会社で働いていると、ストレスが原因で気分の落ち込みや不眠など、生活に影響を及ぼすほどの病状が出ることがあります。
このようなストレス性の障害は「適応障害」と呼ばれ、早急に対応しなければならない問題です。
「適応障害だから会社を辞めたい」「いつ辞められるの?」「上司への伝え方がわからない」など、悩んでいませんか?
正社員の場合は退職する2週間前に申し出ることで退職が認められており、会社の同意があれば即日退職もできます。
適応障害で休職することも可能なので、まずは身体を休める意味で休職するのも適切な選択と言えるでしょう。
今回は、適応障害の人が会社を辞める前後にすることについて、退職サポート経験12年の私がご紹介していきます。
本記事を読むことで、正しい手順で退職する方法がわかり、安心して治療に専念できますよ。
適応障害で退職できる

冒頭でもお伝えした通り、適応障害を理由に退職することは可能です。
正社員の場合は退職する2週間前に、退職したいと伝えることで、退職が認められます。
「民法第627条1項」にも明確に書かれており、適応障害ではない場合でも退職をする、しないの自由は労働者にあるのです。
会社の同意があれば即日退職もできる
民法では退職する2週間前に退職したいと伝えれば、自然と退職できます。
それでも2週間は何かしらの形で会社にいないといけないので、1日でも早く適応障害の治療に専念したい人からするときつい状況です。
実は、労働者が即日退職がしたいと伝え、会社が同意した場合、即日退職が認められます。
適応障害で辞める場合、1日でも早く治療に専念したいと会社に伝えることで、会社側も無理な引き延ばしはしにくくなるでしょう。
適応障害を理由に即日退職をすることは、会社の同意さえあれば可能です。
適応障害で退職前に休職することもできる

適応障害はストレスの原因となるものを取り除けば、改善を目指せると言われています。
もちろん退職して出直す手もありますが、一旦休職をしてみて症状が改善するのか、様子を見る考え方もあります。
適応障害をこじらせるとうつ病などを患う可能性が出るため、悪化する前に対応することが無難です。
適応障害で働くことが難しくなった場合、退職前に一旦休職をするのはよくある方法と言えます。
適応障害で休職するために必要なこと
もしも適応障害で休職をする場合、まず会社に休職制度があるかどうかを確かめましょう。
万が一休職制度がなかった場合は、会社側と話し合いを進めることになります。
そして、休職の話し合いをする前に心療内科や精神科などで診断書を書いてもらうとスムーズです。
どれくらいの期間において休養すべきかなどを診断書に書いてもらえるので、その期間をベースに休職を行うことになります。
適応障害で退職する場合の伝え方

適応障害で退職をする際には上司に退職の旨を伝える必要が出てきます。
その際の伝え方は以下の通りです。
- 上司に直接伝える
- 上司に電話で伝える
- 上司にメールで伝える
- 上司に郵送で退職届を送る
- 退職代行業者に依頼する
適応障害ゆえに、面と向かって伝えられないこともあるため、自分に合った方法で退職の意思を伝えましょう。
上司に直接伝える
1番確実なのは、上司に直接退職の意思を伝えることです。
事前に時間を作ってもらい、1対1の状況で上司に対して退職したいと伝えます。
もちろん引き留められることも考えられますが、適応障害の治療に専念したいと伝えることで多くの上司はその気持ちを尊重することがほとんどです。
また休職を挟んでいない場合は「一旦休職をしてからでもいいのではないか」と休職を勧められることもあります。
上司に直接伝える方法は一番筋が通った方法と言えるでしょう。
上司に電話で伝える
次は、上司に対して電話で伝えるやり方です。
適応障害の症状が出てきて、体調的に直接会うのはきついと感じる人もいます。
この場合は電話で退職の意思を伝えることをお詫びした上で、適応障害の治療に専念したいので退職したいと伝えるのが無難です。
また、比較的仕事が落ち着いている時間帯に電話をかけて、上司への配慮を示すことも大切でしょう。
会社を辞めたいと電話で伝えることへの違和感は少なからずの人が持ちやすい分、出来る限りの配慮を示すのが確実です。
上司にメールで伝える
電話でも厳しい場合には、上司にメールで伝えることもできます。
仕事を理由に適応障害になった場合、電話口で会社の上司や同僚と話すだけで強いストレスがかかりがちです。
ストレスを少しでも避けるためにメールで退職を伝えることは致し方ない部分と言えます。
ちなみに、メールで退職の意思を伝えること自体は法律上は問題ありません。
しかし、メールで退職を伝えることはマナー違反だと思われやすいので注意が必要です。
この場合は退職に関する相談をしたいとメールで伝えるとともに、症状を理由にメールでのやり取りをお願いしたいと伝えて承諾をもらうのが理想的な流れです。
上司に郵送で退職届を送る
次に、上司に郵送で退職届を送るという手段があります。
適応障害の症状が重く、上司と直接会うのが困難な場合、郵送で退職届を送ることで退職の意思を伝えられます。
一方、退職届は上司に手渡しをするのが常識であると思っている人が多く、いきなり郵送で送る場合、上司が嫌悪感を抱くケースも。
この場合は電話で先に退職の意思を伝え、適応障害の症状が重いので外に出られないことをお詫びしつつ、退職届の郵送を認めてもらうことでスムーズに事が運ぶようになります。
退職代行業者に依頼する
もう1つの手段は退職代行業者に依頼して、退職の意思を代わりに伝えてもらうやり方です。
上司や会社にお世話になった手前、退職の意思を伝えるのは心苦しいけど退職はしたい場合に退職代行業者を活用します。
退職代行業者は合法的な方法で退職の手続きを行ってくれるので、自らの退職手続きに関する負担を最小限にできます。
適応障害で退職する際の流れ

ここからは適応障害で退職する際の流れについてご紹介します。
- 医師から診断書をもらう
- 退職の意思を伝える
- 退職に関する会社の決まり事に沿って退職手続きを始める
医師から診断書をもらう理由は、適応障害で辞めると伝える際に診断書があることでスムーズな退職につながりやすいからです。
例えば、適応障害と伝えずに一身上の都合という理由にした場合、退職を引き留められる可能性があり、精神的に疲弊する恐れがあります。
もちろん、適応障害と伝えずに退職することもできますが、スムーズに辞めたい時に医師の診断書があると話が伝わりやすいです。
あとは退職の意思を伝え、会社のルールに従う形で手続きを進めていけば、自然なスケジュールで退職できます。
適応障害で退職した場合は傷病手当金と失業保険をもらおう

適応障害で退職する場合、傷病手当金と失業保険をもらう前提で段取りを考えていきましょう。
治療に専念する場合、その期間は無収入となるので最低限の生活ができるように傷病手当金と失業保険をもらうことをおすすめします。
傷病手当金とは?
傷病手当金はケガや病気で働けない場合に受け取ることができる手当です。
給付を受ける際の条件は以下の通りとなります。
- 仕事以外で生じた病気もしくはケガに関して治療中である
- 治療を行っているため、働くことができない状態にある
- 治療のため、4日以上働けていない
- 治療中は給与を受け取っていない
「仕事以外」と定めているのは仮に仕事を理由に適応障害となった場合、労働災害の対象となるため、労災申請を行って給付を受ける必要があるからです。
傷病手当金は1回の申請で最大3か月分の支給が可能ですが、あくまでも傷病手当金は無収入でも安心して治療に専念できるセーフティーネット的な意味合いがあるため、毎月の申請がおすすめとされています。
特に休職中に傷病手当金を受け取る場合は給与を受け取っていない事実を会社側に証明してもらうことになるため、毎月の申請が一般的です。

失業保険とは?
失業保険は、失業状態にある人の生活を守るために存在するものです。
失業状態とは以下の状況を指します。
- 働きたい気持ちがある
- 心身ともに働ける状態にある
- 就職先を率先して探している
心身ともに働ける状態で、働きたい気持ちが強いので一生懸命就職先を探している状態が失業状態です。
このため、上記の条件を1つでも欠いていると失業状態とは認められず、失業手当を受け取ることができません。
また失業状態と認定してもらうためには、4週間に1回ハローワークに出向く必要があります。
この4週間において就職活動の実績などを一定以上を行わないと認定してもらえません。
これらの手続きを行うことで4週間に1回、失業手当を受け取れます。

もらう順番は?
結論から申し上げますと、もらう順番は傷病手当金→失業保険の順番となります。
その理由は手当をもらう条件が大きく関係します。
- 傷病手当金→仕事以外のケガもしくは病気で治療中である
- 失業保険→心身ともに働ける状態である
適応障害の治療中の場合は傷病手当金が対象となり、適応障害が治り働ける状態になれば失業保険が対象となります。
そのため、先に傷病手当金をもらい、治療が終わり次第、失業保険に切り替えることが求められるのです。
失業保険には受給期間があり、仕事を辞めた日の翌日から1年が対象ですが、治療のために働けない場合はハローワークに申請を行うことで受給期間の延長が可能となります。
適応障害で退職したあとの過ごし方について

適応障害で退職した場合、まず行うべきことは適応障害の治療です。
退職後しばらくは傷病手当金や失業保険があるため、多少収入の減少はあっても、最低限の生活は確保できます。
また、自立支援医療(精神通院医療)という制度があります。
自立支援医療(精神通院医療)は本来自己負担が3割となる保険診療が自己負担1割となり、負担軽減につながるので安心して治療が受けられるというものです。
傷病手当金などをもらっている間に適応障害の治療を行い、働ける状態を目指しましょう。
適応障害で退職した場合は就労移行支援で再就職を目指そう

長期間休んだことで状態が改善し、働ける状態になった場合に活用したいのが就労移行支援です。
働ける状態ではあっても、いきなりフルタイムで復帰をするのは不安であると感じている人がほとんどです。
また、その時は働けると思っていても、働き出してみるとまだきつい部分があると実感するケースもあります。
就労移行支援では就労に向けて数々の訓練・プログラムがあり、いくつかこなしていき、就労に向けた準備を行っていきます。
再就職に向けてパソコンスキルを磨く、ビジネスマナーを学ぶ、模擬就労に挑むなどのプログラムがあるほか、運動療法や音楽療法のプログラムも。
就労移行支援事業所を利用する際、利用料金の大半は税金で賄われています。
そのため、利用者が支払うのは1回あたり1,000円前後、自治体によって月額負担上限額も決まっており、経済的な影響も限られるため、就労に向けて念入りな準備が行えるのです。
まとめ
今回は、適応障害で退職ができるかどうかを中心に解説を行ってまいりました。
それでは、改めてご紹介した内容を振り返ります。
- 適応障害を理由として退職することはできる
- 会社の同意があれば即日退職も可能
- 退職前に休職を行うこともできる
- 体調に応じて退職の意思の伝え方を変えられる
- 退職する際は傷病手当金や失業保険を活用する
- 無理なく再就職をするために就労移行支援の活用がおすすめ
適応障害はストレスなどを取り除いてしっかりと休養することで症状の改善を図ることができます。
そのため、退職した場合はまず治療に専念することがおすすめです。
また焦らなくても大丈夫なように傷病手当金や失業保険があるため、積極的に活用しましょう。
スムーズに再就職を目指すためにも就労移行支援の活用を行い、最初は無理せず仕事をし始めることも大切です。
再び適応障害にならないように注意しつつ、スキルをつけていき、再就職先を探しましょう。