再就職手当は「早く働き始めた人ほど得をする制度」と思われがちです。
実は人によってはもらわない方がいいケースもあります。
再就職手当には支給条件があり、条件を知らずに申請すると、思わぬ損をすることもあるのです。
本記事では、再就職手当のメリット・デメリット、そして注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 再就職手当をもらう・もらわないそれぞれのメリット・デメリット
- 再就職手当をもらった方がいい・もらわない方がいいそれぞれのケース
- 再就職手当を受け取る条件
- 再就職手当の申請方法・注意点
再就職手当をもらわないメリット
再就職手当をもらわない最大のメリットは、「焦らずに再就職活動を進められる」点です。
再就職手当は、早めに再就職した人ほど多く受け取れる仕組みです。
金銭面を意識しすぎて。合わない職場に飛びついてしまうケースも少なくありません。
その結果、短期間で再び辞めてしてしまえば、収入もキャリアも安定しません。
再就職手当に関しては、あえて次の離職の時に再就職手当をもらうという選択も可能です。
手当を受け取らない選択をすれば、自分に合った仕事をじっくり見極められます。
再就職までの準備期間を長く取れることで、スキルアップや資格取得に時間を使うことも可能です。
長期的に見れば、安定して働ける職場を選ぶほうが結果的に得になる場合もあります。
また万全の準備が整った時に再就職手当の受給を目指せばいいというのもメリットになり得ます。

再就職手当をもらうメリット
再就職手当をもらうメリットは経済的に安定する点です。
再就職手当は基本的に非課税であり、新たな職場で給料を得た上で再就職手当を受け取れます。
手当があることで「失業期間を短くして早く再就職する」という明確な目標を持ちやすいのもメリットです。
モチベーションを保ちながら転職活動に取り組めます。
空白期間を最小限に抑えつつ、次のキャリアへのスムーズな移行が可能です。
再就職手当はもらわない方がいいケース
再就職手当は、早めに再就職できた人への支給が基本ですが、もらった方がいいとは限りません。
短期間で再離職する可能性がある人や、じっくり転職先を選びたい人など、もらわない方がプラスになる人もいます。
- 短期間で再離職を予定している場合
- じっくり転職先を決めたい場合
- 失業保険の給付日数の残りが少ない場合
本項目では、再就職手当は受け取らない方がいいケースについてまとめました。
短期間で再離職を予定している場合
短期間で再離職を予定している場合、再就職手当の受給は控えるのがおすすめです。
再就職手当は受給後、失業保険の日数がすべて消化されます。
再度離職してもすぐには失業保険を受け取れません。
再度失業保険を受け取るには、自己都合による退職であれば退職前2年間で1年以上の雇用保険加入歴が必要です。
また再就職手当の受給条件として、直近3年で再就職手当などを受け取っていないことが挙げられています。
短期間で再度離職した場合、再び活用するには最低でも3年間は待たなければなりません。
短期間で再離職の可能性がある場合には安易に再就職手当を受け取らない方が妥当と言えます。
じっくり転職先を決めたい場合
再就職手当を受け取るために焦って転職先を決めると、希望通りの職場に就けない場合があります。
希望通りの職場ではないため、すぐに離職しようとすれば、失業保険を利用できず、無収入の期間が出てきます。
失業保険の給付日数を活かして、じっくり転職先を探す方が理想的です。
特に40代・50代では、再就職手当の条件を満たす職場をすぐに見つけるのは大変です。
そこで退職前から転職エージェントなどを活用し準備しておくことが重要です。
準備不足のまま無理に再就職手当を狙うより、慎重に探すことをおすすめします。
失業保険の給付日数の残りが少ない場合
再就職手当を受け取るには、失業保険の支給残日数が一定以上必要です。
少なくとも支給残日数が3分の1以上残っていないと、再就職手当を受け取れる条件を満たしません。
残日数が少ない場合は無理に再就職手当を狙っても短期離職につながりやすくなります。
失業保険を全消化できるタイミングで転職先を決める方が得策です。
元々再就職手当で受け取れる金額は、失業保険の給付日数を全消化してもらえる金額よりも少なくなりやすいのが実情です。
また無理に再就職先を見つけた結果、待遇が芳しくなく前の会社よりも給料が低くなるケースもあります。
支給残日数を確認し、計画的に再就職を進めましょう。

再就職手当はもらった方がいいケース
再就職手当はもらわない方がいい」という意見もありますが、状況によっては受給した方が得になるケースもあります。
特に早期に再就職が決まった人や、生活の安定を重視したい人には大きなメリットがあります。
- 再就職が早期に決まった場合
- 経済的な安心感が欲しい場合
- 失業手当よりも多く受け取れる場合
本項目では、再就職手当をもらった方がいいケースについて、解説します。
再就職が早期に決まった場合
再就職が早々に決まった場合には、再就職手当をもらった方がお得です。
元々再就職手当は早期に再就職をした人に対するご褒美的なものです。
早く再就職が決まると失業保険の給付日数が多く残ってしまいます。
一見すると損をする印象を受けますが、再就職手当があれば損とはなりません。
再就職手当を受け取ることになれば、再就職先で受け取る給料とセットでもらえます。
いわばちょっとしたボーナスです。
理想的な企業を見つけて早めに再就職を果たした場合には、再就職手当をもらうのがおすすめです。
経済的な安心感が欲しい場合
再就職手当はまとまった金額を一括でもらえるため、経済的な安心感を得たい人に最適です。
再就職手当は申請を行ってからおおむね1か月前後で受け取れるため、引越しなどの諸経費がかかった場合も安心です。
再就職手当は受け取ってすぐに離職しても、再就職手当の返還義務はありません。
雇用保険の被保険者期間が長く、年齢をある程度重ねた方であれば給付日数が増えます。
給付日数が増えれば増えるほど、再就職手当も増えます。
経済的な安心感を十分に得た状態でリスタートを切りやすくなるでしょう。
特に40〜50代で家族を養う人にとっては、できる限り貯金を切り崩さず生活を安定させる有効な手段となり得ます。
失業手当よりも多く受け取れる場合
再就職手当は、再就職先の給与と合わせると失業手当よりも多くなるケースがあります。
早期に就職すれば、給料を得ながら再就職手当も受け取れるため、実質的な収入が増えるのです。
再就職先の給料と再就職手当の合計額が失業保険の総受給額を上回る場合には、再就職手当を受け取った方がお得です。
再就職のタイミングによって金額が変わります。
「失業手当を全期間もらう場合」と「早期再就職+手当を受け取る場合」の総額を比較しましょう。
再就職手当の受給を決めるポイント
再就職手当を受け取るか、それとも失業保険を満額もらうか、どちらが自分に有利なのか迷う人は多いでしょう。
以下の2つの視点から受給すべきかどうかを判断していきます。
- 自分のキャリアプランを考慮
- 再就職先の雇用条件を確認
本項目では、再就職手当をもらうべきかどうかを決める2つのポイントを解説します。
自分のキャリアプランを考慮
まず、自分のキャリアプランを考慮してみるのがおすすめです。
再就職手当を受け取ると、受け取り後3年間は再就職手当を再度受給できません。
以下のケースに該当する場合は要注意です。
- すぐに辞める可能性がある場合
- 再就職先の理想が高い場合
- 転職を重ねていく中でステップアップを図りたい場合
上記に該当する場合、無理に再就職手当を受け取る必要はありません。
失業保険の給付日数を全消化した上で悩みに悩んで再就職先を決めた方が、失業保険を丸々活用できて、理想的な職場を見つけやすくなります。
できるだけ長期的なビジョンを持った状態で再就職先を探すのが大切であり、再就職手当ありきで動くのは避けましょう。
再就職先の雇用条件を確認
再就職先の雇用条件を確認しておくのも大事な要素です。
たとえば、1年単位で契約が終わる可能性がある場合には、再就職手当を受け取っても1年後に離職する可能性があります。
反対に前の職場よりも給料がいい場合、再就職先の給料が適用された時に再就職手当を得た方が支給額は増えます。
どのタイミングで再就職手当の権利を行使した方がお得なのかを考えておくのも1つの判断材料です。
再就職先の雇用条件などを十分見極めて、できる限りベストな条件で利用していくのがおすすめです。
再就職手当とは?
何のために再就職手当が存在するのか、気になる方もいるのではないでしょうか。
そもそも再就職手当は、再就職手当の受給要件を満たした人が就職をしたときにもらえる手当です。
本項目では再就職手当とは何かについて、目的や失業保険の違いを解説します。
再就職手当の目的
再就職手当が導入された目的は、失業者がなるべく早く再就職をするように促すためです。
そもそも再就職手当は雇用保険の中にある「就職促進給付」の一種です。
就職促進給付は文字通り就職を促進させるためにあるものであり、再就職手当の他には就業促進定着手当や就業手当などがあります。
早めに就職すればするほど、受け取れる手当が増える仕組みになっています。
いわば早期の再就職を果たした人へのお祝い金的なものです。
再就職手当と失業保険の違い
再就職手当と失業保険の違いは、支給目的の違いにあります。
再就職手当は再就職を促す手当ですが、失業保険は失業中であっても最低限の生活を送れるようにするための手当です。
一方で、受け取るまでの道のりは大きく異なります。
圧倒的に失業保険の方が簡単で就職の意思さえあれば誰でも受け取れます。
再就職手当は再就職が大前提のため、受け取れない人も少なくありません。
再就職手当を受け取るための条件
再就職手当を受け取りたいけれど、「どんな条件を満たせばもらえるの?」と疑問に思う人も多いでしょう。
再就職手当を受給するためには8つの条件をすべて満たさなければなりません。
本項目では、再就職手当を受け取るための条件をまとめました。
再就職手当を受給するための条件
再就職手当を受給するためには8つの条件をすべて満たす必要があります。
- 待期期間7日間が過ぎてから就職などを行う
- 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上
- 離職前の企業と全く関係のない企業へ就職する
- 給付制限がある場合、待期期間満了後1カ月以内はハローワークなどの紹介によって就職する
- 雇用期間が1年以上であることが確実
- 雇用保険の被保険者である
- 過去3年以内で再就職手当などを受け取っていない
- 求職申し込み前から採用が内定していない企業へ就職する
再就職手当を受給するための条件についてすべての条件が厳しいわけではありません。
支給残日数などに一定のハードルが課せられています。
再就職手当は1年以内に離職しても返還義務はないなど、柔軟な面もあります。
要は、再就職時点で1年以上の雇用見込みがあることが重要です。
再就職手当が受給対象外となるケース
再就職手当は魅力的な制度ですが、すべての人が対象になるわけではありません。
以下に該当するケースは受給対象外です。
- 支給残日数が残りわずかである
- 過去3年の間に再就職手当を受け取ったことがある
- 雇用期間が1年に満たない場合
再就職手当の受給条件を1つでもクリアしていないケースは基本的に受給対象外です。
支給残日数が微妙な場合には、無理に再就職手当をもらわず、失業保険を丸々受け取るのがおすすめです。
再就職手当の申請方法
「再就職手当を申請したいけれど、どんな書類が必要で手続きはどうすればいいの?」と感じる方もいるでしょう。
本項目では、申請の流れと必要書類を整理し、確実に受給するための手順を解説します。
必要書類
再就職手当を申請する際に必要な書類は以下の通りです。
- 再就職手当支給申請書
- 採用証明書
- 雇用保険受給資格者証
- 失業認定申告書
- 勤務実績の証明書類
- マイナンバーカードや免許証などの本人確認書類
- 口座振込依頼書
再就職手当支給申請書はハローワークで入手できます。
自分で記入する項目と再就職先に記入してもらう項目があり、さらに採用証明書も必要です。
これらの書類を揃え、速やかに申請手続きを進めましょう。
申請方法
再就職手当の申請手続きに関しては、以下の流れで行っていきます。
- 再就職先で採用証明書を書いてもらう
- ハローワークに採用証明書を出して、再就職手当支給申請書を受け取る
- 再就職先で再就職手当支給申請書の項目を記入してもらう
- 再就職手当支給申請書や雇用保険受給資格者証などをハローワークに提出する
- 審査ののちに、支給が決定して振り込まれる
手続きが始まり支給の決定がなされるまで、およそ1か月程度かかります。
また、再就職手当の申請期限は、再就職を果たした日の翌日から1カ月と短めです。
再就職手当がもらえる条件を満たしている場合には速やかな行動が求められます。
再就職手当をもらう場合の注意点
再就職手当をもらう前に、「自分は受給条件を満たしているか?」という疑問を持つ人も多いはずです。
再就職手当をもらうと決めた場合には、再就職手当の申請を行う前に色々な確認が必要です。
- ハローワークに申請後、支給されるまでに1ヵ月以上が必要
- 7日間の待機期間に再就職すると支給対象外になる
- 過去3年以内に再就職手当を受け取っている場合は支給対象外になる
本項目では、再就職手当をもらう場合に注意しておきたいポイントをまとめました。
ハローワークに申請後、支給されるまでに1ヵ月以上が必要
再就職手当が支給されるのは、ハローワークに申請してからおおむね1ヶ月前後、場合によっては2か月程度先です。
申請に至るまでには再就職先で記入欄を埋めてもらってからハローワークに申請を行うといった作業も含まれます。
再就職が決まってから申請に至るまでに一定の時間がかかるうえ、さらに審査に時間を要します。
ハローワークが忙しい時期だと審査に時間がかかりやすく、2か月以上かかることもあり得ます。
もしも再就職手当をアテにしてさまざまな出費などを検討している場合には、支給までのタイムラグに注意が必要です。
7日間の待期期間に再就職すると支給対象外になる
再就職手当を受け取るには、7日間の待期期間満了が必須です。
退職後早々に再就職先を決めたとしても再就職手当の対象外となります。
せっかく早めに再就職を決めても、待期期間が終わる前であれば1円も受け取れません。
また退職した時点で転職先が決まっているケースも対象外となるため、たとえ目星をつけていたとしても、早すぎる再就職には注意が必要です。
目安となるのが、給付率70%で再就職手当を受け取れるタイミングです。
支給残日数が給付日数の3分の2以上残っていれば給付率70%で受け取れるルールです。
給付日数が90日の場合、待期期間満了後30日以内に再就職をすれば、給付率70%で再就職手当を得られます。
給付率70%で受け取れる日数を頭に入れて動き始めるのがおすすめです。
過去3年以内に再就職手当を受け取っている場合は支給対象外になる
過去3年以内に再就職手当を受け取っている場合には、再度再就職手当を受け取ろうとしても、支給対象外です。
再就職手当の受給条件の中に、「過去3年以内で再就職手当などを受け取っていない」という文言が入っています。
こうした条件は、短期間で何回も再就職手当を受け取ろうとする行為や不正受給を防ぐために存在します。
再就職手当を受け取ったら今後3年間は再就職手当を受け取れないため、慎重に検討しなければなりません。
再就職手当をもらわない方がいい?でよくある質問
再就職手当をもらうべきかどうかを悩んでいる方の多くが想定する疑問や質問が存在します。
本項目では、再就職手当をもらわない方がいいのかを悩む上でよく出てくる質問をまとめました。
- Q:再就職手当をもらうと年金はどうなる?
- Q:再就職手当の受給審査に落ちる理由は?
- Q:再就職手当をもらって退職しても大丈夫?
- 再就職手当をもらうと年金はどうなる?
- 再就職手当は雇用保険の制度のため、再就職手当自体が直接年金に影響しません。
ただし、65歳未満で老齢厚生年金を受け取っている場合には注意が必要です。
年金と失業保険を同時に受け取れないため、年金が全額支給停止となるケースがあります。
ハローワークに求職の申し込みを行い、失業保険の受給資格が決定した時点で年金は全額支給停止となります。
実際に年金の振り込みが再開されるのは失業保険の給付日数が全消化されてからおおむね3か月程度となることが多いでしょう。
- 再就職手当の受給審査に落ちる理由は?
- 再就職手当の受給審査に落ちる主な理由を以下にまとめました。
・失業保険の支給残日数が所定給付日数の3分の1未満しか残っていない
・7日間の待期期間を満了せずに就職した
・再就職先の企業が、前の会社やその関連会社
・再就職先で1年以上の勤務が見込めない
・雇用保険に加入していない職場への就職
・過去3年以内に再就職手当を受け取っている
・ハローワークに対しての報告や申請手続きが適切でない
・失業保険において不正受給を働いた経験がある
上記の理由がある場合には、審査の末、再就職手当の受給が認められない場合があります。
また審査落ちをしてしまった場合、なぜ審査に落ちてしまったのかという理由は開示されません。
そのため、上記の理由を中心に審査落ちの可能性を検討し、前もってハローワークで相談を行うのがおすすめです。
- 再就職手当をもらって退職しても大丈夫?
- 再就職手当をもらって退職しても全く問題ありません。
たとえば、再就職手当を受け取ってから1週間で辞めたとしても返還の義務は生じないのです。
ただ前の会社を退職する時点で再就職先の内定が決まっていた場合など、不正受給の可能性を指摘された場合には、返還を命じられる可能性があります。
その場合は、受け取った再就職手当の3倍以上の返還を余儀なくされる可能性が高いため、再就職手当の不正受給は絶対にやめましょう。
まとめ
今回は再就職手当をもらわない方がいい理由などを解説してきました。
最後に今回ご紹介した内容を振り返っていきます。
- 再就職手当は、再就職手当の受給要件を満たした人が就職をしたときにもらえる手当
- 再就職手当は雇用保険の中にある「就職促進給付」の一種
- 再就職手当をもらわない方が理由は受給条件の厳しさや再就職先に制限があることなど
- 再就職手当をもらうメリット・もらわないメリットがそれぞれあるので慎重な判断が大切
再就職手当は、就職活動を頑張った人に対するご褒美であり、もらうメリットは十分にあります。
一方で、前の会社でもらっていた給与が少ないと再就職手当は少なめになり、新たな会社で多くの給与をもらうことになれば、次の転職時に再就職手当を多く受け取れる可能性が出てきます。
再就職手当を受け取ってから3年間は再度受け取ることができないので、慎重な判断が必要です。



