自治体の職員や警察官、消防士、自衛隊員、官僚など日々、日本や各自治体を支えているのが公務員です。
公務員が退職する場合、実は失業保険はもらえず、代わりに退職手当がもらえます。
なぜ失業保険ではなく、退職手当なのかですが、これには理由が。
本記事では公務員は失業保険をもらえない理由や退職手当とは何か、失業保険と退職手当の差額などの情報をまとめています。
ぜひ最後までご覧ください。
公務員は失業保険をもらえる?
結論から申し上げますと、公務員は失業保険をもらえません。
民間企業で一定期間以上働いた場合、退職することで失業保険を手にすることができます。
しかし、公務員の場合は一定期間以上働いていたとしても失業保険を手にできないのです。
公務員は失業保険をもらえない理由
公務員が失業保険をもらえない大きな理由は、公務員が雇用保険法の対象から外れているからです。
民間企業で働く人たちは原則雇用保険に加入し、雇用保険料を支払っています。
だからこそ、失業した際には雇用保険の中から失業手当が支給される形ですが、公務員はそもそも雇用保険法の対象外であり、雇用保険料を支払っていません。
雇用保険料を支払っていない以上、手当が出ることはないのです。
公務員は失業保険の代わりに退職手当をもらえる
公務員は失業保険を使えない、では、退職した場合、セーフティーネット的なものはないのかと不思議に思った方が多いかもしれません。
もちろん、公務員に対してもセーフティーネット的なものが存在します。
それが退職手当です。
公務員における退職手当が、民間企業で働く人にとっての失業保険の代わりになります。
退職手当をもらえる条件
公務員には地方公務員と国家公務員の2種類がありますが、原則として受給要件は国家公務員も地方公務員も同じような形になっています。
代表して国家公務員の受給要件を以下にまとめました。
- 原則勤務期間12か月以上
- 退職手当の額が失業保険で本来もらえる給付相当額に達していない
- 退職日翌日から1年以内に失業している
- 待期期間を超えて失業している
基本的なルールは失業保険のルールとそこまで大きく変わらず、退職手当が失業保険の代わりになってくれることがわかります。
退職手当の申請方法
公務員が退職手当を申請する場合の方法ですが、主に2つの段階を経て申請します。
- 所属先で必要な書類をもらう
- 書類を持参してハローワークで手続きをする
この2つの段階について解説を行います。
所属先で必要な書類をもらう
民間企業では離職票を受け取り、ハローワークに持参して失業保険の手続きを行います。
国家公務員の場合は「国家公務員退職票」、地方公務員も国家公務員退職票に準じた退職票が交付される形です。
この国家公務員退職票が離職票の代わりとなるので、あとはハローワークに持参することになります。
書類を持参してハローワークで手続きをする
国家公務員退職票をにらったら、ハローワークで手続きを行います。
この時、「退職手当受給資格証」などが交付されて、その後失業認定が受けられ、そこから先は一般的な失業手当を受け取る流れと変わりません。
一般的な失業保険と比較し、異なるのは離職票もしくは退職票の様式の違いぐらいで、ハローワークで行う手続きに大きな差はないと言えます。
公務員は失業保険と退職手当の差額をもらう方法
公務員の場合、退職手当がもらえますが、時に失業保険よりも少ないケースがあります。
この時、差額を埋めるために追加で支払われるのが「失業者の退職手当」です。
勤続年数が短い人に差額が発生しやすく、それを埋めるためのものとなります。
これからご紹介する流れは、公立学校の教員だった人が退職した場合です。
まずは差額をもらえるか確かめる
「失業者の退職手当」として差額を受け取れるかどうかは、以下の条件を1つでも満たすことが求められます。
ここでは東京都の公立学校で働く教員のケースをご紹介します。
- 臨時的任用教職員が退職後、就職できない
- 勤続期間がおおむね3年未満
- 懲戒免職などで退職手当が支給されない
東京都の場合、退職手当は「最終給料月額×支給率」をベースに調整額が加算される形です。
支給率は勤続年数と退職区分が大きく影響し、勤続期間1年だと支給率は0.9しかありませんが、勤続期間15年で15.0、20年で23.0、30年で38.0と明らかな差があります。
このため、勤続期間が3年未満で自己都合退職のような形だと差額が生じるのは致し方ないと言えるでしょう。
また東京都の場合は「教育庁福利厚生部給付貸付課退職手当担当」に連絡し、対象となるかを確認してから、以下の書類が郵送されます。
- 失業者の退職手当 追加給付に係る返答書
- 支払金口座振替依頼書
あとは通帳の写しなども追加で送ってもらった上で差額の申請を行っていきます。
教育委員会で差額の申請をする
公立学校の教員だった場合、所属先は各自治体の教育委員会となり、教育委員会に書類などを提出し、差額の申請を行います。
この時、退職前半年間ないし1年間の給与明細を提出しますが、これは「失業者の退職手当」の支給額の算出に、一般的な失業手当と同じ計算式を用いるためです。
そのため、賃金日額を算出するために一定期間の給与明細が必要となり、計算式に当てはめて支給れます。
ハローワークで手続きをする
差額の受給申請を行ったら、あとはハローワークで求職の申し込みを行い、求職申込証明書など教育委員会に提出する書類を受け取ります。
あとは書類などを再び教育委員会に送るなどして、差額が振り込まれる流れです。
公務員が失業保険の代わりにもらえる退職手当は延長できる?
失業者の退職手当などは原則として退職日から1年以内に申請しないと受け取れません。
しかし、失業保険の場合はケガなどを理由に時効を延長させてもらえるため、1年以内に申請しなくても大丈夫です。
これは公務員の場合も同じで、妊娠や出産、病気、ケガなど30日以上仕事ができない場合、期間の延長が行えます。
延長期間は3年なので、最長4年以内に申請をすれば受け取れますが、「長期間働けないと判明した翌日から1か月以内」に申請をしないと認められないので要注意です。
期間雇用の公務員は失業保険をもらえる可能性がある
公務員にも正規雇用、非正規雇用があり、期間限定で公務員として雇用される「期間雇用」のケースがあります。
期間雇用の場合、たとえ身分が公務員であったとしても雇用保険に加入できます。
正規雇用の公務員は人員整理でリストラされるケース、所属先が倒産するケースが想定されていないため、雇用保険法の対象外ですが、期間雇用の場合は人員整理もしやすく、雇用保険の対象です。
結果的に期間雇用の公務員は失業保険がもらえる可能性がありますが、対象外のケースもあります。
それは期間雇用の期間が半年以上になってしまう場合で、半年以上となると正規雇用の公務員と同じ扱いになり、対象外です。
勤続期間が半年未満にとどまる期間雇用の公務員であれば失業保険の対象となります。
まとめ
今回は公務員も失業保険がもらえるのかについて解説しました。
最後に今回の内容を改めて振り返ります。
- 公務員は失業保険をもらえないが、退職手当がもらえる
- 退職手当だけだと失業保険に満たない場合は失業者の退職手当が追加支給される
- 失業者の退職手当がもらえるのは勤続期間3年未満など
- 申請期間は退職後1年以内だが、病気などの理由があれば退職後4年以内に延長
- 勤務期間半年未満の「期間雇用の公務員」は雇用保険に入れて失業保険がもらえる可能性がある
公務員は基本的に長く働けば働くほど、退職時の手当が多くもらえるため、民間企業とは大きな違いがあります。
しかし、すぐに退職した場合は別で、民間企業よりも手当が乏しいことも。
失業者の退職手当は勤続期間が短かった公務員を対象にした救済措置と言えます。
民間企業と違い、退職手当などの具体的な数値、システムは公表されているので、この機会に確認してみてはいかがでしょうか。