会社が傷病手当金の申請を嫌がるのはなぜ?理由と対処法を解説!

病気もしくはケガを発症して働けなくなった場合には傷病手当金を受け取ることができます。

しかし、会社に傷病手当金の申請をした際、会社側が対応を渋るケースがあるのです。

理由としては、制度の勘違いなどが多く、部下からの申請を面倒くさがるケースも見られます。

本記事では傷病手当金の申請をした際に会社が嫌がる場合の対処法を中心に解説していきます。

傷病手当金について

そもそも傷病手当金とはどういうものなのか、傷病手当金の概要や受給条件について解説していきます。

傷病手当金とは

傷病手当金は、病気もしくはケガをして休業を余儀なくされた場合、休業期間中の収入の一部を補償してくれる制度です。

休業する直前の給与の大部分が支給されるため、治療に専念することができます。

そして、一定額が当面確保され続けることで、お金を工面しなければならないという金銭的な不安を払しょくすることもできます。

ちなみに支給される金額はおおむね毎月の給与の3分の2程度です。

給与を丸々補填してくれるわけではありませんが、休業期間中のセーフティネットとしては十分に機能するでしょう。

ちなみに、休業中に傷病手当金を受け取り始めた場合、その後退職しても一定期間までは受け取り続けることができます。

また傷病手当金を受け取り続けている間は失業保険を受け取れません。

傷病手当金を受け取り終わってから失業保険を受け取れるように手続きが行えます。

傷病手当金の受給条件は?

傷病手当金の受給条件に関しては以下の条件をすべて満たす必要があります。

傷病手当金の受給条件
  • 業務外での病気もしくはケガによる休業である
  • 病気やケガのために仕事に就けない
  • 連続する3日間を含む4日以上仕事に就けない
  • 休業期間は給与が支払われない

傷病手当金はあくまでも業務外で生じた病気やケガが対象のため、業務内での病気やケガは対象外です。

ちなみに通勤中や業務内のケースは労災の対象となるため、労災保険の休業補償給付で受け取れることができます。

連続3日以上休んだ上で4日目以降から支給の対象となり、途中で出勤してしまうと再び3日間休み続けなければならないので注意が必要です。

例えば、インフルエンザで1週間休んだ場合でも4日目以降に関しては傷病手当金を手にできるので、積極的に活用するのも1つの手です。

ちなみに任意継続被保険者は傷病手当金の対象外となっており、利用することができません。

会社が傷病手当金を嫌がる理由は?

労働者にとってとても重要な傷病手当金ですが、なぜ会社が嫌がるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

会社が傷病手当金を嫌がる理由としては以下の3つが考えられます。

  • 傷病手当金の制度を勘違いしているケース
  • 上司が自分のことで精一杯なケース
  • 書き方が分からないケース

ここからはそれぞれのケースについて解説していきます。

傷病手当金の制度を勘違いしているケース

傷病手当金の原資は労働者が毎月支払っている健康保険料であり、会社側は1円も出す必要がありません。

しかし、「傷病手当金の一部を会社が負担しなければならないのではないか」などと勘違いし、傷病手当金の申請を嫌がるケースが考えられます。

会社としてはコストをできるだけ削減したいと考えており、傷病手当金の制度を勘違いしていると間違った対応をしがちです。

これまでに傷病手当金の申請をあまり受けてこなかった企業だと、どのように申請していいかわからず、そのためにどうにか断ろうとするケースもあるでしょう。

インフルエンザになった場合でも条件を満たせば傷病手当金がもらえる事実を今まで知らなかった人も少なくありません。

傷病手当金に関する勘違いが強いと、せっかくの申請にすぐに対応できないケースも考えられます。

傷病手当金は健康保険に加入する会社員全員が受け取ることができる給付金であり、会社の動向は本来関係なく、粛々と手続きを進める必要があります。

上司が自分のことで精一杯なケース

会社の人手が足りていない状態で、ただでさえ仕事がたくさんある時に傷病手当金などの事務作業が加わることを嫌がるケースも見られます。

例えば、上司自身が自分のことで精一杯で、傷病手当金の申請をしてきた部下に対して様々な嫌がらせをするケースもあるでしょう。

また上司がこれまでに傷病手当金を利用してこなかった場合だと、傷病手当金そのものへの偏見を持っていることもあります。

「傷病手当金を利用するなんて甘え」など部下のことを大切に扱わない上司がいると、部下の側からするとたまったものではありません。

当然、上司が精一杯なので傷病手当金を受け取れないなんてことはあり得ないので、この後ご紹介する相談先へ対応を一任するのも1つの手です。

実際には上司が処理をするのではなく、管理部門・人事部門が行う作業であり、上司が精一杯かどうかは特に関係ないと言えます。

書き方が分からないケース

これまでに傷病手当金の申請を受けてこなかったケースは、ベンチャー企業や中小企業などで見られます。

すると、傷病手当金の申請をどのようにすればいいのか、会社側が全く分からず、混乱を生じさせることがあります。

間違った書き方をしてしまい、何度も突き返されるケースもありますが、実際には記入例などもあり、全くわからなくてもある程度の対応は可能です。

書き方がわからないので、なるべく申請を受けないようにするというのはあまりにも後ろ向きであり、従業員を想う姿勢とは言えないでしょう。

会社に傷病手当金の申請を嫌がられた場合の対処方法は?

会社に傷病手当金の申請を嫌がられてしまった場合には3つの相談先に対処をお願いするのがおすすめです。

  • 社労士に相談
  • 健保組合に相談
  • 弁護士に相談

ここからはそれぞれの相談先について解説していきます。

社労士に相談

社労士は社会保険労務士の略称であり、労働系・社会保険系に精通したプロとして活動するほか、国家資格でもあります。

企業の多くは社労士と連携しているため、社労士に相談するのが確実です。

社労士は当然傷病手当金の申請にも精通しており、どのように申請をすればいいかも理解しています。

社労士に相談をした場合には社労士からのアドバイスを参考に会社側に説明することになります。

その際に、相談した社労士の名前を出して対応を迫ると、申請に向けて動き始めることになるでしょう。

健保組合に相談

傷病手当金は健康保険に加入する人全員が利用できるため、加入している健康保険組合への相談が確実です。

健保組合は加入する会社に対し、文書の提出を促すことができます。

ですので、傷病手当金の申請がなかなか進まない場合には、健保組合に働きかけを求め、健保組合から会社に促してもらうのがいいでしょう。

健保組合のホームページなどでは傷病手当金に関する説明も詳しく載っており、事前にチェックすることをおすすめします。

弁護士に相談

傷病手当金のケースだけでなく、それ以外のことでも会社側と色々トラブルを抱えている場合には弁護士への相談も視野に入れましょう。

弁護士に相談をすれば、傷病手当金の申請をなぜ断ろうとするのかなどの交渉を行ってくれます。

また、この機会に残業代の未払いなどの不満があればそれをぶつけることで一挙解決することもあるでしょう。

法律の知識がある弁護士に相談を行うことで、法律の観点から解決の糸口を見出してくれるのでおすすめです。

まとめ

今回は、会社はなぜ傷病手当金の申請を嫌がるのかという話題を中心に解説してきました。

最後に今回ご紹介した内容を振り返ります。

  • 傷病手当金は業務外で病気やケガをして働けなくなった人に支給される給付金
  • 傷病手当金はインフルエンザなどでももらえる
  • 会社が傷病手当金を嫌がるのは、制度の勘違いなどが考えられる
  • 会社が申請を嫌がった場合には社労士や健保組合、弁護士に相談する

傷病手当金は休業中のセーフティネットになるため、ケガや病気になった時点で申請を行うことが求められます。

多くの企業では傷病手当金の申請を嫌がることなく粛々と手続きを行ってくれるでしょう。

万が一嫌がられた場合には社労士や弁護士への相談を行い、速やかに作業を行うよう促してもらうのが大切です。