子供が成長するまでは育児に専念したい男性・女性を対象にした給付金として「育児休業給付金」があります。
この育児休業給付金を巡っては子育て世帯への支援として給与日額の80%が支給されることが検討されています。
ただ、現状では育児休業給付金が80%になる段階は未定となっている状況です。
本記事では育児休業給付金の話題を中心に受給条件や申請方法などをご紹介します。
育児休業給付金はいつから80%に引き上げ?
2023年4月、政府は育児休業給付金の最低支給率を80%に引き上げることを表明しました。
実際はいつごろ引き上げられるのか、そのあたりの情報をご紹介します。
引き上げ方針は発表されているが実施時期は未定
結論から言いますと、育児休業給付金の引き上げの実施時期は未定です。
2023年12月段階でも検討が進められており、2023年11月の情報では2025年度中の開始を目指しているという報道もあります。
そのため、育児休業給付金の引き上げは2025年4月以降の可能性が高まっています。
現状は育児休業給付金の引き上げを巡っての調整を行っている段階と考えられるでしょう。
育児休業給付金が80%になるといくらもらえる?
現在育児休業給付金の給付率は育休前の賃金の67%に設定されています。
また育休中は社会保険料が免除されることから、収入の手取り額は育休前の8割が今の状況です。
育休前の賃金の80%にすることで、収入の手取り額は実質10割となる計算です。
つまり、育児休暇中も働いている時と同じ収入を維持できます。
そもそも育児休業給付金とは?
そもそも育児休業給付金とはどういうものなのか、ここでは条件・金額・期間についてそれぞれ解説します。
【条件】育児休業給付金をもらえる条件は?
育児休業給付金がもらえる条件は以下の要件を満たすことが必要です。
- 1歳未満の子供を養育するために育児休業を取得した雇用保険の被保険者
- 育児休業開始日前2年間において賃金支払基礎日数が11日以上もしくは就業時間数80時間以上の月が12か月以上
- 育児休業中の就業日数が1か月10日以下
- 育児休業中に賃金の8割以上が支払われていない
- 育児休業後に退職の予定がない
この条件の中で「育児休業開始日前2年間において賃金支払基礎日数が11日以上もしくは就業時間数80時間以上の月が12か月以上」という項目がありますが、例外もあります。
それは病気やケガなどを理由に休んでいた時期がある、もしくは第1子の育児休業を取得して第2子の育児休暇を取得するケースです。
この場合は受給要件が緩和されることがあるため、別途確認が必要となります。
また契約社員などの有期契約労働者に関しても、子供が1歳6か月ないし2歳になるまで雇用が見込まれるケースでは受給が可能です。
ちなみに育児休業給付金は雇用保険加入者を対象にした制度のため、雇用保険非加入の自営業者や個人事業主は対象とはなりません。
【金額】育児休業給付金はいくらもらえる?計算方法は?
育児休業給付金は以下の計算式で算出されます。
- 休業開始時賃金日額×30×給付率(67%・50%)=1か月あたりの支給額
育児休業給付金は育児休業前半年間の賃金が対象となり、育児休業前半年間の賃金を180で割ります。
- 休業開始時賃金日額=育児休業前半年間の賃金÷180
引き上げ前の段階では育児休業から180日間までは給付率67%、181日以降は給付率50%で計算されます。
ちなみに育児休業給付金には支給上限額があり、育児休業後180日までは1か月の上限が305,319円、181日以降は227,850円で設定されています。
一方で育児休業給付金は非課税のため、所得税はかからず、住民税を算定する際の額にもカウントされません。
そして社会保険料も免除されることから実質的な手取りは80%となります。
【期間】育児休業給付金はいつからいつまでもらえる?
育児休業給付金の対象期間は、父親と母親で異なります。
まず母親の場合は産後8週間以内の産休期間終了後翌日から子供が1歳になる前日までが対象です。
そして父親は、出産予定日もしくは出産日の早い日から子供が1歳になる前日までが対象となります。
ただし条件を満たせば育休期間の延長が可能です。
- 1歳になってから保育園の入園ができなかった場合
- 両親のいずれかもしくは両方が死亡するもしくはケガ・病気で働けない場合
- 婚姻の解消などで配偶者と別居する場合など
中でも1歳になってから保育園の入園ができない場合に育児休業給付金が延長されるケースが目立っています。
近年は保育園もしくは保育所に落選することを目的に入所申請を出す事例が出るなど、給付延長申請の審査を厳格化する動きも報道されています。
80%への引き上げに向け、給付延長に向けた審査が厳しくなる可能性が考えられます。
育児休業給付金の申請方法は?
ここからは育児休業給付金の申請方法についてご紹介します。
必要な書類と申請の手順についてまとめました。
必要な書類
育児休業給付金の申請を行う際に必要な書類ですが、1回目の申請と2回目以降の申請で書類の内容が異なります。まずは1回目の申請で必要な書類です。
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付金支給申請書
- 育児休業給付受給資格確認票
- 賃金台帳・労働者名簿・出勤簿など
- 母子手帳など
次にご紹介するのは2回目以降の申請で必要な書類です。
- 育児休業給付支給申請書
- 賃金台帳・労働者名簿・出勤簿など
育児休業給付金の申請は基本的に勤務先が手続きを行うため、申請書の記入などをすれば十分です。
申請の手順
事業主が行う申請の手順は以下の通りです。
- 育児休業をとりたいと従業員から事業主に申し出を行う
- 事業主がハローワークから所定の書類を申請する
- 従業員が各種書類に必要事項を記載し母子手帳とともに事業主に提出
- 賃金台帳などの添付書類などをまとめてハローワークに提出
育児休業をとりたい方は所定の書類に育児休業給付金を受け取るための口座情報などを記載することが求められます。
そのほかの手続きは事業主側が行ってくれるため、面倒な負担はかかりにくいと言えます。
育児休業給付金関連の育休制度はある?
育児休業給付金に関しては他にも制度が存在します。
- 産後パパ育休
- パパ・ママ育休プラス
それぞれの育休制度について解説します。
産後パパ育休
産後パパ育休は産後8週間以内に、4週間を限度に2回に分けて取得できる育児休業です。
これは母親の負担が大きくなりやすい出産直後のタイミングで父親の育児休業を取りやすくさせる制度となっています。
ちなみに、労使で話し合いを行い協定が締結されていれば、労働者が合意した範囲の中で育休中の就業も可能です。
産後パパ育休の申出期限は休業2週間前までとなっており、出産直後と母親の産休明け直前の2回に分けることもできます。
パパ・ママ育休プラス
パパ・ママ育休プラスは父親母親が一緒に育児休業をとることで、期間延長が可能となる制度です。
本来育児休業は原則子供が1歳になる前日までですが、パパ・ママ育休プラスを活用すれば子供が1歳2か月になるタイミングまで延長可能となります。
また分割取得も可能なため、母親が職場復帰するタイミングで父親が育児休業をとるというやり方もできます。
まとめ
今回は育児休業給付金がいつから80%になるのかについてご紹介してきましたが、最後に今回ご紹介した情報を振り返ります。
- 育児休業給付金が80%に引き上げられるタイミングは未定も2025年度中を目指している
- 育児休業給付金は非課税なので現在も手取りで賃金の80%がもらえるが、引き上げ後は100%に
- 育児休業給付金の申請は事業主が行う
育児休業給付金は子育て世帯を力強く支えるものであることは間違いありません。
しかも、引き上げによって手厚くサポートされるため、安心して子育てに専念することもできます。
一方で受給延長の厳格化なども検討されるなど、育児休業給付金を巡る議論に注視する必要があります。
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