業保険の給付が後ろ倒しになります。
もちろん、待期期間中に副業をストップすれば問題はありません。
待期期間中は起業準備に時間をあてるなどして、有効活用していきましょう。
早めに起業したい場合は「再就職手当」

就職ではなく、起業に切り替えたい人にとって、意識しておきたいのが「再就職手当」です。
再就職手当とはどのようなものか、受給条件などを交えて解説します。
再就職手当とは
再就職手当は、失業保険を受け取れる権利を持っていた人が早めに就職を行ったことを理由に受け取れる手当を指します。
本来であれば90日分丸々受け取れる権利があったのに、わずか10日の給付のみで再就職を決め、残り80日分がムダになることも考えられます。
その場合、早期の再就職よりも給付日数ギリギリでの再就職の方が得という、おかしなことが起きてしまい、多くの人は早期の再就職をしようとしなくなるでしょう。
再就職手当は早期の再就職でも、本来受け取れるはずだった失業手当を最大限受け取れるようにした上で非課税になっているので、再就職先の給料とセットでお得に受け取れるようになっています。
再就職手当の受給条件
再就職手当は以下の条件を満たすことで受け取ることができます。
- 待期期間7日間の後に就職もしくは起業する
- 就職もしくは起業前日まで失業認定を受けた状態で、基本手当の支給残日数が所定の3分の1以上残っている
- 離職前の事業主に再就職していない
- 給付制限があるものの、求職申込から待期期間満了後1ヶ月において、ハローワークなどの紹介で就職した
- 1年を超えて勤務することが確実
- 原則として雇用保険の被保険者になっている
- 過去3年における就職で、再就職手当などを受け取っていない
- 求職申込の前から採用が内定していた企業などに雇用されるわけではない
所定の給付日数が90日だった場合は、基本手当の残日数が30日以上あれば、支給の対象となります。
ちなみに、再就職手当の金額も以下にまとめました。
- 所定給付日数の3分の1以上の日数を残した場合→支給率60%
- 所定給付日数の3分の2以上の日数を残した場合→支給率70%
失業保険で本来受け取れる金額の60%ないし70%を受け取れます。
例えば、所定給付日数90日で、残り80日分を残して再就職をした場合は支給率70%となるので、56日分の失業手当が受け取れる計算です。
そのため、早ければ早いほど多くの失業手当が受け取れるため、決して早期の再就職が損にはならないのです。
個人事業主で再就職手当のタイミング
起業を果たし、個人事業主になって再就職手当を受け取るには、まず失業認定を受けることが第一です。
その上で、個人事業主になるために開業届や開業を証する書類を提出することが求められます。
あとは、先ほども紹介した再就職手当を得るための要件を満たしていれば、再就職手当を受給することができます。
実際に再就職手当を受け取れるのは、申請してからおよそ1か月程度です。
個人事業主として色々とお金がかかるタイミングで、一定の金額がまとめて入ってくるので、起業間もない状況を支えてくれるはずです。
まとめ
今回は、失業保険をもらいながら起業準備はできるのかについて解説をしてきました。
最後に今回ご紹介した内容を振り返っていきます。
- 起業準備をしながら失業保険を受け取ることは可能
- 起業準備をしながら失業保険を受け取るには、求職活動が絶対条件
- 失業保険の受給条件を事前にクリアしておくことも重要
- 退職していきなり開業届を出すと失業保険を受け取れなくなるので注意
起業すべきか就職すべきかを悩みながら退職した方もいるのではないでしょうか。
どちらか悩んでいる場合にはまず失業保険を受け取りながら、どちらに進んでもいいように対応していくことをおすすめします。
最初から起業を目指そうと思っても、なかなかうまくいかないことがあるためです。
受け取れるものを受け取ってからでも起業はできるので、まずは失業保険の手続きを行っていきましょう。
その上で、起業か就職かの決断をしていく形で問題ありません。