失業保険の給付額や開始時期が正しく把握できず、不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
退職サポーターズが行ったアンケートでは、「失業保険が支給されるまでに一番困ったことは?」という質問に対し、142名の方が「給付開始までの待機期間が長くて困った」と回答しました。
ほかにも「思ったより金額が少なかった」「給付期間が短かった」「会社から必要書類がもらえなかった」「そもそも雇用保険に加入していなかった」など、退職者の不安やトラブルが数多く寄せられています。

実は、受け取れるお金が100万円以上増えるケースや、本来よりも早く失業保険を受け取り始められるケースがあります。
そこで今回は、失業保険をできるだけ早く受け取るためのポイントや、受給期間の延長方法などを解説します。
そもそも失業保険とは?どんな条件があるの?
失業保険は「退職後、再就職までの生活費を国が支給してくれる」制度です。
失業しても安心して再就職先を見つけられるよう、経済的に支援してくれます。
ただし、失業保険を受け取るにはいくつかの条件があります。

働く意思や能力があるにもかかわらず就職しておらず、継続的にハローワークに求職の申し込みをしている必要があります。
また、雇用保険加入期間は退職日以前2年間で12ヶ月以上(会社都合の場合退職日以前1年間で6ヶ月)が条件です。

失業保険がもらえる退職理由
以下のいずれかの理由で退職した場合、失業保険を受け取れます。
- 会社の倒産
- 契約期間満了
- 定年退職
- 解雇
- 労働者の判断によるもの
会社の倒産
会社の倒産で失業した場合、以下のいずれかに該当すれば特定受給資格者となります。
特定受給資格者は、給付制限なしで失業保険を受け取れるなどの優遇があります。
- 破産や民事再生など、倒産によって退職した方
- 1ヶ月に30人以上の大量雇用変動の場合の届出によって退職した方
- 3分の1以上の被保険者である従業員が退職したことにより、退職した方
- 事業所の廃止によって退職した方
- 事業所の移転に伴い、通勤できなくなったことで退職した方
上記の条件とは別に、退職日以前1年間で6ヶ月以上の雇用保険加入歴も必須です。
契約期間満了
契約社員やパートなど、雇用期間の定めのある方が契約期間満了を迎えて失業した場合、失業保険を受け取れます。
契約満了となるのは、具体的には以下の2通りです。
- 契約満了日を迎えた従業員が、契約更新を希望しない
- 契約満了日を迎えたものの、従業員の契約更新を雇い主が希望しない
契約期間満了で退職した場合、特定理由離職者と扱われ、給付制限期間が設けられません。
上記のケースでは、速やかに失業保険を受け取れます。
定年退職
定年退職の方が失業保険をもらうには、以下の条件を満たすことがポイントです。
- 退職するまでの2年間で12ヶ月以上、雇用保険に加入していること
- 65歳未満で退職していること
失業保険は64歳以下を対象としており、65歳までの退職が大前提です。
しかし、日本の法律において、65歳未満として認められるのは誕生日の前々日までです。
4月3日に65歳を迎える方が失業保険をもらうには、4月1日までに辞める必要があります。
65歳以降に退職する場合、高年齢求職者給付金の受給対象です。
解雇
解雇によって失業した方は、解雇の種類次第で失業保険を受け取れます。
解雇の種類として、具体的に以下の4つがあります。
| 解雇の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 普通解雇 | 従業員の能力不足、経歴詐称、協調性の欠如などを理由とするもの |
| 懲戒解雇 | ・会社の秩序を乱す規律違反を従業員がしたことを理由とするもので、最も重い処分 ・横領、度重なるセクハラやパワハラ、長期間の無断欠勤などが該当する |
| 諭旨解雇 | ・懲戒解雇の次に重い処分 ・本来であれば懲戒解雇となるところを、会社の酌量で処分を軽減してもらえるもの ・退職届の提出が必要 |
| 整理解雇 | ・会社の業績悪化に伴い、人件費削減をもくてきに行われるもの ・リストラのことを指す言葉 ・整理解雇となる方の基準として、技術のない方や協調性のない方などの項目がある |
普通解雇や整理解雇は原則として会社都合退職に該当します。
一方、懲戒解雇や諭旨解雇は従業員に責任のある形で辞めさせられるため、自己都合退職の扱いとなります。
労働者の判断によるもの
労働者の判断によって退職した場合、失業保険がもらえます。
以下の表の通り、労働条件や給料などで問題があることを原因に、労働者が退職するケースが該当します。
| 労働者の判断による退職となるもの | 具体的な内容 |
|---|---|
| 労働条件 | ・会社から提示された労働条件と、実際の労働条件が著しくことなることを理由に、1年以内に退職 ・会社が労働条件を変更したことで、採用条件と実際の労働条件が大きく異なることを理由に、1年以内に退職 |
| 賃金遅配など | 2ヶ月以上にわたり、給料の3分の1を超える金額が期日までにもらえなかったことを理由に退職 |
| 賃金低下など | ・以前に比べ、賃金が85%未満に減額、もしくは減額する報せを受けて退職 ※賃金低下を予想できなかった場合に限られる |
自己都合退職と会社都合退職の違いとは?
「自己都合退職と会社都合退職で何がどれだけ違うのか」と疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。
2つの違いは以下の3つのポイントを抑えておけば大丈夫です。
- もらえるタイミング
- もらえる日数
- もらえる最大額
本項目では、それぞれの違いについて解説します。
失業保険がもらえるタイミング
自己都合退職では1ヶ月の給付制限があるため、振込まれるまでに2ヶ月程度かかるケースもあります。
一方、会社都合退職の場合は給付制限がなく、遅くても1ヶ月半で失業保険が受け取れます。
会社都合退職は従業員の意思に関係なく突然失業し、生活へのダメージが大きいため、給付制限がありません。
失業保険がもらえる期間
自己都合の場合は90日から150日、会社都合の場合は90日から330日と大きく異なります。
例えば、35歳以上45歳未満の人で被保険者期間が10年以上20年未満だったとします。
自己都合退職では120日間にとどまりますが、会社都合退職なら240日間と2倍です。
もらえる失業保険の最大金額
失業保険の最大額は、自己都合退職では約125万円に対して会社都合退職では約275万円です。
自己都合退職は最大の支給日数が150日に対し、会社都合退職は330日です。
また自己都合退職と会社都合退職では給付率が異なり、会社都合退職の方が高くなる傾向にあります。
以上の点から2倍以上の差が生じやすくなります。
自己都合退職と一度言われたら、取り消せないの?
既に会社から「自己都合退職」を言い渡された方がいらっしゃるかもしれません。
自己都合退職と会社都合退職では、明らかに会社都合退職の方が得です。
そのため、「自己都合退職と一度言われたら、取り消せないの?」と不安に感じる方もいるはずです。
実は自己都合退職と言われても、条件次第でひっくり返せます。

自己都合退職でもすぐに失業保険をもらう方法
自己都合退職と言われても、どちらかに該当すれば会社都合退職と同じ扱いを受けられます。
- 特定受給資格者
- 特定理由離職者
本項目では、2つの資格について解説します。
特定受給資格者って具体的にどんな人?
特定受給資格者は、会社側の事情で再就職の準備ができないまま失業した人を指します。
- 会社の倒産
- リストラ
- 退職勧奨による失業
- 事業所の移転による通勤困難
- 契約更新を望むも更新されずなど
最もポイントなのは「会社側の事情によって」という部分です。
実は会社側の事情で退職を余儀なくされたのに、自己都合退職扱いになるケースがあります。
「会社都合」の場合、企業側が各種助成金を受け取りにくくなるデメリットが生じます。
なるべく助成金などを受け取れるようにするため、あえて「自己都合退職」と離職票に記載する企業が存在します。
特定受給資格者の代表的な例 長時間労働
特定受給資格者の代表的なパターンとして、規定の長時間労働が挙げられます。
次のような残業、時間外労働がおこなわれていた場合、特定受給資格者に該当します。
- 辞める直前6ヶ月のうち、どれか1ヶ月の残業時間と休日労働時間が100時間を超えるとき
- 辞める直前の6ヶ月のうち、3ヶ月連続して月45時間以上の残業と休日労働があったとき
- 辞める直前の6ヶ月のうち、連続する2ヶ月以上の期間で残業時間と休日労働時間を平均して月80時間を超えるとき
このうち、1つでも当てはまれば会社都合退職に変更できます。

これらの長時間労働は、36協定の限度基準に抵触しやすいのが実情です。
そのため、「長すぎる残業が原因で会社を辞めざるをえなかった」と主張できます。
以下は具体例です。
辞める直前の3ヶ月の期間で「残業時間が30時間、80時間、90時間」のケース。
月の残業時間が100時間は超えてないため、1番には該当せず。
2番も3ヶ月連続で45時間以上は超えていないので、こちらも該当せず。
3番目に関しては最後の2ヶ月で80時間、90時間の残業を行っている。
連続する2ヶ月以上の期間で平均残業時間が月80時間を超えており、要件に該当する。
上記のケースでは、自己都合退職から会社都合退職へ変更できます。
特定受給資格者にはほかにどんな人が当てはまる?
残業以外で特定受給資格者となるケースをまとめました。

参考:厚生労働省職業安全局HP
特定理由離職者って具体的にどんな人?
特定理由離職者には2つのパターンがあります。
- 派遣社員やパートなど契約期間の定めがある方の契約期間満了
- 正当な理由があり自己都合で退職した方
派遣社員など契約期間が決まっている場合、契約更新が行われず、期間が満了を迎えた人は特定理由離職者です。
本項目では、「正当な理由があり自己都合で退職した方」について掘り下げます。
特定理由離職者 正当な理由がある退職者って?
特定理由離職者となる正当な理由には、身体的な理由と環境的な理由の2つがあります。
・働き方や職場の人間関係が合わず、適応障害やうつになってしまった場合
・妊娠・出産・育児などによって退職せざるを得なくなった場合など
・親の介護のため仕事に行けず退職を余儀なくされた場合
・自分の意思に反して転居せざるをなくなり会社への通勤が難しくなった場合など
特定理由離職者にあたる理由があれば、会社都合と同等の優遇措置が受けられます。
給付制限がなくなるため、自己都合退職よりも早めに失業保険がもらえます。
特定受給資格者または特定理由離職者を申請するにはどうすればいいの?
特定受給資格者または特定理由離職者の要件に当てはまると分かった場合、ハローワークでの申請が必要です。
ハローワークにおいて特定受給資格者または特定理由離職者かどうかの判断が行われます。
ハローワークで特定受給資格者または特定理由離職者と認めてもらうため、証拠の提出が欠かせません。
医師の診断書など必要となる証拠を集めた上で、お近くのハローワークで相談しましょう。
失業保険をもらいながら職業訓練を受けるのもオススメ
「失業中の時間を有効に使いたいけれど、収入がなくなるのが不安…」と感じる方もいるのではないでしょうか。
失業保険をもらいながら職業訓練を受けられるため、スキルを身につけながら安定した生活を送れます。
本項目では、職業訓練に関する内容を解説します。
職業訓練とは?
職業訓練とは、就職するために必要なスキルや知識などを学べる公的な制度のことです。
厚生労働省が運営していることから、基本的に無料(テキスト代や受験料などは有料)で受講できます。
費用を抑えつつスキルアップしやすい点が特徴になります。
職業訓練で学べるスキルとは、具体的に以下の通りです。
- 経理
- Web関連
- CAD
- 電気溶接
- ネイル
- ウエディングプランナーなど
さまざまな業種や職種などに対応しており、希望する仕事に転職しやすくなります。
失業保険を受給している方が職業訓練の対象で、求職者支援訓練の対象者とは異なります。
求職者支援訓練は以下の方を対象とする制度です。
- 失業保険を受給できない方
- 受給期間が終わった方
後述するように、職業訓練を受けるためには、ハローワークに問い合わせるところから始まります。
失業保険もらいながら職業訓練を受ける条件
失業保険をもらいながら職業訓練を受けられるケースもあり、具体的には下記の条件を満たす必要があります。
- ハローワークで失業保険の手続きをしていること
- 1年以内に職業訓練を受けていないこと
- 失業保険の残日数が訓練開始日までに2/3残っていること
ハローワークで失業保険の手続きをしていること
失業保険をもらいながら職業訓練を受けるには、ハローワークで失業保険の手続きを行います。
失業保険の手続きの流れは、具体的に以下の通りです。
- ハローワークで求職申込みをし、離職票を提出する
- 受給説明会で「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」をもらう
- 職業相談や職業紹介などの求職活動を進める
- 失業の認定を受け、雇用保険が給付される
失業の認定後は、原則的に4週間に1度のペースで求職状況がチェックされます。
1年以内に職業訓練を受けていないこと
失業保険をもらいながら職業訓練を受けるには、1年以内に職業訓練を受けていないことが条件の1つになります。
過去に職業訓練を受講した経験のある方は、前回の受講開始日から1年ほど待つ必要があります。
失業保険の残日数が訓練開始日までに2/3残っていること
失業保険をもらいながら職業訓練を受けるには、失業保険の残日数を満たすのが条件です。
目安は失業保険の残日数が訓練開始日までに2/3残っているかどうかです。
ただし、場合によっては条件を満たしていない場合でも職業訓練を受講できます。
【補足】失業保険の残日数が少なくても職業訓練を受けられる?
失業保険の残日数が少ない方の場合、原則職業訓練を受けられません。
その代わり、ハローワークから受講推薦があれば受けられます。
ただし、以下のように待遇が変更になる点には注意が必要です。
- 職業訓練期間中の失業保険の延長がなくなる
- 失業認定日にハローワークで面談する必要がある
- 通所手当・受講手当がなくなる
職業訓練は受けられても無収入になりやすいのがネックです。
失業保険もらいながら職業訓練を受ける4つのメリット
失業保険をもらいながら職業訓練を受けることで、以下の4つのメリットが得られます。
- 自己都合退職の場合、待機期間がなくなる
- 失業保険をもらえる期間が延長される
- 失業認定日にハローワークへ行かなくていい
- 交通費や手当がもらえる
ここから、具体的に解説します。
自己都合退職の場合、待期期間がなくなる
失業保険をもらいながら職業訓練を受けるメリットは、自己都合で退職したときの待機期間が0になる点です。
失業保険を受給するまでには、基本的に以下の待期期間があります。
- 会社都合で離職したときの待期期間:7日間
- 自己都合で離職したときの待期期間:7日間+1ヶ月もしくは3ヶ月
自己都合で退職した場合でも給付制限がなくなるため、すぐに失業保険を受け取れます。
失業保険をもらえる期間が延長される
失業保険をもらえる期間が延長される点もメリットの1つです。
年齢や加入期間などに応じて、失業保険の給付日数は90日から360日までの間に決まります。
仮に失業保険の給付日数が終わっても、職業訓練が継続している場合は「訓練延長給付」が認められます。
訓練終了日まで失業保険が延長されるので、元々給付日数が少ない人ほどメリットがあります。
失業認定日にハローワークへ行かなくていい
失業認定日に毎回ハローワークに行かなくてもよくなる点もメリットです。
失業認定日は基本的に、職業訓練の受講日と重なっています。
職業訓練をしている方の場合、就職の意思を持っていると判断されるため、失業認定の手続きが免除されます。
ハローワークに通う手間をなくすことで、自分のために時間を使えます。
交通費や手当がもらえる
失業保険をもらいながら職業訓練を受けるメリットとして、交通費や手当などをもらえる点があげられます。
交通費や手当などは、具体的に下記の通りです。
- 職業訓練受講手当:月額10万円
- 通所手当:自宅から訓練期間までの交通費
- 寄宿手当:月1万700円
受給できる金額が特に大きいのは職業訓練受講手当で、以下の条件を満たす必要があります。
- 本人の収入:月8万円以下
- 世帯の収入:月25万円以下
- 世帯の金融資産:300万円以下
- 住居以外に土地や建物の所有なし
- 全ての訓練日に出席(やむをえない理由の場合、8割以上の出席)
- 同一世帯に職業訓練受講給付金を受け取っている人がいない
- 過去3年以内に特定の給付金を不正に受給していない
条件を満たしている方の場合、月10万円の手当を受けられます。
失業保険もらいながら職業訓練を受ける3つのデメリット
失業保険をもらいながら職業訓練を受ける場合はメリットもありますが、以下の3つのデメリットもあります。
- 職業訓練を受けられるコースが限られている
- 審査に落ちると職業訓練を受けられない
- 就職に有利になるとは限らない
ここから、具体的に解説します。
職業訓練を受けられるコースが限られている
受講できるコースが限られている点はデメリットです。
地域や分野などによって受けられるコースに違いがあります。
- 受けたいコースが求職者支援訓練にある
- 希望する分野のコースがない
- 自宅の近くにあるハローワークには受講したいコースがない
上記のように、職業訓練の中には希望するコースがない可能性もあります。
審査に落ちると職業訓練を受けられない
審査に落ちると訓練を受けられない点もデメリットです。
職業訓練を受ける前には審査が設けられており、審査に合格する必要があるためです。
人気のコースの場合は特に倍率が高くなる傾向にあり、落選する可能性も高くなります。
第一志望のコースのみに絞らず、複数のコースに応募するのも1つの方法です。
各コースの倍率を調べるには、ハローワークのWebサイトや電話などを利用するのが便利です。
就職に有利になるとは限らない
失業保険をもらいながら職業訓練を受けても、必ずしも就職に有利になるとは限りません。
基礎スキルや知識などはあっても、実務経験があるとはみなされないためです。
特に中途採用の場合は、即戦力を求める傾向にあります。
結果的に実務経験の有無を重視する点が特徴になります。
実務経験者のみを採用している企業の場合、応募資格を満たせない可能性があります。
求人に応募するときは、職業訓練でどのようなことを学び、実践してきたのかを的確にアピールするのがポイントです。
失業保険もらいながら職業訓練を受ける流れ
失業保険をもらいながら職業訓練を受ける場合、具体的には以下の流れで進行します。
まずは、自分の働きたい分野の職業訓練が実施されているのかを調べます。 職業訓練校までの距離や内容などを調べたうえで、条件に合う物を選びましょう。 もし最寄りの職業訓練校に希望する分野の訓練がない場合、他の地域を調べるのも1つの方法です。
希望する分野の職業訓練が見つかった場合、説明会に参加しましょう。 説明会は定期的に実施されており、訓練しているところを見学できるケースもあります。 見学することにより「こんなはずじゃなかった」となるのを避けやすくなります。
受講を決意した場合、申し込み手続きを進めましょう。 申込書や写真(4×3cm)、雇用保険受給資格者証などを揃え、ハローワークで手続きをします。 職業訓練には申込みの期限が決められており、期限内をすぎないように注意が必要です。
申込みが終了したあとは、各訓練校が実施する試験を受けます。 試験の内容は、筆記試験や書類審査、面接などで、特に面接が重要になります。 志望動機や就職への前向きな姿勢などをアピールできるように、対策をすることがポイントです。
試験に合格した場合、訓練校に入るための手続きをしましょう。 試験に合格すると、契約書や受講届、説明会の案内などの書類が届きます。 説明会では受講推薦書を受け取ることもあり、出席することが求められます。
自己都合退職で失業保険をもらうときによくある質問
最後に自己都合退職で失業保険をもらうときによくある質問をまとめました。
- 自己都合退職は、転職時にどのような評価になる?
- 会社都合退職と比べると、よい評価を得られる可能性が高いです。
会社都合退職の場合、解雇や退職勧奨など「ネガティブな要因で退職したのではないか」と思われる可能性が高いためです。
失業保険をもらううえで、会社都合退職は受給期間や金額などの面で有利であるものの、転職活動においては不利になりやすいです。
退職理由に関係なく、転職活動において退職理由を明確に伝えることは重要な点です。
合わない人間関係や想像以上の激務などを理由に退職した場合でも、前向きな理由に置き換えましょう。
- 人間関係のため自己都合退職した場合、転職時にどのように説明すればいい?
- 社風と合わなかったと説明するのが無難です。
周囲と円滑にコミュニケーションを取れない人物なのではないかと、面接官から疑われる可能性もあるためです。
例えば、ノルマが厳しく、人間関係がギスギスしていた場合には、「社員同士で競争するのではなく、強調し合う会社の方が能力を発揮できる」と説明します。
また、「個人ではなくチーム単位で働けると感じたため応募した」と説明することで切り抜けられます。
- ハラスメントにより自己都合退職した場合、転職面接でどのように説明したらいい?
- 第三者の目線で振り返ったうえで説明することがポイントです。
本人の目線ではハラスメントと捉えられることでも、第三者からすると自己責任とされるケースがあります。
例えば、同じミスを繰り返したことが原因で厳しい指導を受けても、必ずしもハラスメントと断定できません。
自分のミスを棚にあげ、厳しい指導をしてきた相手の責任のみを指摘しているためです。
ハラスメントを受けてからどのような改善を行ったかを説明できると、面接官によい印象を持ってもらいやすくなります。
- 自己都合退職で失業保険を受けるデメリットはある?
- 会社都合退職に比べると受給期間が短い点や、入金スピードが遅い点などがあげられます。
特に給付日数の違いが大きく、自己都合では90日から150日に対し、会社都合では90日から330日と異なります。
雇用保険の加入期間が長く、一定の年齢より上の方ほど自己都合退職のデメリットを被りやすいです。
- 自己都合退職で失業保険はいつからもらえる?
- 7日間の待期期間と、1ヶ月の給付制限期間を経てから失業保険がもらえます。
厳密には4週間に1度の失業認定を経てから振り込まれるため、手続きを始めてから2ヶ月ほどかかります。
以前は給付制限期間が2ヶ月あったため、条件は緩和されています。
それでも一定期間は無収入となるので、退職する際には注意が必要です。
- 自己都合退職で失業保険はいくらもらえる?
- 基本手当(失業保険)日額×給付日数で算出できます。
基本手当日額を算出する方法は、以下のとおりです。
(退職日までの6ヶ月の給料)÷180(日)×給付率(50%から80%)
基本手当日額に関して、雇用保険受給資格者証の14欄でも確認できます。
給付日数は90~150日で、雇用保険加入期間が10年未満なら原則90日です。
- 病気で退職したら失業保険はもらえる?
- 条件を満たせば、もらえる可能性があります。
病気で退職したあと、働けない状態にある場合、本来失業保険はもらえません。
失業保険をもらえる期間は退職日の翌日から1年以内のため、前もって失業保険の延長申請を行います。
最大4年まで延長が可能なので、体調が回復し働ける状態になったあとから、失業保険を受け取れます。
- うつ病で退職しても失業保険はもらえる?
- 働ける状態であれば、失業保険をもらえる可能性があります。
うつ病の症状がひどく、治療に専念する場合は失業保険をもらえません。
退職前に傷病手当金を受け取っていた場合は先に傷病手当金を受け取りましょう。
失業保険の延長申請を行った上で傷病手当金を受け取り、働ける状態になったら失業保険を受け取るのがおすすめです。
- パートの退職でも失業保険はもらえる?
- 条件を満たせばもらえます。
雇用保険に加入できる働き方をしていれば、所定の条件を満たすことでもらえます。
雇用保険に加入しているのかは、給与明細書で確認できます。
- 派遣社員でも失業保険を受け取れる?
- 条件を満たせば受け取れます。
パート同様、雇用保険に加入できる働き方であれば、所定の条件を満たすことでもらえます。
派遣社員の場合、雇用元が派遣会社であることから、会社都合退職を認めてもらえない場合があります。
退職理由に関して不服がある場合、派遣会社の担当の方に相談するのが望ましいです。
まとめ
- 自己都合退職と会社都合退職によって、失業保険がもらえるタイミング・期間・金額が違う
- 会社から「自己都合退職」といわれた場合でも、すぐに失業保険がもらえる可能性がある
- 退職にあたってできるだけ早く自分の状況を確認し、きちんと失業保険を受け取ろう
もし会社側から自己都合退職とされていても、会社都合退職に変更できるケースがたくさんあります。
病気やケガなどを理由に退職する場合は、特定理由離職者として扱われ、給付制限なしで失業保険が受け取れやすくなります。
診断書などの証拠をそろえた上で、速やかにハローワークで手続きを済ませましょう。
職業訓練などの制度をフル活用し、納得のいく転職活動を行うのがおすすめです。


涌井社会保険労務士事務所代表 涌井好文
平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。
退職時のおけるトラブル相談や、転職時のアドバイスなど、労働者側からの相談にも対応し、労使双方が円滑に働ける環境作りに努めている。
また、近時はインターネット上でも活発に活動しており、クラウドソーシングサイトやSNSを通した記事執筆や監修を中心に行う。



