雇用保険は労働者の生活や雇用の安定を目的にした保険です。
失業した時、再就職した時、育児に入った時など、状況に応じた手当で労働者の生活を守っています。
「雇用保険にはどんな給付金があるんだろう?」「給付金はいくらもらえるんだろう?」と疑問に思っていませんか?
雇用保険は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付といった目的別の手当が多数あり、条件や給付額が定められています。
今回は雇用保険の加入者が、ハローワークでもらえる9つの給付金を、雇用保険の相談を多数受けている私がご紹介していきます。
本記事を読むことで、手当の種類や給付金の目安がわかり、雇用保険に対する理解が深まりますよ。
雇用保険とは
加入条件を満たしていると強制的に加入が必要となる保険で、労働者の生活や雇用の安定のため、離職者、教育訓練受講者の就職促進のために失業給付金などを支給します。
雇用状態の是正や雇用機会の増大だけでなく、雇用される人の能力の向上や福祉の増進を図るための活動も行っています。
雇用保険は基本的には事業主が手続きをして加入することになっています。
そのため、加入条件は満たしているが加入しているか分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった方のために加入できているかの確認方法をご紹介します。
まず原則として、雇用保険へ加入するとハローワークから事業主へ「雇用保険被保険者証」が交付されるのですが、こちらは最終的に加入者本人(被保険者)が手にできるものです。
これから紹介する確認方法は事業主に依頼したが被保険者証が交付されない場合や、事業主への依頼が困難な場合、被保険者証への記載が事実と異なる場合の方法としてご覧ください。
被保険者証が交付されない場合などの対処法
問い合わせ先:被保険者が居住する管轄のハローワーク
手続き方法:本人もしくは代理人の来所、簡易書留での郵送のどちらか
(トラブル防止のためお電話での照会は不可となっております)
必要書類など:
①雇用保険被保険者資格取得届出確認照会表(氏名、生年月日、性別の記入があれば確認可能)
②本人・住所確認書類(下記の原本または写し)
運転免許証、マイナンバーカード、国民健康保険被保険者証、雇用保険被保険者証、観光所から発行・発給された資格などの証明書、雇用保険受給資格者証、出稼労働者手帳、住民票の写し、印鑑証明書 ※郵送の場合は写し、原本で提出する場合は住民票の写しまたは印鑑証明に限る。
③委任状(代理人での手続きの場合)
照会結果は「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会回答書」というものでもらえますが、郵送の場合1週間ほど時間がかかりますのですぐに知りたい方は窓口での手続きをおすすめします。
求職者給付
離職、失業状態にある場合に生活の安定を図り、求職者活動に集中できる環境を整えるために支給されるものです。
ここでは「基本手当」と「傷病手当」についてお話しします。
基本手当
失業手当の呼び名の方が親しみがある方が多いかもしれません。
離職後、就労の意思や能力はあるが職業に就くことができない状態にある場合に給付を受けることができるものです。
離職日以前の2年間に被保険者期間が通算12か月以上あることなど、受給認定を受けるためにも条件があり、もらえる日数や金額もそれぞれ異なりますので詳しくは失業保険の手続き方法まとめの記事を確認ください。

傷病手当
離職後、求職申し込みをしたのちに傷病を理由に15日以上就労できない状態となった場合、基本手当日額に相当する額が傷病手当として所定給付日数の範囲内で支給されます。
また、在職中の傷病手当に関しては雇用保険ではなく、社会保険(健康保険)から支給されるものなので雇用保険の傷病手当とは異なります。
就職促進給付
細かく分けると就業手当、再就職手当、就業促進定着手当、常用就職支度手当、移転費、広域求職活動費、短期訓練受講費、求職活動関連役務利用費の8つの項目に分かれます。
ここでは「再就職手当」「就業促進定着手当」「広域求職活動費」についてお話します。
再就職手当
受給資格者が、失業手当の所定給付日数の3分の1以上を残し安定した職業に就いた場合、一定の要件に基づき支給されます。
安定した職業とは「1年を超えて引き続き雇用されることが確実と認められること」と定義されています。(厚生労働省のページ参照)
金額ですが、下記の計算によって算出された金額が一時金として支給されます。
パターン① 支給残日数が総日数の3分の1以上、3分の2未満
基本手当日額(上限あり)×所定給付日数の支給残日数×60%
パターン② 支給残日数が総日数の3分の2以上
基本手当日額(上限あり)×所定給付日数の支給残日数×70%

就業促進定着手当
再就職手当の支給を受けた方で、再就職手当の支給に係る再就職先に6か月以 上雇用され、再就職先での6か月の賃金が、離職前の賃金よりも低い場合に、基 本手当の支給残日数の 40%(再就職手当の給付率が 70%の場合は、30%)を上 限として、低下した賃金の6か月分が支給されます。
再就職手当の支給を受けた方が対象です。
再就職手当支給の際に就職した就労先で6か月以上雇用され、その期間の賃金が離職前の賃金よりも低い場合に支給されます。
支給される金額の内訳は、基本手当(失業手当)の支給残日数の40%(再就職手当の給付パターンが②の場合は30%)を上限として低下した賃金の6か月分となっています。
広域求職活動費
雇用保険の受給資格者が、ハローワークの紹介により遠隔地にある事業所にて面接などをした場合に支給されます。
対象となる費用は、「鉄道費」「船賃」「航空費」「車賃」「宿泊料」となっており、条件は以下の6つです。
【支給条件】
①雇用保険の受給者であること
(求職活動開始時点で受給資格者でなくとも、指示を受ける時点で資格者であれば対象)
②ハローワークに照会された求人が
照会したハローワークの管轄区域外に所在する事業所のもので
雇用期間の定めがないか4か月以上の雇用期間が定められている求人であること
(季節労働を除く)
③雇用保険の受給手続きを行っているハローワークと
訪問する求人事業所の所在地を管轄するハローワークの距離(往復)が
交通費計算の基礎となる鉄道などの距離で200km以上あること
④雇用保険の待機期間経過後に開始した広域求職活動であること
⑤広域求職活動に関する費用が訪問先の事業所から支給されていないか
事業所から支給された場合はその支給額が広域求職活動費の額に満たないこと
⑥職業紹介の拒否などで給付制限を受けた場合は
その制限期間が経過した後に開始した広域求職活動であること
教育訓練給付
教育訓練給付には「教育訓練給付金」と「教育訓練支援給付金」の2種類があります。
今回は教育訓練給付金についてお話します。
一般教育訓練給付金、専門教育訓練給付金に分けてひとつずつご説明します。
一般教育訓練給付金
厚生労働大臣が指定する一般教育訓練を受講し終了した場合に、教育訓練施設に支払った受講料などの20%(上下10万円)が支給されます。
対象となるのは、一定の要件を満たす雇用保険の被保険者(高年齢被保険者含む)であった方が離職された場合です。
ただし、受講料などの20%が4,000円を超えない場合は支給されない、費用を事業主などから手当として受け取っている場合は差し引かれた額が支給されるなど、細かい取り決めもありますのでご注意ください。
専門教育訓練給付金
特に中長期的キャリア形成に役立てる教育訓練が対象で、厚生労働大臣が指定する専門実践教育訓練を受講している場合に、教育訓練施設に支払った受講料などの一定の割合に相当する額が支給されます。
こちらは一般教育訓練給付と異なり、専門実践教育訓練受講承認の証明が必要となります。
では、支給内容と専門実践教育訓練受講承認の証明のながれについてご説明します。
【支給内容】
・年間上限を40万円とし、受講費用の50%(訓練受講中6か月ごと)
・受講により資格取得などをし、訓練終了後1年以内に
雇用保険の被保険者として雇用された場合は追加で受講費用の20%(年間上限16万円)
・受講開始時点で45歳未満であるなど
失業状態にある方が初めて専門実践教育訓練(通信制、や感性を除く)を受講する場合に
一定の要件を満たすと教育訓練支援給付金が別途支給される
【専門実践教育訓練受講承認の証明の流れ】
・厚生労働大臣が定めるキャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングを受け
ジョブカードを提出
・原則、受講開始1か月前までに受給資格確認手続きが必要
・在職中の被保険者の方で事業主による受講することを承認を受けた場合
厚生労働省指定の証明書の提出で対応可能
雇用継続給付
高年齢雇用継続給付と介護休業給付があります。
かつては育児休業給付も含まれていましたが、2020年(令和2年)に改正され失業等給付からは独立した位置付けになっています。
ですが、この項目では育児休業給付も含めご説明します。
育児休業給付
出産に関する「出生時育児休業給付金」と育児に関する「育児休業給付金」があります。
それぞれの支給条件は下記のようになっています。
【出生時育児休業給付金】
子の出生後8週間の内、合計4週間分(28日分)を限度とし
産後パパ育休を取得した際に一定の要件を満たしていること
【育児休業給付金】
原則1歳未満の子のの育てのために育児休業を取得し、一定の要件を満たす場合
育児休業給付金に関しては、現在は子が2歳になる前日まで延長が可能となっています。
延長するには保育園へ入園できないなどの理由が必要ですが、1歳6か月、2歳になるそれぞれの前日までに育児休業の延長手続きを行い承認されると給付金の給付期間も延長されます。
また、産後パパ育休、育児休業ともに2回まで分割で取得が可能となっています。

高年齢雇用継続基本給付金の受給資格
高年齢雇用継続基本給付として、2つの給付金があります。
この項目では再就職手当を含む基本手当を受給していない方が対象の【高年齢雇用継続基本給付金】、基本手当を受給し再就職した方が対象の【高年齢再就職給付金】の受給資格についてご説明します。
【高年齢雇用継続基本給付金】
・みなし賃金を含む60歳以降の賃金が、60歳時点の賃金と比較して75%未満となっている
・60歳以上65歳未満の一般被保険者である
・被保険者であった期間が5年以上
【高年齢再就職給付金】
・再就職後の各月の賃金が、基本手当の基準となった賃金日額を30倍した額の75%未満
・60歳以上65歳未満の一般被保険者である
・基本手当についての算定基礎期間が5年以上
・再就職した日の前日時点で基本手当の支給残日数が100日以上ある
・1年以上雇用されることが確実であると認められる安定した職業への就職
・同一の就職について再就職手当を受給していないこと
まとめ
計9つの給付についてご説明しましたがいかがでしたでしょうか。
雇用保険はどのように雇用されている人を守っているのか、実際に給付を受ける立場にならないと分かりにくいかと思います。
ですが、離職、スキルアップ、定年後など多くの方が経験する節目にサポートをしてくれる制度ですので、対象となるのか、手続きと自分に支給される金額を試算して利用するかしないか、考えるきっかけになれば幸いです。