皆さんは諭旨退職をご存じですか?諭旨退職は会社から労働者に対して退職が勧告されたのちに退職するというものです。
ネーミングだけを見ると不安になる人がいても不思議ではありません。
しかし、諭旨退職は自己都合による退職扱いとなり、退職金も得られるので、怖がる必要はないのです。
本記事では諭旨退職とは何かを中心に、メリット・デメリットなどを解説していきます。
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諭旨退職とは?
諭旨退職とはどういうものなのか、その意味や懲戒処分の種類などを解説していきます。
諭旨退職の意味
諭旨退職は、会社側が従業員に対して退職するよう促して、双方が了解する形で退職届を出してもらうもので、懲戒処分の1つです。
「諭旨」という言葉には、「趣旨や理由を諭して告げる」という意味があります。
要するに、「○○の理由があるので、この会社を自発的に辞めてほしい」というもので、「自発的に」辞めることがポイントです。
懲戒解雇は問答無用に従業員を辞めさせる懲戒処分ですが、諭旨退職は一定の温情が感じられます。
懲戒処分の種類
懲戒処分には以下の種類があります。
- 訓告・譴責・戒告
- 減給
- 出勤停止
- 降格
- 諭旨退職
- 懲戒解雇
上から順番に処分としては軽いもので、諭旨退職は懲戒解雇の次に重い処分であることがわかります。
訓告などは口頭注意や厳重注意と同じような意味で、金銭的な弊害が出るわけではありません。
ちなみに上記の懲戒処分はあくまでも一般的なもので、企業が定める就業規則に定められている懲戒処分が重要です。
ただ多少の違いはあれど、上の懲戒処分がどの企業でも定められている可能性は高いでしょう。
諭旨解雇と諭旨退職の違い
諭旨解雇と諭旨退職の違いですが、基本的には同じ意味合いです。
どちらも「退職金はあげるから、自発的に会社を辞めてもらいたい」という意味合いがあるためです。
そのため、どちらも同じ意味合いで使われ、就業規則でもいずれかが採用されています。
一方で諭旨退職と諭旨解雇の違いとして、解雇予告手当の有無も挙げられます。
解雇予告手当とは、解雇予告を事前に行う代わりに30日分の給与を支払うというものです。
諭旨解雇はあくまでも解雇なので、解雇予告手当を支払う必要性がありますが、諭旨退職は自発的な退職なので、解雇予告手当は必要ありません。
どちらも同じような意味合いではあるものの、解雇予告手当の有無という点で異なると言えるでしょう。
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諭旨退職にするメリット・デメリット
諭旨退職になると、結果的に会社を辞めざるを得ないのでメリットはないように感じるかもしれませんが、実はちゃんとメリットがあります。
ここでは諭旨退職のメリット・デメリットについて解説します。
諭旨退職のメリット
まず従業員側にとってのメリットは以下の通りです。
- 退職金が出る
諭旨退職は、従業員に何らかの落ち度があり、企業にとって不利益になる事態を招いたことが根底にあります。
ですので、懲戒解雇でも何らおかしくない中、温情で諭旨退職になっていると考えるべきです。
懲戒解雇になってしまうと退職金が出ないため、退職金が出るだけでも大きなメリットと言えます。
一方、企業側のメリットは以下の通りです。
- 穏便に辞めてもらえる
- 解雇無効に関する訴訟リスクが減らせる
諭旨退職であれば退職金が出るため、退職金を出すことを条件に自発的に会社を辞めてもらうことができます。
懲戒解雇となると、解雇権の濫用などを理由に訴訟を行われる可能性があり、企業側としては厄介です。
しかし、諭旨退職であれば従業員が自発的に辞める形をとり、双方合意の上で辞める形になるため、訴訟リスクを減らすことができます。
訴訟になれば、負けてしまう可能性もあり、その際のダメージは相当なものです。
双方合意の上で辞めるという事実は大きく、後で翻意をしても企業側としては合意があったと突っぱねることができます。
諭旨退職のデメリット
一方、諭旨退職のデメリットですが、従業員側のデメリットは以下の通りです。
- 一般的な自己都合退職よりも退職金が少ない
- 解雇理由証明書などに諭旨退職の事実が記載される
諭旨退職であれば確かに退職金は出ますが、一般的な自己都合退職と比べれば退職金が少なくなる場合があります。
自己都合退職の形こそとっていますが、本来は懲戒解雇でもおかしくない状況なので、少しでも退職金が出るだけ温情的と言えるでしょう。
一方、解雇理由証明書などなぜ退職したのか、その理由が記載された証明書を提出する際、諭旨退職の事実が知られることがあります。
企業側としては諭旨退職の経験がある人物を雇い入れるのは相当のリスクがあると言えるでしょう。
履歴書そのものには「一身上の都合により退職」と書いても大丈夫ですが、退職理由を深く掘り下げられた場合には正直に答えなければならず、その点で不利です。
次に企業側のデメリットは以下の通りです。
- 諭旨退職の手続きを厳格に行う必要がある
- 社内の従業員のモチベーションが下がる可能性がある
諭旨退職は諭旨解雇と同等なので、解雇権の濫用という指摘を受けないように厳格な手続きが求められます。
要件を満たさずに諭旨退職をすれば、従業員が諭旨退職を受け入れず、そのまま訴訟につながる可能性があります。
万が一解雇権の濫用と認められれば、職場への復帰や慰謝料請求など大きなダメージを負うことになるでしょう。
また、「懲戒解雇のはずなのに諭旨退職にして退職金が出した」と他の従業員が不快に感じ、モチベーションが下がることも考えられます。
いずれにしても、諭旨退職を目指すには慎重な対応が求められるでしょう。
諭旨退職の失業保険や退職金は?
諭旨退職になった場合に失業保険や退職金はどうなるのか、気になる方も多いはずです。
これまでメリット・デメリットでも触れましたが、改めて解説します。
諭旨退職でも失業保険はもらえる?
結論から言いますと、諭旨退職においても失業保険をもらうことは可能です。
諭旨退職の場合は自己都合退職と同等なので、自己都合退職と同じく、7日の待期期間や給付制限が必要となります。
ですので、自己都合退職と同じようなスケジューリングで対応する必要があります。
諭旨退職は退職金が出る?
諭旨退職における退職金ですが、多少ながらも退職金は出ます。
ただし、諭旨退職のデメリットでもご紹介した通り、一般的な自己都合退職で本来受け取れる額よりも少なくなる可能性はあります。
退職金制度に関しては各企業が定めており、各企業の判断で退職金の有無や金額の多少が決まるので、結局のところ、勤務する企業次第と言えるでしょう。
たとえ諭旨退職であっても満額に近い退職金を受け取れるケースもあれば、かなり減額されるケースもあります。
もちろん退職金制度がない企業であれば、一般的な自己都合退職であっても退職金は出ません。
就業規則においてどのような取り決めとなっているのか、事前にチェックしておくことをおすすめします。
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まとめ
今回は諭旨退職とはどういうものかについてご紹介してきましたが、最後に今回ご紹介した内容を振り返ります。
- 諭旨退職は企業側から退職を促され、双方合意の上で退職する懲戒処分の1つ
- 諭旨退職は懲戒解雇の次に重い処分
- 諭旨退職と諭旨解雇は基本的に似たようなものだが、解雇予告手当の有無の違いが大きい
- 諭旨退職は退職金が出るが、一般的な自己都合退職と比べると少なくなる可能性がある
諭旨退職は、懲戒解雇でもなんらおかしくはない状況の中、会社側の温情によって退職金を出してもらえるような形で辞められる処分の1つです。
一方、諭旨退職という事実は重く、諭旨退職に該当するようなことをやってしまったことは明らかです。
転職先では何らかの懲戒処分にならないよう、マジメに働き続けることが求められます。
諭旨退職では退職金が出るので、この退職金を原資にじっくりと転職活動を行うことも大切です。
諭旨退職に該当するようなことをしていないとしても、就業規則に書かれていることを事前にチェックし、万が一の時に備えることをおすすめします。