失業保険は、退職した人が次の就職が決まるまでの期間、一定額の手当を支給し、経済的な負担を軽減させる目的で作られた制度です。
障害者の場合って失業保険はどうなっているんだろ~?
障害者の場合は、雇用保険に加入していれば「就職困難者」として、一定額の手当を受け取れます。そして、一般の求職者よりも要件が優遇されていて、給付期間が長くなるのです。
この記事では障害者が失業保険を活用する際の手続き方法や、必要な書類、受給期間などを解説していきます。
記事を参考にしていただき、かしこく失業保険を活用してください。
障害者がもらえる失業保険とは?
障害者は一般の失業者とは異なり、「就職困難者」に分類されます。
一般受給者と就職困難者では受給条件や日数に違いがあるのです。
失業保険の申請時には、まず自身が「就職困難者」に該当しているのか事前に確認しておきましょう。
「就職困難者」に該当する人は次のとおりです。
- 身体障害者(身体障害手帳所持者)(身体障害者手帳を持っている人)
- 知的障害者(療育手帳所持者)(療育手帳を持っている人)
- 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳所持者※)
※てんかん、双極性障害、統合失調症などの病状を抱える人は、「就職困難者」としての手続きが可能です。ただし、医師の診断書が必要になるのでご注意ください。
障害者がもらえる失業保険の特徴は?
ここからは、障害者がもらえる失業保険の「期間」や「条件」について解説していきます。
失業保険をもらえる期間
一般の求職者の場合は、年齢や雇用保険の被保険者期間で細かく受給期間が分かれていて、受給期間は90日から330日までとなります。
一方の障害者は150日から360日と、一般の求職者よりも受給期間に優遇処置が設けられています。
詳しい説明は以下のとおりです。
- 被保険者期間が1年未満:150日
- 被保険者期間が1年以上で45歳未満:300日
- 被保険者期間が1年以上で45歳以上:360日
失業保険をもらえる条件
次に障害者が失業保険をもらうための条件を解説します。障害者は一般の受給者より受給要件が緩和されています。
- 離職前の1年間で被保険者期間が通算6ヶ月以上
- 失業中に労働の意思や能力がある
条件の1つ目は、離職前の1年間で被保険者期間が通算6ヶ月以上であることです。
過去1年間で6ヶ月以上雇用保険に加入している人であれば失業保険はもらえます。
また、雇用形態は問わず、正社員だけでなく契約社員やアルバイトなどの非正規雇用者も、雇用保険への加入があれば失業保険の対象です。
条件の2つ目は、失業中に労働の意思や能力があることです。
失業保険を受け取るためには、失業中に労働の意思と能力があることを証明しなければなりません。証明する方法とは、ハローワークで求職活動をすることです。
そのため、病気などで治療に専念している人はハローワークで求職活動ができないため、失業保険の対象とはなりません。その場合は傷病手当が適用されるので、そちらに向けて申請を行いましょう。
障害者が退職した際の失業保険申請の流れ
ここからは、失業保険申請の流れの解説です。以下の手順で失業保険の申請を行います。
会社から必要な書類を受け取る
失業保険を申請するには離職票が必要となります。
離職票は、退職の事実や理由、給与の額などを証明する書類であり、この書類がなければ失業保険の手続きはできません。
離職票の発行は、会社が離職証明書を作成しハローワークに提出します。次に、ハローワークから会社に離職票が交付され、会社から退職者に離職票が渡されます。
ハローワークで失業保険の手続きを行う
会社から離職票が届いたら、次はハローワークでの手続きです。
まず、ハローワークで求職の申込みを行った後に離職票を提出します。
ハローワークが受給要件を満たしているかを確認し、受給資格の決定を行います。
受給資格が決定すれば、7日間の待期期間に移行しますが、この待期期間の間にアルバイトなどで一定以上の労働をしてしまうと、就職したとみなされて失業保険を受け取れなくなる可能性が生じてしまうため注意してください。
求職活動を行う
7日間の待期期間を過ぎると、失業保険(雇用保険)受給者説明会への参加が必要です。
この説明会に出席すると、次回以降の失業保険申請に必要となる「失業認定申告書」と「雇用保険受給資格者証」が交付されます。
また、失業の認定を受けようとする期間中に、原則として2回以上の求職活動が必要となります。
ハローワークが認めている求職活動は次のとおりです。
- 求人への応募
- ハローワークが開催する職業相談・職業紹介・各種セミナーの受講など
- 許可・届け出のある、民間事業者が開催する職業相談・職業紹介・各種セミナーの受講など
- 公的機関が開催する職業相談・職業紹介・各種セミナーの受講など
- 再就職に役立つ国家試験や検定等の受験
国家試験や検定等の受験も求職活動として認められます。この機会に資格取得などに積極的に取り組んでみてもいいかもしれません。
障害者の失業保険の金額を計算する方法
実際にいくら失業保険を受け取れるか気になる人も多いでしょう。ここからは失業保険の金額の計算式と計算例を見ていきましょう。
失業保険の金額の計算式
失業保険の金額の計算式は次のとおりです。
失業保険の金額=賃金日額×給付率(50~80%)
「賃金日額」
賃金日額は過去6ヶ月間の給与総額を180日で割って算出します。
例えば、過去6ヶ月間の給与総額が180万円の人は180万円÷180日で、賃金日額は10,000円となります。
「給付率」
給付率は図表1のように、賃金日額や年齢によって異なります。
60歳未満の人は50〜80%、60〜64歳の人は45〜80%が適用されます。
例えば、40歳で基本手当日額が5,000円の人が適用される給付率は50%です。
失業保険の金額の計算例
実際にモデルケースを交えて計算してみましょう。
【モデルケース】
Aさん
年齢:45歳
直近6ヶ月間の毎月の賃金:500,000円
上記の条件で計算していきます。
賃金日額:(500,000円 × 6ヶ月分) ÷ 180 = 約16,700円
基本手当日額:16,700円×50%※=8,350円
※支給率は45歳から59歳までの場合、賃金日額16,700円の50%が適用。
基本手当日額が8,350円であれば、1ヶ月30日とした場合に約250,000円の失業保険を受け取れる計算です。
障害者の失業保険と関連した手当
失業保険以外にも、次のような手当も受給できます。
障害者は障害年金と失業保険を同時にもらえる
失業保険は、退職した人が次の就職が決まるまでの間、一定額の手当を支給する制度と解説しました。
障害者の場合、失業保険とは別に一定の要件を満たせば「障害年金」を受け取れます。障害年金は年金制度の1つですが、「障害年金」と「失業保険」は同時に受け取れるのです。
障害年金は、次の要件3つをすべて満たす必要があります。
- 厚生年金の保険者で障害の原因となった病気や怪我の初診日がある
- 障害認定日に障害等級表に定める1級~3級に当てはまる
- 初診日の前々月までの被保険者期間で国民年金の納付期間が3分の2以上である
これらの要件を満たせば、「失業保険」と「障害年金」を同時に受け取れるため、次の就職までの経済的な負担を大幅に軽減できるでしょう。
早期に就職すれば再就職手当を受け取れる
基本手当の残日数が3分の1以上ある人が、雇用保険の対象となる仕事に再就職した場合は「再就職手当」を受け取れます。
再就職手当は、「就業促進給付」として雇用保険から支援される制度の1つで、求職者に対して早期の就職を奨励するものです。
給付率は残日数が3分の2以上の場合、残りの予定されていた支給額の7割、3分の1以上なら6割を再就職後に受け取れます。
まとめ
いかがでしたか?
今回のポイントは
- 障害者は「就職困難者」に分類される
- 一般の求職者よりも、失業保険の受給期間やもらえる条件が優遇されている
- 失業保険の申請は、以前の職場から離職票を発行してもらう必要がある
- 失業保険と障害年金が同時に受け取れる
- 待期期間が終了したら求職活動を行い、認められると後日失業保険が振り込まれる
失業保険と障害年金はそれぞれ独立した制度ですが、障害者は同時に受け取れるため、経済的な負担を大きく軽減できます。
これらの制度を上手く活用して、理想とする再就職先を見つけてください。