定年を迎えたら失業保険は関係ないんじゃないの?
アルバイトを少しする程度なら対象外では?!
上記の疑問を中心に、「定年退職でも失業保険はもらえるの?」と定年退職後の生活を考えて、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
「失業保険を受け取りつつ、新たに働ける場所を探したい」と定年退職後も働きたい方にとっては、失業保険を受け取れるかどうかは非常に大事な話と言えます。
結論から言いますと、失業保険を受給する条件さえ整っていれば、仮に定年退職であっても失業保険は受給可能です。
そこで今回は、定年退職でも失業保険をもらえるのかという話題を中心に、失業保険の受け取り方や支給額、受け取れる期間など、失業保険の給付金サポートを手掛ける私が詳しく解説します。
これを知れば、定年退職後も安心してライフプランを立てられ、不安に感じることなく再スタートを切れますよ。
定年退職者が失業保険をもらうための条件
定年退職者が失業保険を受給するには条件をクリアする必要があります。
- 失業状態であること
- 雇用保険の被保険者であること
- 65歳未満であること
- 条件を満たしていればパートやアルバイトでも受給できる
ここでは、条件を具体的に解説します。
失業状態であること
失業保険を受給するための条件の1つに、失業状態であることが挙げられます。
失業状態とは、就業意欲と能力があり、求職活動を行っているにもかかわらず就業できない状況を指します。
失業と認定されるためには、離職後ハローワークで「求職申込」が必要です。
求職申込から7日間の待期期間が設けられ、その後に失業が認定されます。その後、適切な手続きを行うことで失業保険の受給が可能になります。
雇用保険の被保険者であること
失業保険を受けるためには、過去2年間に雇用保険の被保険者期間が12ヵ月以上必要です。
定年退職前の1年以上、フルタイム勤務していれば、通常は問題ありません。
雇用保険給付を受けるためには、働いていた期間が重要になるので、自身の働いた期間を確認しておきましょう。
65歳未満であること
失業保険を受けるためには、65歳までに離職する必要があります。
法律では、65歳前の最終日は誕生日の前々日です。
誕生日前日に退職すれば失業保険対象になりますが、誕生日当日に退職すると対象外になります。
その場合、「高年齢求職者給付金」が適用される可能性がありますが、支給期間は30〜50日と短くなります。退職のタイミングを慎重に検討しましょう。
条件を満たしていればパートやアルバイトでも受給できる
失業保険受給中にアルバイトをすることは可能ですが、以下の4つのルールを守る必要があります。
- 待期期間(7日間)は働かないこと
- 勤務時間は週20時間未満に抑える
- ハローワークで働いていることを申告する
- 手伝いや内職で得た収入も報告する
これらのルールを厳守することで、失業保険の受給を継続しながらアルバイトができます。
上記ルールを必ず確認し、手続きを行いましょう。
定年退職者は失業保険をいくらもらえる?期間は?
定年退職でも要件を満たせば、失業保険を受給できることが分かりました。
そうなると、失業保険はどのくらい受給できるか気になるところです。
ここでは、失業保険の受給額や計算方法について解説します。
定年退職者が失業保険でもらえる金額
失業保険の日額は「賃金日額」×「所定の給付率」で計算。
「賃金日額」は、離職前の6カ月に支払われた賃金合計を180(日)で割って計算し、「所定の給付率」は最大で直近の賃金の80%(上限が設定されています)までとされています。
このように、定年退職後に受け取れる失業保険は、離職前の収入の45〜80%の範囲で決まります。
給付額は離職前の給与よりも少なくなり、支給率は年齢や離職前の給与額によって変わります。
以下のモデルケースで見ていきましょう。
・東京都在住
・協会けんぽ加入期間:12ヶ月以上
・退職時の年齢:45歳
・給与月額:500,000円
失業保険の1日あたりの支給額を計算すると、
(500,000円 × 6ヶ月分) ÷ 180 = 約16,700円(賃金日額)
45歳から59歳までの場合、賃金日額16,700円の50%支給率が適用されるため、失業保険の日額は8,350円になります。
定年退職者が失業保険をもらえる期間
失業保険の受給期間は退職理由と、雇用保険の被保険者であった期間(算定基礎期間)によって異なります。
65歳未満の定年退職者が失業保険を受ける場合、「算定基礎期間」と失業保険の支給期間(所定給付日数)は以下の通りです。
定年退職者が失業保険を申請する方法
失業保険でもらえる金額と期間について解説しました。ここからは、失業保険の申請方法についてまとめています。
必要な書類を揃える
ハローワークで失業保険の手続きを行う際に必要な書類は以下のとおりです。
- 雇用保険被保険者証と雇用保険被保険者離職票(-1、2)
- 個人番号確認書類
- 身元確認書類
- 写真2枚
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
事前に職場へ確認しておくことをおすすめします。
もし職場の担当者が失念している場合、手続きに時間がかかる可能性があるためです。
マイナンバーカード、通知カード、個人番号が記載された住民票のいずれか1つが必要です。
運転免許証、マイナンバーカード、写真付きの公的身分証明書などから1種類を用意してください。
身元確認書類がない場合は、指定の書類のうち異なる2種類が必要です。
正面から三分身が写っている縦3.0cm×横2.4cmのものを用意します。
失業保険は銀行振込になるため、振込先として指定する本人名義の預金通帳またはキャッシュカードが必要です。
ただし、一部指定できない金融機関があるので注意が必要です。
ハローワークで申請する
書類が揃ったら、管轄のハローワークに行って申請しましょう。
窓口で用意されている求職票申込書に、再就職の希望条件や業務経験などを記入し、必要な書類と一緒に提出します。
仕事の希望がはっきりしていない場合は、ハローワークのスタッフと相談しながら書きましょう。
また、あらかじめ記入済みの履歴書を持っていくと、記入作業がスムーズに進みます。
申請期限は1年間なので早めに申請しよう
失業保険には申請期限があり、原則として「退職日の翌日から1年間」までです。
この期限を超えると、給付期間が残っていても、支給対象にはなりません。
退職後、すぐに手続きを行わなくても問題ありませんが、手続きを遅らせすぎると期限切れの恐れがあります。
失業保険を受ける予定の場合は、期限に注意して対応しましょう。
定年退職者が失業保険の受給期間を延長する方法
定年退職などにより60歳以上65歳未満で離職して、しばらく休養したい場合もあるでしょう。
そのようなときは受給期間延長の申請が可能です。
失業保険の受給期間は通常、離職の翌日から1年間ですが、この1年に休養期間を追加できます。
ただし、定年退職の場合、最長で1年間まで。
手続きは、離職日の翌日から2か月以内に住所地を管轄するハローワークで行います。
提出書類には、離職票-2と本人の印鑑(認印)が必要です。
また、必要に応じて各種証明書も必要となるので、期限に十分注意して手続きを行いましょう。
失業保険と年金は同時にもらえないので注意
失業保険と65歳までの老齢厚生年金は、同時に受給できません。
その理由は、失業保険が失業期間中の生活支援を目的としているからです。
年金が支給されている状態は、生活支援の必要がないと判断されてしまいます。
これを踏まえて、失業保険と老齢厚生年金を選択する際には、どちらが自分の生活状況に適しているか慎重に検討しましょう。
年金受給を選ぶ場合は、再就職が見込めるかどうかも考慮し、失業保険を選ぶ場合は、年金受給開始までの期間を考慮して決定することが重要です。
65歳で定年退職する場合は高齢求職者給付金がもらえる
65歳で定年退職する場合は「高齢求職者給付金」がもらえる可能性があります。
- 65歳以上
- 雇用保険の加入期間が、離職の日以前1年間に通算して賃金支払基礎日数11日以上の月が6ヶ月以上ある人
※賃金支払基礎日数(=賃金を支払うもととなった日)
支給額は、雇用保険加入期間に応じて、失業保険の30日分または50日分が支給されます。
ただし、失業保険と同様に、働く意思と能力があり求職活動をすることが受給のための要件です。
また、高齢求職者給付金の場合は、老齢年金と並行して受給できる給付金です。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回のポイントは、
- 定年退職者が失業保険をもらう条件は4つ
- 定年退職後に受け取れる失業保険は、離職前の収入の45%~80%
- 失業保険を受け取れる期間は、90日~150日
- 失業保険と年金は同時にもらえないので注意
- 65歳で定年退職する場合は高齢求職者給付金がもらえる
ここまで、定年退職者が失業保険をもらうための条件、受給金額や受給期間、申請方法について解説しました。
条件を満たせばパートやアルバイトをしながらでも失業保険を受給できます。
失業保険の申請期限は1年なので、退職後はスムーズに申請しましょう。
また、65歳で定年退職する場合は、高齢求職者給付金を受給できます。
高齢求職者給付金は年金と同時に受給できますが、支給期間は30〜50日と短くなるので退職のタイミングは慎重に検討してください。
人生100年時代と呼ばれているなかで、定年後の計画を事前に検討することは非常に重要です。さまざまな選択肢を検討できるよう、早期から情報を集めておきましょう。