会社を辞めたあとに失業保険を受け取るためには、「特定受給資格者」や「特定理由離職者」に該当するかどうかが重要です。
この2つは似ているようで違いがあり、受け取れる給付日数や手続きにも差が出てきます。
「自己都合退職でも対象になる?」「どっちの方が有利なの?」といった疑問を持つ方も多いはず。
この記事では、両者の違いやそれぞれの条件、メリットをわかりやすく解説します。
ハローワークで損をしないためにも、正しい知識を身につけておきましょう。
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退職サポーターズ編集部
「退職サポーターズ」では、社会保険給付金の申請を退職のプロと社会保険労務士が支援します。当メディアでは、自己都合退職や会社都合退職にともなう手続きや、失業保険・傷病手当金などの制度について、正確かつ実用的な情報をわかりやすくお届けします。
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特定受給資格者と特定理由離職者の違いとは?
特定受給資格者と特定理由離職者は、離職理由に違いがあります。
比較項目 | 特定受給資格者 | 特定理由離職者 |
---|---|---|
主な離職理由 | 倒産・解雇などの会社都合 | 正当な理由がある自己都合(通勤困難、病気、家族の介護など) |
該当条件の例 | – 倒産- 解雇(懲戒以外)- 雇止め(更新期待あり)など | – 契約期間満了- 通勤困難- 病気・体力の限界- 家族の介護など |
失業手当の支給開始 | 7日間の待期のみ(給付制限なし) | 7日間の待期のみ(給付制限なし) |
必要な証明書類 | 離職票や事業主の証明(通常会社からの記載でOK) | 医師の診断書や通勤困難の証明など自分で提出が必要な場合あり |
給付日数の優遇 | 通常の自己都合退職者より長く支給される | 一部自己都合より優遇される(支給日数や制限免除) |
ハローワークでの扱い | 「正当な会社都合」として扱われることが多い | 「正当な理由のある自己都合」として扱われる |
まず、「特定受給資格者」とは、倒産や解雇により退職した人です。
特定受給資格者の主な特徴は、一般の失業者に比べて「基本手当の受給条件が緩和されている」「受給日数が優遇される」「受給制限がない」の3つです。
一方の「特定理由離職者」は、労働契約を更新しない人や、正当な退職理由で自己都合退職した人を指します。
正当な退職理由とは主に以下のとおりです。
- 体力不足または精神障害
- 親を扶養する必要がある
- 通勤できないまたは困難
以上のような理由で離職せざるを得ない場合は、特定理由離職者に該当します。

特定受給資格者の条件とは?
ここからは特定受給資格者になる条件を解説していきます。
離職理由が「倒産」等により離職した人と「解雇」等により離職した場合で異なります。それぞれの判断基準を以下でみていきましょう。
倒産や解雇などで離職した場合に該当
倒産等で離職した場合の判断基準は以下の4つです。
- 職場の倒産
- 事務所内における大量雇用変動
- 事業所の廃止
- オフィス移転
詳しく見ていきましょう。
破産、民事再生、事業再生、またはその他の倒産手続の結果として離職した場合、または手形の取引が停止された場合は特定受給資格者として適用されます。
事務所において 1ヶ月以内に失業者を30人以上出す届出がされた場合や、事業主が雇用している被保険者の3分の1以上が離職した場合は特定受給資格者として適用されます。
それに加えて、事業主が「再就職支援計画」を申請した場合にも適用となります。
「再就職支援計画」とは、退職した従業員の再就職支援など、事業主が自らの責任を果たす目的で計画を策定する制度です。30 人以上が失業する場合は、再就職支援計画を立てなければなりません。
また、「再就職支援計画」を提出し、公共職業安定所長の承認があれば30人以上の失業者がいなくとも特定受給資格者の対象に該当します。
事業所を廃止したり、事業活動を休止したりして、事業の再開が見込めなくなった理由の場合は、特定受給資格者の対象となります。
オフィスの移転で通勤がよりいっそう厳しくなった理由で退職した場合、特定受給資格者に該当します。
解雇以外でも該当する13の理由を紹介
離職理由が、次の13個のうち、1つでも該当する場合は「特定受給資格者」になります。
- 解雇
- 労働条件の違い
- 賃金の滞納
- 著しい賃金の低下
- 長時間の残業
- 妊娠・出産・介護中における労働の強制
- 職種転換等の考慮がされない
- 労働契約の更新をしない:勤続3年以上
- 労働契約の更新をしない:勤続3年未満
- 上司・同僚等の嫌がらせ
- 雇用主からの退職勧奨
- 事業主の都合による3ヶ月以上の休業
- 法令違反
詳しく見ていきましょう。
仕事を解雇された場合は特定受給資格者になります。ただし、自己の過失などによる理由で解雇された場合。
労働契約の締結時に定めた労働条件と、実際の労働条件が大きく異なっていたことにより離職した場合。
給与(退職金を除く)の3分の1以上が支払期日までに支払われなかったことにより離職した場合。
賃金が今まで支払われていた賃金の 85% を下回った、または下回ると見込まれる場合。ただし、賃金の減額が事前に予見できていた場合は対象外となります。
長時間の残業が原因で離職した場合は特定受給資格者に該当します。
ただし、離職前6ヶ月間の残業が、以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
- いずれか連続する3ヶ月で45時間
- いずれか1ヶ月で100時間
- いずれか連続する2ヶ月以上の期間の時間外労働を平均して1ヶ月で80時間
さらに、事業主が政府機関から危険または健康上のリスクがあると注意喚起されたにもかかわらず、予防措置を講じなかった理由で離職した場合も適用されます。
法令に違反して妊娠・出産・介護中の人に労働を強制させたり、これらの状況下で活用できる制度に制限を加えたりして不利益が発生してしまったことが理由で離職した場合。
事業主が労働者の職種転換等に際して、労働の継続のために必要な配慮を行わなかった理由で離職した場合。
契約社員のような期間の定めがある労働契約で3年以上雇用されていたが、その後、契約を更新されなかったことが理由で離職した場合。
期間の定めのある労働契約の締結に際し、労働契約が更新されることが明示されていたにもかかわらず、労働契約が更新されなかったことが理由で離職した場合。
上司や同僚からの故意な冷遇や嫌がらせ、セクハラ等により退職した場合。
また、事業主が職場におけるセクハラの事実を認識していたにもかかわらず、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した場合も該当します。
雇用主が直接的または間接的に退職を勧めたために離職した場合。ただし、早期退職金制度を申請した場合は該当しません。
事業主の責任で連続して3ヶ月以上休業したことが理由で退職した場合。
例えば、事業所での安全規則違反や機械の故障により、従業員が働けない状態が3ヶ月以上続き、その間に他の仕事を探すために退職した場合などです。
事業所の業務が法令に違反したため離職した場合
特定理由離職者の条件とは?
特定理由離職者の範囲は、「労働契約が満了した場合」と「正当な理由で自己都合退職をした場合」に分けられます。以下で詳しく見ていきましょう。
契約期間満了や正当な自己都合での退職が対象
有期労働契約が満了し、継続して労働契約が更新されない場合。
ただし、更新する意思があったにもかかわらず契約を更新してもらえなかった場合に限ります。
正当な理由として認められる6つのケース
自己都合の場合でも、次の6つのどれかにあてはまる理由であれば、特定理由離職者に該当します。
- 体力不足または心身に障害のある人
- 妊娠・出産・育児
- 父母の扶養
- 配偶者や親族と離れて暮らすことが困難
- 通勤できない
- 希望退職の申請
詳しく見ていきましょう。
肉体疲労、心身の障害、病気、けが、視覚、聴覚、触覚の低下などが原因で離職した場合。
妊娠、出産、育児等により離職し、基本手当の受給期間延長措置を受けた場合。
死亡・疾病・傷害等で父母を扶養するために離職を余儀なくされた場合。また、親族が病気やけがで常時介護を必要としている場合にも適用されます。
配偶者や扶養親族と別居することが困難になった場合。
以下のような原因で通勤が不可能または困難になった場合。
- 結婚による住所変更
- 育児に伴う保育所などの利用、または親族等への保育の依頼
- オフィス移転
- 本人の意思に反する住所または居所の移転
- 鉄道、電車、バス等の交通機関の廃止または運行時間の変更
- 事業主の指示による異動
- 転勤や出向による別居の回避
- 配偶者の転勤や出向指示により、自身も移動せざるを得なくなった場合
上記のいずれかを満たす場合は、特定理由離職者に該当します。
希望する会社が改革や人員整理を行う際の、希望退職に応じた場合。

特定受給資格者・特定理由離職者のメリット
特定受給資格者や特定理由離職者に該当すれば、「失業手当の受給要件」や「もらえる日数」の部分でメリットがあります。
失業手当の支給条件が有利に
失業手当をもらうためには「特定受給資格者」「特定理由離職者」共に離職の日以前1年間で6ヶ月以上の被保険者期間が必要です。
一方で、これらに該当しない「一般の離職」の場合は、離職の日以前2年間に12ヶ月以上の被保険者期間が必要。
したがって、一般の離職者より、特定受給資格者や特定理由離職者の人が失業手当の受給資格要件が緩和されていることが分かります。
給付日数が増えるケースも
自己都合退職などの一般的な離職者の場合、失業手当の受給日数は次の表のように、90日〜150日となります。

一方、「特定受給資格者」と「一部の特定理由離職者」のもらえる日数は年齢によって90日〜330日と定められています。
(3.-就職困難者を除く).png)
※「一部の特定理由離職者」とは前述で解説した「労働契約が満了した場合」に該当する人で、受給資格に係る離職の日が2009年3月31日から2025年3月31日までの間にある人を指します。
待機期間や給付制限が免除されることも
一般の離職者の場合、ハローワークに退職届を提出後、7日間の待期期間と給付制限期間が設けられています。
一方の「特定受給資格者」または「特定理由離職者」の場合、給付制限期間はなく、7日間の待期期間終了後から給付が開始されます。

よくある質問:特定受給資格者・特定理由離職者の疑問を解決
- 自己都合退職でも特定理由離職者になれるのはどんな場合ですか?
- 病気や家族の介護、通勤困難など、ハローワークが認める正当な理由があれば該当します。
- 特定受給資格者と特定理由離職者、どっちが手当の条件が有利ですか?
- 一般的には特定受給資格者の方が給付日数や支給開始の早さで優遇される傾向があります。
- 医師の診断書があれば特定理由離職者になれますか?
- 体力不足や病気が理由の場合、診断書の提出が必要になるケースがあります。
- 離職票に「自己都合」と書かれていても、特定理由離職者として認定される?
- 可能です。別途証明書類を提出することで、自己都合でも正当な理由が認められる場合があります。
- 特定受給資格者になるには会社都合での退職が必須ですか?
- はい。倒産や解雇など、会社側の都合での退職であることが基本です。
まとめ
いかがでしたか。
今回のポイントは、
- 特定受給資格者と特定理由離職者の違いは退職理由
- 特定受給資格者になる条件は、倒産を含む4つの理由か解雇を含む13個の理由のどれかで離職であること
- 特定理由資格者になる条件は、労働契約が満了した場合か自己都合でも正当な理由6つのどれかが当てはまる場合
- 特定受給資格者・特定理由離職者のメリットは、受給資格要件が緩和され給付日数が増える
特定受給資格者と特定理由離職者の主な違いは離職理由です。
「特定受給資格者」は、倒産や解雇により退職した人、一方の「特定理由離職者」は、労働契約を更新しない人や、正当な退職理由で自己都合退職した人を指します。
特定受給資格者や特定理由離職者に該当すれば、失業保険をもらえる条件が緩和されたり、もらえる日数が多くなったりと優遇処置が設けられます。
これらの制度は受給条件が多くあり、すべてを理解することは難しいかもしれません。
そのような場合は公共職業安定所(ハローワーク)や都道府県労働局など、居住地を管轄する公的機関に一度相談することをおすすめします。
また退職サポーターズではこれから退職される方に向けて、
失業保険の受給金額が最大200万円になる給付金申請サポートを行っております。
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