
適応障害で仕事を辞めてもいい?

適応障害で辞めるときの流れがわからない…
もらえる手当や利用できる公的機関などについて知りたい!
と思っていたり悩んでいたりしませんか?
適応障害を発症している方の中には、仕事を辞めたいと感じているケースもあるでしょう。
結論、上司に相談したり休職して時間を作ったりするなど、適応障害で仕事を辞める前は無理しないことが求められます。
辞める判断をした場合、有給を使い切ったり診断書を取得したりしておくのがポイントです。
今回は、適応障害で仕事を辞めるときの流れや注意点、利用できる制度と手当などについて、退職サポートのプロである私が解説します。
最後まで読めば、適応障害を理由に仕事を辞めるときに、最適な決断をしやすくなるでしょう。
適応障害で仕事を辞める人が多い理由

現代では適応障害やうつ病など、精神疾患が原因で辞める方は増える傾向にあります。
まずは、適応障害が仕事に与える影響について知っておくとよいでしょう。
- 適応障害になった原因
- 適応障害になる社会人の数
- 辞められなかった人と即日退職した人の違い
ここから、上記の点について具体的に解説します。
適応障害になった原因
日本の場合、適応障害を始めとする精神疾患になる原因としては、以下の通り仕事に関連するものが多くあげられます。
- 仕事がうまくできない点
- 職場の人間関係で悩みを抱えている点
- 職場に対して貢献できていないと悩む点など
人間関係において「他の人と同じこと」「みんなに合わせる」ことが求められる日本では、人間関係でストレスを感じやすいといえるでしょう。
ただし、外国の場合は仕事が原因で適応障害を始めとする精神疾患を発症するケースは少ない傾向にあります。
- 夫婦間の不仲や離婚
- 転居
- 経済的な問題
適応障害などの精神疾患になる主な原因は、上記の点だとされているのが特徴です。
適応障害になる社会人の数
厚生労働省の調査により、適応障害になる社会人の数は年々増え続けていることが判明しています。
適応障害になる社会人の数は、具体的に以下の表のとおりです。
調査年度 | 適応障害の人数(千人) |
---|---|
2008 | 41 |
2011 | 52 |
2014 | 67 |
2017 | 101 |
表を見ても分かる通り、2008年から約10年間で約2.5倍に増加していることが分かります。
「ストレス社会」と言われているように、現代は仕事の中でもストレスを感じやすく、適応障害になる方は今後も増え続けることが予想されます。
適応障害になる前に以下に対策するのかが重要ですが、もし発症した場合は無理せずに休養することがポイントです。
辞められなかった人と即日退職した人の違い
適応障害になった場合、なかなか辞められなかった方と即日退職できた方に別れるのが特徴です。
適応障害で働ける状態ではなくなった場合、即日退職したいと考える方も多いでしょうが、以下の通り会社によっては許可をもらえない恐れもあります。
- ブラック企業
- 自己中心的な上司がいる会社など
共通する点としては、労働者の立場を考えず、自分の利益のみしか考えていない点です。
「退職したい」と申し出ても、引き継ぎをするように要求されたり、忙しいからと先延ばしにされたりするケースもあるかも知れません。
即日退職しやすくするには、病院からの診断書を受け取っておくのが効果的な方法の1つです。
即日退職できない場合でも、2週間前に退職を伝えれば、法律上は2週間後に退職できると定められています。
引き継ぎや労働力などに関しては、人が辞めても業務に支障がでないように対策できていなかった会社側の責任もあります。
罪悪感をおぼえるかもしれませんが、病気である以上は2週間欠勤するのが賢明です。
適応障害で仕事を辞めるときの流れ

適応障害で仕事をやめる場合、どのような手順で進めればよいのか分からない方もいるでしょう。
適応障害で辞めるときは、具体的に以下の手順で手続きを進めるのが特徴です。
- 病院から診断書をもらう
- 上司に退職したい旨を伝える
- 会社の規則に従って退職申請を進める
- 挨拶をしてスムーズに辞める
ここから具体的に解説します。
病院から診断書をもらう
適応障害で仕事を辞めるときは、まず病院から診断書をもらいましょう。
病院から診断書をもらうことにより、辞める事情に関してより会社に理解してもらいやすくなるためです。
適応障害を理由に辞める場合、会社や上司によっては「自分に甘いだけでは」「本当に病気なのか」などと疑われるケースもあるでしょう。
診断書を提出すれば、適応障害であることに関して証明ができます。
診断書をもらうには、事前に精神科や心療内科を受診し、診察を受ける必要があります。
診断書の発行にかかる費用は病院にもよりますが、目安として5千円程度です。
上司に退職したい旨を伝える
病院から診断書を受け取ったら、上司に退職したい意思を伝えましょう。
本来であれば対面で伝えることが望ましいものの、会社に出勤できる状態ではない方もいるかも知れません。
退職の意志を伝えるために無理して出社する必要はなく、電話やメール・手紙などを活用できます。
直接会って伝えられない点をお詫びしたうえで、退職したい旨を伝えるのがポイントです。
退職理由に関して、適応障害だと伝えにくい場合は具体的な理由を言う必要はありません。
一般的に使われる退職理由としては「一身上の都合で」があげられます。
会社の規則に従って退職申請を進める
上司に退職の意志を伝えたあとは、会社の規則に則って退職の手続きを進めましょう。
会社によっては退職に関する書類のフォーマットがあり、人事部の方に確認しておくのが望ましいです。
退職する旨の連絡や申請手続きなどに関しては1ヶ月前にすることと定めている会社が多いものの、正社員の場合は法律上2週間前でよいとされています。
ただし、少しでも円満に退職するには1ヶ月前に連絡するとよいでしょう。
挨拶をしてスムーズに辞める
退職申請を進めたあとは、職場の上司や同僚の方に今までのお礼をしたうえでスムーズに辞めましょう。
出社できる健康状態である場合、会社から借りていた社員証などを返却したり私物を持ち帰ったりするのがポイントです。
もし出社できない場合は、社員証などは会社に郵送しましょう。
会社に私物が残っている場合は、着払いで送ってもらえないか確認するのが望ましいです。
適応障害で仕事を辞めるときの注意点

適応障害で仕事を辞めるとき、4つの注意点を押さえるのがポイントです。
注意点を理解しておけば、辞めたあとに後悔しにくくなります。
- 辞められない状況なら退職代行を使う
- 有給を使い切って辞める
- 休職をしてゆっくり考えるのもおすすめ
- 部署異動で解決するなら上司に相談する
ここから、具体的に解説します。
辞められない状況なら退職代行を使う
適応障害で仕事を辞められない場合、退職代行を使いましょう。
退職代行とは、退職するために必要な作業を自分の代わりに行ってもらえるサービスであるためです。
退職の連絡や手続きのみでなく、有給の取得申請まで行ってもらえる点が特徴になります。
退職代行サービスを利用する場合、即日で退職できるケースもあったり会社と揉めたりすることを避けやすい点がメリットです。
退職代行は近年普及してきているものの、広く認知されているとは言い切れません。
利用するときは慎重に判断することが求められるでしょう。
有休を使い切って辞める
適応障害で仕事を辞めるときは、有給を消化し終えてから辞めるのがポイントです。
会社によっては有給の消化を認めてもらえないケースがあるかも知れませんが、有給の取得は労働者の権利として法律で認められているためです。
上司に退職する意思を伝えたあとから退職日までの間に有給を全て消化しましょう。
ブラック企業に勤めているなどで有給の消化を言い出せない方の場合は、前述の退職代行サービスを利用するのも1つの方法です。
休職をしてゆっくり考えるのもおすすめ
適応障害で仕事を辞める前に、休職をしたうえで今までのことや今後のことについて考えるとよいでしょう。
適応障害による体調不良の場合、正しい判断をしにくくなるためです。
まずは体調を回復させることに専念し、症状がよくなったあとで復職するのか退職するのかを考えるのも1つの方法です。
休職する場合、復職が前提であると考えている方もいるかも知れませんが、休職中に退職しても問題にはなりません。
適応障害になってつらいからと辞める判断を直ぐに下さず、時間をおいて考える方法もあります。
部署移動で解決するなら上司に相談する
適応障害で退職したい場合、上司に相談したうえで部署異動させてもらう方法があげられます。
周囲の人間関係や環境が変わることで、適応障害の症状が改善する事例もあるためです。
今の仕事にやりがいを持っており、同じ会社で継続して働きたい方の場合に効果的な方法だといえます。
部署異動の他にも、時短勤務や労働量の削減なども効果的で、少しでも負担を軽減させられるとよいでしょう。
それでも退職することとなった場合、給付金に関しての相談は退職サポーターズへご相談ください。
適応障害で仕事を辞めるときに使える制度・手当

適応障害で仕事をやめる場合、国からさまざまな制度や手当を受けられます。
- 傷病手当金
- 失業保険
- 自立支援医療制度
- 就労移行支援
- 障害年金
- 生活保護
上記の点について、ここから具体的に解説します。
傷病手当金
適応障害で仕事をやめる場合、利用できるのが疾病手当金です。
疾病手当金とは、適応障害を始めとする精神障害やケガなどにより長期間働ける状態ではなくなり、給料を受け取れない方に対して支給される手当のことをいいます。
休職期間中のみではなく、以下の条件を満たせば退職したあとでも疾病手当金は継続して支給される点が特徴です。
- 仕事以外での病気やケガが原因の休職である
- 仕事に就けない状態にある
- 連続3日を含む4日以上休んでいる
- 休業期間中に給与の支払いがない
正社員に限らず、失業保険に加入している方は全員受け取れます。
失業保険
適応障害で退職する場合、利用できる制度は失業保険です。
失業保険とは、退職した方の生活をサポートし、一刻も早く再就職できるように支援することを目的とする制度です。
- 被保険者期間が2年間で12か月以上あること(特定受給資格者・特定理由離職者の場合、1年間で6ヶ月以上)
- すぐにでも再就職できる環境にあり求職活動を継続しているものの、就業の機会に恵まれない方
上記の条件を満たす方に限り、失業保険の受給が可能です。
適応障害で退職したあと、しばらく休養を余儀なくされる方の場合は失業保険の延長申請をしましょう。
失業保険の受給期間は離職した日から1年までと決められていますが、最大で3年まで延長できます。
自立支援医療制度
適応障害で退職する場合、利用できるのが自立支援医療制度です。
自立支援医療制度とは、適応障害で継続した通院が必要な場合、医療費の自己負担金額を軽減してもらえる制度のことです。
通常であれば自己負担金額は3割支払う必要があるものの、原則として1割負担にしてもらえる点が特徴になります。
世帯の所得金額などの条件のほか、各自治体によっても運用方法が異なります。
自立支援医療制度を利用したい場合、お住まいの自治体に問い合わせてみましょう。
就労移行支援
適応障害で退職する場合、利用できるのが就労移行支援です。
就労移行支援とは、適応障害など病気のある方や、障害のある方が就職したり職場に定着したりすることをサポートする制度です。
就労移行支援制度を使用したい場合、各自治体へ問い合わせたうえで手続きをする必要があります。
各自治体によって、利用できる条件や判断などが異なるケースもある点は押さえておきましょう。
障害年金
適応障害で仕事を辞めるときに利用できる可能性があるのは障害年金です。
障害年金とは、病気やケガなどで仕事に支障をきたしている年金加入者の方が受給できる制度をいいます。
年金を受給できる年代の方以外でも受け取れる点が特徴ですが、障害年金の対象となる病気や障害を持っていることが条件です。
適応障害の方全員が受け取れるわけではない点に関して、注意が必要です。
生活保護
適応障害の方が利用できる可能性がある制度として、生活保護があげられます。
生活保護とは、病気やケガなどが原因で働けない方や、働いているものの収入が著しく低い方が対象となる生活支援制度です。
適応障害を理由に生活保護を受けられる可能性もありますが、他の制度や手当と比較すると可能性は低くなります。
適応障害で仕事を辞めたい人におすすめの機関・団体

適応障害で仕事を辞めたい方が相談できる場所として、さまざまな公的機関や団体などがあげられます。
わからない点や困っている点などがあれば、以下の公的機関や団体を利用するとよいでしょう。
- ハローワーク
- 精神保健福祉センター
- 基幹相談支援センター
- 労働条件相談ホットライン
- 法テラス
- 総合労働相談センター
ここから具体的に解説します。
ハローワーク
適応障害で仕事を辞めたい方におすすめの公的機関として、ハローワークがあげられます。
ハローワークでは、適応障害を始めとする精神疾患や、病気のある方の相談窓口が設けられているためです。
仕事を辞めるときの相談のみではなく、適応障害の症状が緩和し、求職活動をするときも頼りになる場所の1つです。
全国544箇所にあることから、どの地域に住んでいる場合も利用しやすい点が特徴になります。
精神保健福祉センター
適応障害で仕事を辞めたい方におすすめの公的機関として、精神保健福祉センターがあげられます。
精神保健福祉センターでは、適応障害を始めとする精神疾患になった方の生活や仕事復帰に関する相談などができるためです。
心の健康づくりのための相談や、アルコールとの向き合い方に関するアドバイスなど幅広い相談に乗ってもらえます。
基幹相談支援センター
適応障害で仕事を辞めたい方におすすめの公的機関として、基幹相談支援センターがあげられます。
基幹相談支援センターとは、地域における相談支援の中核を担う場所であり、病気の相談に乗ってもらえたり、他の団体と連携などを行ったりしてもらえるためです。
基幹相談支援センターでは、主に障害者の相談・地域移行・権利擁護などあらゆる面からサポートしているのが特徴です。
基幹相談支援センターは873市町村、1,100箇所に設置されています。
労働条件相談ほっとライン
適応障害で仕事を辞めたい方におすすめの公的機関は、労働条件相談ホットラインです。
労働条件相談ほっとラインでは、適応障害の発症のほか、違法な労働時間や残業代未払いなどに関する相談に乗ってもらえるためです。
関係機関を紹介してもらえたり、専門知識をもつ相談員からアドバイスをもらえたりする点が特徴になります。
パワハラ上司や多すぎる残業時間などが原因で適応障害を発症した場合、相談するとよいでしょう。
全国どこでも以下の番号から相談が可能です。
0120‐811‐610
法テラス
適応障害で仕事を辞めたい方におすすめの団体は、法テラスです。
法テラスとは、無料で弁護士からの相談やサポートを受けられる点が特徴で、経済的な余裕のない方も法的なトラブルに対応してもらえるためです。
無料で相談、弁護士費用の立替などに対応してもらえることから、適応症害になった経緯や原因などの相談をしやすいでしょう。
成功報酬が発生しないこともメリットの1つです。
総合労働相談センター
適応障害で仕事を辞めたい方におすすめの公的機関は、総合労働相談センターです。
総合労働センターとは、労働局や労働基準監督署などにある相談窓口のことで、適応障害の原因となったことに関して相談に乗ってもらえるためです。
相談以外にも助言や斡旋などを受けられる点が特徴で、法令違反の可能性がある場合は労働署に引き継いでもらえます。
まとめ
ここまで、適応障害で仕事を辞める方法や注意点などを解説してきました。
本記事のまとめは以下の通りです。
- 適応障害で辞める社会人の数は年々増え続ける傾向にあり、仕事が主な原因と考えられている
- 適応障害で仕事を辞めるときは、手順を踏むことでスムーズに辞めやすくなる
- 適応障害で仕事を辞めるときは、有給を消化したり、場合によっては退職代行を使ったりする点がポイントである
- 適応障害で仕事を辞めるときは、疾病手当金や失業保険などの制度を利用できる
- 適応障害で仕事をやめたい人が利用したい期間として、ハローワークや精神保健福祉センター等があげられる
適応障害とは仕事が原因で発症する可能性が高く、無理に勤務し続ける必要はありません。
会社や状況によっては即日退社することも可能であることから、なるべく早く休養するのが望ましいです。
本記事を参考に、適応障害で辞める時の方法や注意点などを理解していただければ幸いです。