傷病手当金申請書は誰が書く?本人・会社・医師の役割と退職後の対処

傷病手当金申請書は誰が書く?本人・会社・医師の役割と退職後の対処

傷病手当金の申請書を渡されたものの、「この欄は誰が書けばいいのか」と手が止まってしまう人は少なくありません。

申請書は本人・事業主(会社)・医師(歯科での療養の場合は歯科医師)の3者がそれぞれ担当する欄に分かれており誰か一人がすべて記入する書類ではありません

本記事では、傷病手当金支給申請書の記入担当を本人・会社・医師の役割ごとに整理し、記入の順序やよくある不備、会社の協力が得づらい場合の対処法まで解説します。

退職後に申請する場合の注意点も取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。

この記事でわかること
  • 傷病手当金申請書を本人・会社・医師の誰が書くかの役割分担
  • 本人・事業主・医師それぞれの具体的な記入項目
  • 記入をスムーズに進める依頼の順序と段取り
  • よくある記入ミス・不備が起こりやすいポイント
  • 会社の協力が得づらい場合や退職後に申請する場合の対処法
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傷病手当金申請書は本人・会社・医師の3者が分担して作成します

結論から言うと、傷病手当金支給申請書は本人・事業主(会社)・医師の3者がそれぞれ担当欄を分担して記入する書類です。

1人がすべての欄を埋めるものではなく、本人が基本情報や休業期間を記入し、会社が就業状況や給与の支払い状況を証明し、医師が労務不能に関する医学的な意見を記載する、という役割分担になっています。

そのため、申請までには本人だけでなく会社や医療機関とのやり取りが発生する点を押さえておくことが、手続きをスムーズに進めるポイントです。

申請書を書き進める順番。①本人が基本情報・休業期間・口座情報を記入、②受診している医師に意見書の作成を依頼、③会社に休業期間・報酬の証明を依頼、④3者分がそろったら保険者へ提出

申請書の全体構成|用紙の内訳・入手方法・提出のタイミング

申請書は複数の用紙に分かれている

傷病手当金支給申請書は、本人が記入する用紙、事業主が証明する用紙、医師が意見を記載する用紙に分かれた構成になっています。

健康保険法施行規則第84条第2項では、申請書本体(本人記載分)に加えて、医師又は歯科医師の意見書、事業主の証明書の添付が必要と定められています。

つまり、本人分の用紙だけを提出しても申請書としては完成しておらず、会社と医師それぞれの記入・証明がそろって初めて申請できる状態になります。

入手方法と提出先

申請書の様式は、加入している健康保険の保険者(全国健康保険協会(協会けんぽ)や健康保険組合など)から入手します。

記入が完了した申請書は、勤務先の健康保険が協会けんぽか健康保険組合かによって提出先の窓口が異なるため、事前に確認しておくと安心です。

提出のタイミングの考え方

傷病手当金は、休業してすぐの期間ではなく、一定の待期期間を経過した後の休業分から支給の対象になる仕組みとされています。

そのため申請書も、対象となる休業期間が経過してから、その期間分をまとめて申請する形になるのが一般的です。

休業が長期にわたる場合は、期間を区切って複数回に分けて申請することもできるとされています。

本人が記入する内容|基本情報・休業期間・振込先など

本人が記入する欄には、被保険者等記号・番号又は個人番号、業務の種別、傷病名・原因・発病(負傷)年月日、労務に服することができなかった期間、報酬の受領状況、障害年金等の受給状況、労災保険等の給付受領状況、預金口座情報が含まれます。

このうち「業務の種別」の欄は、傷病が業務上のものか業務外のものかを区別するための項目とされています。業務上の傷病は労災保険の対象となる場合があり、健康保険の傷病手当金とは扱いが異なることがあります。

記入時に確認しておきたいポイント

  • 健康保険証に記載された被保険者記号・番号(またはマイナンバー)
  • 休業した具体的な期間(開始日・終了日)
  • 休業期間中に会社から報酬(給与)を受け取っていたかどうか
  • 障害年金や労災保険の給付を受けているかどうか
  • 振込先口座の情報(本人名義であることの確認)

これらの項目は本人でなければ把握できない情報が中心のため、まず本人が自分の分を埋めてから会社・医師に依頼する流れが基本になります。

会社(事業主)が記入する内容|就業状況と給与支払いの証明

事業主(会社)が証明する欄には、被保険者が労務に服することができなかった期間と、その期間の報酬の額に関する証明が求められます。

具体的には、休業期間中に給与を支払っていたか、支払っていた場合はいくらだったかを会社側が証明する内容です。

会社側の証明が必要とされる理由

傷病手当金は、休業中に十分な報酬を得られていないことを前提とした給付であるため、報酬の支払い状況の証明が支給可否や支給額の判断に関わってくるとされています。

報酬の一部が支払われていた場合の扱いは個別の状況によって異なる場合があるため、不明な点があれば保険者に確認するとよいでしょう。

医師(療養担当者)が記入する内容|意見書の記載事項と費用負担

医師が記載する意見書には、被保険者の疾病又は負傷の発生年月日、原因、主症状、経過の概要、労務に服することができなかった期間に関する意見を記入し、診断年月日と署名が必要です。

意見書の作成費用は誰が負担するのか

医師が意見書を交付した場合、その費用は当該被保険者の療養の給付を行うべき保険者に請求される扱いとされています。

ただし、意見書を紛失するなどして再交付を依頼した場合、2回目以降の費用は被保険者本人の負担になる場合があります。

主治医と産業医、意見が分かれたらどうなるか

会社に産業医がいる場合、保険者は主治医の意見に加えて産業医の就業上の意見もあわせて参酌したうえで支給可否を判断するとされています。

主治医と産業医の意見が食い違う場合でも、産業医の意見が自動的に優先されるわけではなく、保険者が双方の内容を踏まえて総合的に判断するとされています。

よくある記入ミス・不備とトラブル事例

3者が分担して作成する書類であるがゆえに、一部の欄だけが未記入のまま提出されてしまうケースは、実務上よくあるトラブルの一つとされています。

記入漏れ・不備が起こりやすいポイント

  • 本人記入欄の休業期間と、会社記入欄の証明期間にズレがある
  • 振込先口座の名義が本人名義になっていない
  • 医師の意見書に診断年月日や署名が抜けている
  • 申請書を複数回に分けて提出する際、対象期間が重複・空白になっている

こうした不備があると、保険者から本人や会社・医療機関へ確認や再提出の依頼が入ることになり、支給までの期間が延びる要因になり得ます。

不備を防ぐための確認ポイント

提出前には、本人・会社・医師それぞれの記入欄の期間が一致しているか、押印や署名などの必須項目が揃っているかを見比べておくと、差し戻しのリスクを減らしやすくなります。

不明な点がある場合は、自己判断で埋めずに、加入している健康保険の保険者へ事前に確認しておくことも有効な方法とされています。

効率よく進めるための記入順序と段取り

申請書は3者が分担するため、誰から先に着手すると手続き全体がスムーズに進むかという段取りの視点も重要になります。

基本の進め方

  • 本人が自分の記入欄(基本情報・休業期間・口座情報など)を先に埋める
  • 受診している医師に意見書の作成を依頼する
  • 並行して会社に休業期間・報酬の証明を依頼する
  • 3者分がすべて揃った時点で保険者へ提出する

医師の意見書作成には日数がかかる場合があるため、本人の記入と会社への依頼を先に済ませ、医師への依頼を早めに行っておくことで、書類がそろうまでの待ち時間を短縮しやすくなります。

代筆に関する誤解

本人の記入欄について、家族などが本人に代わって代筆すること自体が一律に禁止されているわけではありませんが、内容はあくまで本人の状況を正確に反映させる必要があります。

一方で、会社の証明欄や医師の意見書欄は、それぞれ事業主・医師本人の証明・意見として扱われる部分のため、本人や家族が代わりに記入できる範囲ではない点に注意が必要です。

会社の協力が得づらい・退職後に申請する場合の対処法

退職後に申請する場合や、会社との関係が良好でない場合など、事業主の証明がすぐに得られないケースも考えられます。

退職後に申請する場合の注意点

退職後も一定の条件のもとで傷病手当金の支給を受けられる場合がありますが、退職後は在職中と異なり、会社が手続きに積極的に関与してくれるとは限りません。

休業していた期間についての証明が必要な場合、退職前に在籍していた会社へ証明書の記入を依頼する必要があることがあるため、退職前に申請の準備を進めておくと手続きがスムーズになりやすいとされています。

会社が証明書の記入に応じてくれない場合

会社の協力が得られないときに検討できる対応例
  • 加入している健康保険の保険者(協会けんぽ・健康保険組合)の窓口へ相談する
  • 会社に証明を依頼した経緯や連絡記録を残しておく
  • 社会保険労務士など専門家に相談し、間に入ってもらう

事業主の証明が得られない事情がある場合の取り扱いは個別の状況によって異なるため、まずは加入している健康保険の保険者に相談し、案内に沿って対応することが基本になります。

記入者別 担当項目の早見表。本人は基本情報・傷病名・休業期間・報酬受領状況・口座情報など、事業主(会社)は休業期間の証明・その期間の報酬額の証明、医師は傷病の発生年月日・原因・主症状・労務不能に関する意見

支給期間についても知っておきたいポイント

傷病手当金は、支給開始日から通算して1年6か月にわたって支給される仕組みです。

途中で就労するなどして支給されない期間があった場合は、その期間分を繰り越して1年6か月を超えて支給を受けられる場合があるとされています(令和4年1月1日以降の取り扱い)。

退職後に申請するケースでは、この支給期間の考え方と、会社側の証明をいつ・どう確保するかをあわせて確認しておくと手続きが進めやすくなります。

よくある質問

傷病手当金の申請書は本人だけで書けますか?
申請書は本人が記入する欄だけでなく、事業主(会社)の証明欄と医師の意見書欄があるため、本人の記入だけで申請を完了させることはできません。

本人分を記入したうえで、会社と医師それぞれに記入・証明を依頼する必要があります。
家族が代わりに記入(代筆)してもいいですか?
本人の記入欄について、家族が本人に代わって代筆すること自体が一律に禁止されているわけではありませんが、内容は本人の状況を正確に反映させる必要があります。

会社の証明欄や医師の意見書欄は、それぞれ事業主・医師本人の証明・意見として扱われる部分のため、本人や家族が代わりに記入できる範囲ではない点に注意が必要です。
会社が証明書の記入に協力してくれない場合はどうすればいいですか?
会社が証明書の記入にすぐ応じてくれない場合は、まず加入している健康保険の保険者(協会けんぽや健康保険組合)の窓口へ相談することが基本になります。

会社への依頼の経緯を記録しておいたり、社会保険労務士など専門家に相談したりすることも選択肢の一つとされています。
退職後に申請する場合、会社の記入は必要ですか?
退職後も一定の条件のもとで傷病手当金の支給を受けられる場合がありますが、休業していた期間についての証明が必要な場合、在籍していた会社への依頼が必要になることがあります。

退職後は在職中と比べて会社の協力を得にくくなる場合があるため、退職前に申請の準備を進めておくと手続きがスムーズになりやすいとされています。
医師の意見書を書いてもらう費用は自己負担になりますか?
医師が意見書を交付した場合、その費用は被保険者の療養の給付を行うべき保険者に請求される扱いとされています。

ただし、意見書を紛失するなどして再交付を依頼した場合は、2回目以降の費用が被保険者本人の負担になる場合があります。

まとめ

傷病手当金支給申請書は、本人・事業主(会社)・医師の3者がそれぞれの担当欄を記入する書類です。

本人は基本情報や休業期間、会社は就業状況と報酬の証明、医師は労務不能に関する医学的な意見を記載するという役割分担を押さえておくと、記入の依頼漏れを防ぎやすくなります。

特に医師への意見書作成の依頼は時間がかかる場合があるため、早めに動き出すことが手続き全体をスムーズに進めるポイントです。

退職後の申請や会社の協力が得づらい場合は、無理に自分だけで進めようとせず、加入している健康保険の保険者へ早めに相談することをおすすめします。

傷病手当金だけでなく、退職後に受けられる給付には状況によって条件が変わります。自分の場合に失業保険や給付金の対象になりそうか、LINEの無料診断で目安を確認してみてはいかがでしょうか。