
失業保険と年金を同時にもらうことってできる?

退職した後の生活資金が心配…
失業保険と年金を満額もらえる方法が知りたい。
本記事では上記の疑問や要望などにお応えします。
これから退職を迎える方にとっては、失業保険や年金を同時にもらえるのかが気になるところでしょう。
結論からお伝えすると、失業保険と年金は同時に受給できます。
ただし、条件によっては不利になる可能性もあり、よく検討することがポイントです。
今回は、失業保険と年金を同時受給するときの年齢による違いや、満額受給する方法を解説します。
定年退職を迎えてからも働き続ける方は必見です。
この記事でわかること
- 失業保険と年金は条件次第で同時受給可能
- 失業保険と年金を満額ゲットする方法
- 遺族年金と障害年金との兼ね合いについて
失業保険とは?年齢によって異なる受給条件を解説
失業保険は、退職者の生活面をサポートしつつ、早期の再就職を支援していく制度です。
特定の条件を満たす必要はありますが、生活していくための費用を賄える点が特徴です。
失業保険の正式名称は「雇用保険」で、手当に関しては基本手当や失業保険、失業手当などといわれています。

年金とは?仕組みと受給開始年齢をわかりやすく紹介
年金は、原則65歳になってから受け取ることができるお金を指します。
年金には、大きく分けて2種類あり、国民年金と厚生年金の2種類です。
20歳以上の国民であれば全員に加入義務があるのが国民年金、会社員や公務員などが加入するのが厚生年金です。
厚生年金加入者は国民年金も受け取れるため、受け取れる年金は多いです。
これとは別に確定拠出型年金があります。
確定拠出型年金は任意での加入のため、国民年金だけでは心配な自営業の方が利用するケースが目立ちます。
年金受給世代が対象となる3種類の失業手当とは?
「年金をもらっていても失業手当は受け取れるの?」と疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。
実は、年金受給世代でも条件を満たせば、対象となる失業手当を受け取れす。
- 基本手当
- 高年齢求職者給付金
- 高年齢雇用継続給付
ここから具体的に解説します。
基本手当
基本手当とは退職者が再就職するまでの生活をサポートする手当です。
受け取るには以下の条件を満たす必要があります。
- ハローワークで求職活動を申し込み、実際に活動をしていること
- 退職する直前に、雇用保険に一定期間加入していること(自己都合:2年間に12か月以上、会社都合:1年間に6か月以上)
- 再就職しようという思いがあり、すぐにでも働ける環境下にいること
自己都合退職か会社都合退職かにより、給付されるまでの期間や支給日数が異なります。
| 自己都合退職 | 会社都合退職 | |
|---|---|---|
| 給付開始となる日 | 申込から、7日と1か月もしくは3か月後 | 申込から7日後 |
| 給付日数 | 90日から150日 | 90日から330日 |
会社都合退職者の方に対して有利になっているのが基本手当の特徴です。
65歳以上は「高年齢求職者給付金」が対象
高年齢求職者給付金とは、基本手当と同じ意味合いを持つもので、65歳以上の方が対象です。
失業保険の場合は4週ごとに支給されるのが特徴ですが、高年齢者求職者給付金の場合は一括で受給できる点が特徴です。
しかし、総支給額で見ると失業保険の方が多く受給できます。
| 被保険者期間 | 給付金額 |
|---|---|
| 1年以上 | 基本手当日額の50日相当分 |
| 1年未満 | 基本手当日額の30日相当分 |
自己都合退職でも90日分の基本手当を受け取れるため、明らかな違いが見られます。
基本手当を受給するために、65歳までに退職するのも1つの方法です。
60〜64歳は「高年齢雇用継続給付」が対象
高年齢雇用継続給付は、60歳以降の再雇用後に60歳到達前給与の75%未満になった人に与えられる手当です。
60歳になった時点で雇用保険の加入期間が5年以上ある人を対象とし、60~64歳までの間、賃金に上乗せされます。
上乗せの割合は賃金の10%を上限とし、失業保険から給付されます。
高年齢雇用継続給付には、以下の2つの給付金があります。
- 高年齢雇用継続基本給付金:60歳の時点に比べ60歳以降の賃金額が75%未満の方が受給できる
- 高年齢再就職給付金:60歳以降に離職して再就職した際、賃金が75%未満となった場合に受給できる
基本的には、65歳まで働き続けることをサポートすることが目的の給付金制度です。
そして、賃金が75%未満になってしまった60~64歳の労働者を支える制度でもあります。

失業保険と年金は同時にもらえるのか?年代別に解説
「失業保険と年金は同時にもらえるの?」と疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。
実は、併用できるかどうかは年齢や受給している年金の種類によって異なります。
- 65歳以上の場合は同時にもらえる
- 60〜64歳の場合は同時にもらえるが減額される
- 63歳の場合は同時にもらえるが減額される
ここから具体的に解説します。
65歳以上は年金と失業保険を同時に受給可能
65歳以上の場合、失業保険と年金を同時に受給できます。
厳密には、65歳以上の方を対象とした「高年齢求職者給付金」との同時受給です。
一方で、64歳まで利用できる方の失業保険と比べると受給金額が少なくなる点には注意です。
65歳未満の方が退職した場合は、自己都合退職であっても最大150日間受給できます。
しかし、65歳以降で退職した場合は、50日分に減額となり、その差は100日分です。
100日分で24~76万円となるため、150日分の失業保険を受け取れる方は慎重に対応しましょう。
60〜64歳は減額されつつも同時受給可能
60〜64歳の場合、減額こそされますが、失業保険と年金を同時に受給できます。
ただし、以下のケースに該当する方は同時受給はできません。
- 特別支給の老齢厚生年金を受け取っている
60~64歳の方は、特別支給の老齢厚生年金もしくは繰り上げ受給の年金を受け取れます。
繰り上げ受給の年金の場合、基礎年金と失業保険の同時受給だけ可能です。
厚生年金は同時受給の対象外となるため、特別支給の老齢厚生年金との同時受給は不可能です。
一方、高年齢雇用継続給付との同時受給はどちらも可能ですが、年金の一部支給がストップされます。
減額の割合は、最大で給料の4%に相当する金額です。
63歳は特に注意!減額の条件を確認しよう
63歳で退職した場合でも、失業保険との同時受給は可能であり、高年齢雇用継続給付の対象となります。
しかし、63歳の場合も給料の4%相当額が減額の対象となるため、どちらも目一杯もらえるわけではありません。
そのため、63歳で退職する際には、減額されることを想定した上で決断することをおすすめします。
失業保険と年金を満額もらうには?両立させる方法と注意点
失業保険と年金を満額受給するには、65歳直前に退職し、65歳以降に失業保険を受給することです。
自己都合退職であれば最大150日分の失業保険と基礎年金が受け取れます。
繰り上げ受給をしている場合、同時受給はできないものの、場合によっては65歳以降の退職より総支給額は多くなりやすいです。
65歳以前に退職することで、退職金の金額に影響が出る恐れがあり、注意が必要です。
そのため、65歳直前まで働いてから退職した方がお得になりやすいのです。
失業保険を受給するにはハローワークで手続きを行い、4週に1度の失業認定日に認定を受けます。
失業保険が振込まれるまでの期間を合計すると、最短でも1ヵ月程度かかると把握しておきましょう。
障害年金と失業保険は同時受給できる?注意点を解説
65歳未満や65歳以上で定年退職となり失業した場合、失業保険と障害年金は同時に受給できる点が特徴です。
障害年金とは、ケガや病気などの原因により、生活や仕事をすることに支障を来す場合に受給できる年金のことです。
障害年金は以下の2つの種類があります。
- 障害基礎年金:1級と2級がある
- 障害厚生年金:1級から3級がある
障害基礎年金とは、障害の等級により給付金の金額を決められる点が特徴です。
障害厚生年金とは、今までに保険に加入してきた期間や金額に応じて支払われるもので、条件により異なります。
障害年金は併給調整がないため、満額で受け取れます。
失業保険と障害年金を同時に受給するには、「年金受託選択申出書」を年金事務所か、年金相談センターに提出する必要があります。
遺族年金と失業保険は併用できる?受給条件と例外を紹介
失業保険と遺族年金の同時受給は可能です。
平成18年度より、65歳以上の方の場合は、失業保険と遺族年金を同時に受給できると定められたためです。
遺族年金とは国民年金や厚生年金に加入していた方が亡くなった場合、遺族の方が受給できる給付金です。
遺族年金は、具体的に以下の2つに分けられます。
| 遺族年金の種類 | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 |
| 受給できる遺族 | ・子供のいる配偶者 ・子供(18歳到達年度の末日を経過していないor20歳未満で、障害年金の障害等級が1級か2級) | ※上から優先順位の高い順番 ・配偶者or子供 ・父母 ・祖父母 ・孫 |
| 受給できる金額 | 子供の人数による | 老齢厚生年金の4分の3 |
| 支給開始時期 | 年金加入者が亡くなった翌日 | 年金加入者が亡くなった翌日 |
遺族年金を受給できる場合でも、以下のケースでは受給されない点が特徴です。
- 遺族年金の受給者が亡くなった
- 結婚をした
- 離縁した
- 親族または配偶者の親族以外の養子になった
遺族基礎年金と遺族厚生年金とは、受給できる遺族や金額などに違いがあります。
年金と失業保険の同時受給に関するよくある質問
- 60歳でも失業保険は受給できますか?
- はい、60〜64歳の方は「高年齢雇用継続給付」や基本手当の対象となることがあります。
年金との関係も含め、条件を確認しましょう。
- 失業保険は70歳過ぎてももらえますか?
- 20~64歳が失業保険の支給対象となるため、70歳を過ぎた方は失業保険の対象とはなりません。
その代わり、高年齢求職者給付金があるため、70歳過ぎの方はこちらを利用できます。
手続きに関しては失業保険と変わらないため、高年齢求職者給付金を受け取る際には失業保険と同じ手続きを行うことになります。
- 年金をもらっていても失業保険はもらえますか?
- 65歳になるまでは失業保険と老齢厚生年金の併給ができない形になっています。
ただ65歳を過ぎると失業保険ではなく高年齢求職者給付金になるため、年金と併用して高年齢求職者給付金を受給することは可能です。
高年齢求職者給付金は支給回数の制限がなく、要件さえ満たしてしまえば何回でも受け取れるのが魅力的です。
- 年金と失業保険は同時にもらえますか?
- 原則、65歳以上の「高年齢求職者給付金」と基礎年金・厚生年金は同時に受給可能です。
60〜64歳でも同時に受け取れますが、年金が一部減額されるケースがあります。
- 65歳以上でも失業保険はもらえますか?
- はい、65歳以上の方は「高年齢求職者給付金」として失業手当を受け取ることができます。
ただし基本手当とは異なり、一時金での支給になります。
- 失業保険と障害年金は併用できますか?
- 可能です。
障害年金は「非課税の公的年金」として扱われるため、失業保険と同時に受給できます。
- 失業保険と遺族年金は同時にもらえますか?
- はい、可能です。
遺族年金も障害年金と同様に、失業保険との併用に制限はありません。
- 年金を受け取りながら働いた場合、失業保険に影響はありますか?
- あります。
年金と雇用保険の両方を受け取る場合、年金額や働き方によって失業手当が減額・不支給になる可能性があります。
- 63歳で失業したら年金は減らされますか?
- はい、60〜64歳の間は在職老齢年金の調整がかかり、失業給付と併せて一定額を超えると年金が一部停止される可能性があります。
- 64歳11か月で退職した場合、失業保険の手続きはどうなる?
- 65歳未満で退職した場合は、基本手当の対象になる可能性があります。退職日と誕生日のタイミングが重要です。参考 : 64歳11か月で退職して失業保険をもらうとお得?65歳との違いや注意点を解説
- 失業保険を受給中でも国民年金に加入する必要はありますか?
- はい、失業中も国民年金への加入義務があります。
ただし、所得がない場合は「免除申請」が可能です。
- 高年齢雇用継続給付金とは何ですか?
- 60歳以上の方が、再就職や継続雇用で賃金が減少した場合に支給される制度です。
年金や失業保険との関係も確認が必要です。
- 年金と失業保険、どちらを優先して受け取るのが得?
- 一般的には、退職後すぐに失業保険を受給し、その後年金を受け取ることで受給額の最大化を狙えます。
ただし個々の状況により異なるため、具体的なシミュレーションが重要です。
- 高年齢求職者給付金と失業保険、どちらが有利?
- 65歳以上は高年齢求職者給付金が該当しますが、基本手当より支給額が低い傾向があります。
年齢や退職時期によって損得が分かれるため、比較が必要です。
まとめ
ここまで、失業保険と年金の同時受給の可否や、満額受給するための方法について解説してきました。
本記事のまとめは以下のとおりです。
- 失業保険とは退職した人の生活をサポートし、1日でも早く再就職できるように支援する制度である
- 年金と関係する失業手当とは、基本手当や高年齢求職者給付金などがある
- 失業保険と年金は同時に受給できるが、65歳未満の方の場合は減額される点に注意が必要である
- 失業保険と年金を満額受給するためには、65歳直前に退職し、65歳以降に失業保険を受給する方法がある
- 失業保険と障害年金・遺族年金は同時に受給できる
失業保険と年金は同時に受給できますが、受給する前によく考えた上で決断することが望ましいです。
本記事を参考に、失業保険と年金の同時受給について理解していただければ幸いです。



